
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐91)
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係長に連れられ畑山が入って来る。係長は、両手で二つのファイルを抱えていた。一つは分厚いグレーのファイル、もう一つは薄いブルーのファイルに綴じられた調書だった。
折りたたみの椅子に腰掛けて待っていた合志は、二人が腰掛けるまで、唇の乾きを感じながら視線を下方に向けていた。この部屋は交通課の隣にあった。一般市民をこちらの都合で待たせる部屋だったが、時より署員が利用することもあったため、他から不信に思われることもなく都合のいい場所だった。その部屋の左奥に立てた衝立に三人は隠れた。
窓の向こうで風が木々を揺すった。
「話しって何かね」
合志をちらりと見た畑山の表情は、いつもと変わらなかった。
「今回の事件を我々で少し整理してみようと思いまして」
内野が落ち着いてそれに応えた。
「あの元町の?」
「えぇ、お忙しいとこすいません。それに三井君の事件もです」
内野は口調は穏やかだった。
「何だ、とうとう根を上げたのか」
畑山は俯き加減の合志に向かい、白い歯を見せた。
「そうですね、中々奥の深い事件のようで。ぜひ畑山さんの経験からお知恵を頂きたい」
内野が応える。と同時に強い風が窓を叩いた。音が静まるのを待つようにして、内野は始めた。
「二月四日早朝発生した、元町の事件からですが。被害者名、久保岡直也。死因は毒物に因る窒息死。畑山さん、害者の引っ掻き傷は猫でしたね」
内野は確認する。
「そう、毒物はテトロドトキシンだ」
「生前の三井君の報告では、傷だけではなく、飲ませた可能性もあるとか」
「あぁそれは俺の判断でそう言った。飲ませたか、口に無理やり押し込んだか知らんが、状況からそう言っただけだがな」
「死体の格好が変ですね」
内野は調書に一度目をやって、それから訊ねたが、合志には始めから用意された質問に聞こえた。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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