12万勝った気がする。
「昨日な、パチンコで12万勝ったんだよ」
月曜日の仕事終わり。月に一度飲みに行く約束をしているタマキが、自慢げに言った。
「へえ、それはすごい。ということは今日は、タマキ、お前持ちだな」
サヤマが笑いながら催促する。
「それがな……正確には、パチンコで12万勝った気がするんだよ」
「なんだよ、夢かよ」
タマキの妙な言い回しに、思わず語尾が強くなる。
「いや、夢といったらそうなのかもしれないけど、あまりにも記憶が鮮明でな。朝起きて……」
テーブルに置かれたサヤマのスマホが、振動とともにピロンと鳴った。
「悪い」
申し訳なさそうにスマホを見る。
「キョウコ……」
サヤマの呟きに、タマキも驚く。
「キョウコちゃんって、先月別れた彼女だろ? もう二度と連絡しないって言ってた」
サヤマは返事もせずにメッセージを開く。
『私が悪かったかもしれない。夜、電話できる?』
しばらく酒を飲むのも忘れ、画面を見続けるサヤマ。
「おい、大丈夫か?」
タマキの声にハッと我に返る。
「ああ、ごめん。大丈夫。もう一杯飲んだら帰るわ。今日は俺が出すよ」
サヤマの声色から何かを察し、タマキは何も言わずにグラスへ口をつけた。
————————
そこからのことは、あまり覚えていない。
気がつけば、自宅近くの公園でキョウコと電話をしていた。
彼女は別れを選んだことを後悔していて、叶うならやり直したいと、泣きながら延々と話していた。
別れ際にはかなりきついことを言われた。サヤマにとっては、トラウマになるほどの出来事だった。
ただ。
未練はまだある。
彼女を許したサヤマは、電話をつないだまま自宅へ戻った。
昔のこと、これからのこと。いろいろなことを話しながらベッドに入る。
少し酒が入りすぎたようで、シャワーは朝にしようと決めた。
結婚式のお日柄。
ドレスの色。
子供の名前。
新居の間取り。
子供が入学した。
いつの間にか眠っていた。
夢の中で、これは夢だとわかっていた。
そこは深い暗闇だった。
その中で、二人——いや、二体が話をしていた。
「だからね、時代だよ、時代。枕を返して悪夢を見せる時代じゃない」
「どういうことだよ?」
「ぐふふ、いい夢さ。信じられないくらいリアルで、幸せな夢を見せる」
「優しい妖怪だな」
「馬鹿言え。ぎゃははは。そのあと、朝起きた人間のがっかりした顔、見たことあるかい? その落胆を食らって、おいらはさらに強くなるのさ」
「おい、見てるぞ!」
「あ? バレたか。今回はまあいいや。人間は馬鹿だから、いつでも何度でも騙される」
「なぁサヤマ。」
