
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐74)
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昨夜と同様、良子と朝食をとる。仲居に聞くと、車だと二十分程で三井の実家がある、瀬田の集落に行けるという。
十一時に着けばいいんだがと話すと、それまでいらっしゃっても構わないと言ってくれた。しばらくくつろいでタクシーを呼ぶ。丁重に見送る仲居は、合志の黒いネクタイに少し驚いているようだった。チェーンを装着したタクシーは、大津署へ立ち寄った後、駅周辺から離れ雪道をゆっくり進む。積雪は集落に近づくにつれ増している。舗装された道かどうかも判らなかった。
「雪が降ると大変ですね」
と合志が後部座席から声を掛けた。
「ああ、この時期は仕事にならねぇかんら。今日はまぁだいい方で」
白手袋の運転手が応えた。この地方特有のイントネーションだろうか、車の揺れと上手く絡む。
合志は朝日の射し込む車窓から外を見る。過ぎて行くブロック塀にも四、五センチほどの雪が乗っかっていた。長い間の雪の重みがそうしたのか、斜めに傾いた電柱が途中何度も同じ絵を見せた。その幾つかにしがみつくようにとれかかった看板がぶら下がっている。雪は少しでも面積があると容赦なくそれらを覆うようで、看板の文字もほとんんど見えず、役を成さなかった。
やはり別府の雪とは比較にならないなと、合志は思う。隣の良子は、告別式ということで少し緊張しているのか、礼服に着替えてからあまり話さない。ただ黙って流れる景色を目で追うでも無く見ていた。
4
川沿いの道に入り、車は少しスピードを落とした。前方を見ると、白い雪道に喪服姿の男女が数人立っていた。と同時に指差し紙が見えた。どうやら男女が立っている地点から、右に入ったところが三井家のようだ。
タクシーを降りて訊ねると、まだ葬儀の途中だった。黒い腕章を付けた案内役が、別の部屋へどうぞと言った。案内されながら垣根越しに覗いた実家は、広い敷地の三分の二を占めていた。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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