
【英国文豪、令和を歩く】第74回:Weak yen rising, prices climb, travelers smile at spending time!
ドイルは新聞の経済面を熱心に読み耽り、ウィルは傍らで羽根ペンを弄びながら、窓の外の賑わいを見つめている

ふむ、ピイクロフト君がバーミングハムの偽事務所で翻弄された際も、金の動きが事件の鍵だったが……。ウィル、今のこの『円安』という現象は、実に奇妙な事件のようだ。日本の通貨『円』の価値が、他国の、特にドルの輝きに押されて、まるで影のように薄くなっている」

まあ、価値が薄くなるですって? それはまるで、情熱を失った恋人が、相手の瞳の中に自分の姿を見つけられなくなるようなものね。かつてロミオが『黄金こそは人の心の大毒薬、この些末な薬種よりも恐ろしい人殺しをする』と叫んだけれど、その黄金の力が、今や海を隔てた国々で不均衡なダンスを踊っているのかしら

(眼鏡を指で押し上げ)
まさにその通りだ。かつて株式仲買店で週に三ポンド稼いでいた事務員が、貯金の七十ポンドを切り崩して飢えを凌いだように、通貨の価値が下がるということは、人々の蓄えが目に見えないところで削り取られていくのと同じことだ。海外から届く林檎や肉の値段が跳ね上がり、庶民の食卓から肉が消えていく……。これは法を犯した人殺しではないが、無情な浮世の法がもたらす『逼迫(ひっぱく)』だよ

おやおや、それは悲劇の幕開けね。でもドイル、あのアントニオのように、海を渡る商船をたくさん持っている者たちにとっては、円安というのは追い風になるのではないかしら? 異国の黄金が、彼らの懐にこれでもかと流れ込んでくるのでしょう?

鋭いね、ウィル。確かに輸出を行う大商店にとっては、それは富を築く好機だ。だが、今の日本は多くの資源を外に頼っている。パンを焼く小麦も、街を照らす灯りの燃料もだ。シャーロック・ホームズなら、この状況をこう分析するだろう。『全てのデータが揃うまで結論を急いではいけないが、この均衡の崩れは、国民という名の多くの登場人物に、等しく忍耐を強いている』とね

『ローマは一日にして成らず』……あの中買店の男が言った言葉が思い出されるわ。経済の繁栄も、崩壊も、一夜にして起こるものではないけれど、気づいた時には屋根裏の空っぽな部屋に立たされているような心細さを感じるものなのね。でも、ドイル。どんなに円が安くなろうとも、私たちのこの会話や、友情の価値まで暴落することはないでしょう?

(少し表情を和らげ、珈琲を啜る)
もちろんだとも。マンチュアの薬種屋が貧しさに負けて毒を売ったように、経済の冷え込みが人の心を荒ませることはあっても、我々の知的好奇心や、真実を追究する意志は、いかなる為替相場にも左右されない。むしろ、こうした困難な時代こそ、論理的な思考と温かいユーモアが必要なのだよ

ふふ、素敵よ。どんなに物価が上がっても、あなたのその堅実な言葉だけは、私にとって最高の『興奮剤』だわ。さあ、たとえ懐の黄金が目減りしても、心の中には贅沢な物語を積み上げましょう。……マスター、お会計は円でいいかしら? それとも、私の最新作の初稿を担保にしてもらえる?

ハハハ! それはどこの仲買人も手を出さない、世界で最も高価な担保になりそうだね