
【英国文豪、令和を歩く】第75回:Senryu quick, clever and sly, tiny laughs that softly fly!
ドイルはティーカップを置き、どこか楽しげに目を細めている。ウィルは手元の扇を広げ、東洋の風雅な情緒に想いを馳せているようだ

川柳(せんりゅう)……。日本の、あの五・七・五の短い詩型だね。かつて私がノーフォークのリドリング村で遭遇した『踊る人形』の暗号のように、一見すると奇妙な記号の羅列に見えるが、その実、人間の滑稽さや悲哀が凝縮された見事な『人生のスケッチ』だ

ええ、ドイル。私たちが舞台の上で仰々しく語る悲劇や喜劇を、彼らはたった十七の音の中に閉じ込めてしまうのね。ロミオが窓辺で太陽を称え、ジュリエットが夜の幕を願う……そんな長い独白も、川柳の手にかかれば、もっと皮肉っぽく、それでいて愛らしい一瞬に切り取られてしまうでしょう

その通りだ。川柳の面白さは、高潔な理想ではなく、泥臭い『現実』を直視するところにある。私が診察室で出会った、見栄を張る紳士や、欲深い悪漢たちの本性を暴く観察眼に似ているよ。例えば、南アフリカの財産を巡って姑息な罠を仕掛けたあの男たちの滑稽な結末も、川柳なら冷徹かつユーモラスに描き出すだろう

『人の痛手を嘲る者は、自身で傷を負ったことのない奴だ』とロミオは言ったけれど、川柳はまさにその『痛手』を、クスリと笑える知恵に変えてしまう魔法ね。愛に狂う若者も、強欲な老人も、五・七・五の檻の中では皆等しく、愛すべき『愚か者』として救われる気がするわ

ふむ、理性の眼で見れば笑止千万な出来事も、川柳というレンズを通せば、それは人生の味わい深い一幕になる。……さて、ウィル。私たちもこの東洋の知恵に倣って、今のこのひと時を十七音に刻んでみようじゃないか。事件の謎を解くよりも、ずっと贅沢な楽しみだ

いいわね。では、名探偵とその友人に捧げる、私なりの一句を……
名探偵 謎を解くより 茶を啜り