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時空を超えて‥‥小説(世流寝狐13)



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     篠田がいなくなりようやくゆっくり食事がとれると思った矢先、また目の前にトレーが二つ並んだ。今度は良子と鑑識課の冴子だった。
    「ここいいかしら」
     と良子は既に腰かけながら言い、右手で遠慮気味の冴子の肘を引っ張って座らせた。
     良子が同席しているとはいえ、冴子の目の前で食事をするのは合志にとっては一大事であり、めったにこういう機会には遭遇できない。空いている席がここだけという幸運に恵まれたのだ。緊張して体が硬くなっているのが、自分でも分かった。
     良子と冴子の二人は、他の課の誰それがどうしたこうした、あの二係の署員と女性署員があやしいだのと噂話しを続けていた。ただ正確には、冴子の方は、相槌を打つだけでほとんど聞き役だったが。
     その間一度だけ、落ち着きの無い合志に良子が気づき、具合でも悪いの? と声を掛けたが、それ以外は終始、女性二人だけの会話だった。
     合志は、篠田のような男だったらきっとうまく話しに加わるのだろうと、この時ばかりはあの図々しい性格を羨しく思えた。
     そのうち話題は冴子のいる鑑識課へと移っていった。良子が冴子と付き合っている理由は二つある。一つはまだ配属されて間が無く職場慣れしていない冴子には、何でも吸収しようという気持ちがあり、他の女性署員に比べ、良子の話を素直に聞いてくれるということ、そしてもう一つは、三十三歳になる独身の三井への牽制だった。直接口には出さないが、私は三井さんが好きなの、分かる、だから貴方はダメよ、と冴子に悟らせるためしつこく三井のことを聞く。そしてさらに三井の話を始める際、落語の前座のように、パターン化された前振りが良子にはあった。それは必ず鑑識課を褒めることだった。この事は署内でも有名な話で当然のように合志の耳にも入っていた。
    「貴方いいわね、いい部署に配属されて」
     と良子が言う
     合志はまた始まった、と聞いていた。
    「そうですかぁ」
    「そうよ、うちの課なんて見てよ、気取り過ぎの上司に、ポリシーも無いような男性ばっかし。その点冴子のところは部下思いの畑山さんがいるし、ナイスミドルの竹山さん、それに素敵な独身の三井さんがいて、いいわねぇ」
     合志はポリシーの無い男とは自分のことだなと思い、ふん何がいいわねぇーだよ、とスプーンの音をたてながら福神漬を一度に頬張った。


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