ほどける円環――ラプラスの指環 4Days/Day4
ラプラスの指環 4Days
MC:アイ
📖『ニーベルングの指環|原典魔改編——金環の黄昏』
▶️恐れなき者/Day3
答えがないことと、何も分からないことは、同じではない。
最後の一冊
サエコから連絡が来た。
「アイちゃん、あとはよろしく」
それだけだった。
何をよろしくなのかは、だいたい分かっていた。
その日の夕方、今度はミライが研究室へやって来た。手には二冊の本。
「はい、これ」
机の上へ置かれたのは、『金環の黄昏――ニーベルング四夜抄』と『ラプラスの指環』。
「……なるほど」
「何がです?」
「バトンはサエコから来て、本はあなたが持ってくるのね」
ミライが少し考える。
「まあ、結果オーライってことで」
「そういうことにしておきましょうか」
『ラプラスの指環』を手に取る。
ユウが見つけ、ミライが読み、ジュネーブのサエコへも渡っていた本。
一冊の物語が、人の手を巡ってきた。
その最後が、私らしい。
ページを開く。
物語は1912年。
俊一はまだ、御証を持っている。
けれど、もう「誰が持つべきか」だけの話ではなくなっていた。
第一幕「別れ」
1912年 秋|東雲別邸
俊一は、御証の箱を手元へ戻した。
澄乃は何も言わず、その様子を見ている。
御証について聞いた話は、どれも似ていた。
本物かもしれない。
偽物かもしれない。
そして、誰にも分からない。
「もう少し、調べてみます」
「御証を?」
「それも。親父や母さんのことも」
「どこへ行くの」
「まだ決めてない」
澄乃は小さく笑った。
「そう」
俊一は箱を抱え直し、玄関へ向かう。
「じゃあ」
「ええ」
それだけだった。
澄乃は、俊一の姿が木立の向こうへ消えるまで見送った。
第二幕「鷹峰」
1912年 秋|東京
久住から御証を渡されて以来、俊一は町の安宿を転々としながら、その由来を調べていた。古い家や記録を辿るうち、行き着いたのが鷹峰家だった。
取り次ぎを頼む際、俊一は自分の名と、久住から御証を預かったことを伝えている。それだけで、静馬には調べる理由になったらしい。
当主の忠道。妹の志津香。そして異父弟の静馬。
忠道は御証を一通り見たものの、真贋については首を振った。窓際にいた静馬が口を開く。
「本物。それは問題ではない」
静馬に言わせれば、真贋より、本物だと信じる者がいることの方が重要らしい。その事実だけで、御証には別の価値が生まれる。
「久住も似たようなこと言ってたな」
静馬の目が僅かに動く。
「久住惣兵衛」
「知ってるの?」
「名前。記録程度」
俊一は、自分に東雲と神門、双方の血が流れていることは知っていた。小平次から聞かされている。
山の「隠し」を越えられるのも、その血に理由があるという。ただ、その血がどこから、どう繋がったものなのかまでは知らない。
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