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結婚しようと思うんです。

「え、エビが好きなんですか?」
同僚のサエキはいつも突然だ。この前もすれ違っただけなのに
「プードルちゃん、元気ですか?」だって。
そのときは何も飼ってないっての。
「コーヒーはモカに限りますよ」だとか。
「ヨガは本当に健康に良いですよ」とかも。
本当に空気が読めないというか、デリカシーもないというか。

「エビ?そんなに興味ないわね。お寿司屋さんでもあまり頼まない。」

ニヤリと黄色い歯を見せ、自分のデスクに戻るサエキ。
振り向きもしない。
嫌悪感を振り払うように足早にランチに向かう。

スパイスカレー屋さんに入る。
ここのスパイスは特別でどんなトッピングにも合うと思う。
エビフライをトッピングで注文し、来月の旅行の話を彼とLINEで打ち合わせる。私は近場の隣県ぐらいに行きたいのだけど、彼は近場の海外の方が良いと、少し揉めている。
そんなやりとりをしながら、最後のエビフライを口に入れる。


定時で仕事を終える。サエキはその後、話しかけてこなかった。もう話しかけてこなくて良いのに、そう思い、そう願いながら、
ホットヨガに通う。
通い始めて、まだ2回目だが、こんなに良いものだとは思っていなかった。体の奥から、なんなら心から運動した気になる。
休憩中に、彼とのLINEを確認する。
やはり海外には行きたいらしい。何となくプロポーズの気配を感じる。
気持ちは嬉しいけど、わんちゃんをどうしようか。
先週彼と行ったショッピングモールのペットショップでトイプードルを衝動買いしてしまった。生体を衝動買いするっていうのは、私の中ではタブーだったのだが、自分でも不思議なくらい衝動がおさまらなかった。
わんちゃんをホテルに何泊預ければいいのだろう。
それも彼と相談しよう。

――
やっぱりヨガ明けの朝は本当に寝覚めが良い。
カーテンを開ける瞬間が1番美しい瞬間だと思う。
4階の窓から少し大きな通りを見下ろすのもとても好きだ。
トーストを焼き、モカの豆をコーヒーミルで挽き、出勤までの
優雅な1時間を過ごす。
このフルーティな香りが出勤前の憂鬱をかき消してくれる気がする。

――

デスクに着くと朝から大量の書類。何の指示もない。朝から苛立つ。
ため息をつくと、サエキが目の前に。

「結婚しようと思うんですよ。」

少し考え、真っ直ぐ目を見て返事をする。

「良かったわね、良い人が見つかったみたいで。」

また、黄色い歯を見せ、デスクに戻っていく。あんな人が結婚出来るなんて、世も末だわ。まぁ私には関係ない。

――

ランチに向かう途中、彼にLINEでお別れを伝え、結婚雑誌を買った。

私、あの人と結婚しようと思う。



↑数ヶ月前の改編です。





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