
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐88)
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その夜合志は聞き込んだ情報の口止めと、畑山に対して自然に振る舞うことを良子に忠告して別れた。
「お早うございます」
いつも通り交通課の前を通って、擦れ違う署員に声を掛け、一係へ向かった。しかし足取りは今までとは違って重く感じた。合志は途中で畑山に出会わないことを心の中で願って歩いた。幸いにも朝一番に別室で係長と話すことができた。
「そうか、あの畑山さんがな」
内野は苦渋に満ちた顔で聞き終えた。
「信じられないことですが」
合志も報告はしたものの、それ以上何と言って良いのか分からなかった。
「そう言えば、釣りをしてる時、畑山さんから熊本にいた話を聞いたことがあったが――。それにしても三井君の悩みは、私が想像してた以上に、もっと重くて、危険なことだったんだな」
「遠山水江の名は、やはりどこにも出て来ませんでした」
ポツリと合志が言う。
「あぁ、あの後念のため羽柴家を代わる代わる見張らせたが、別に変わったことは無かったよ。しかしなぁ、畑山さんを取り調べるわけにはいかない、証拠が無いんじゃ。今君が話したことは、すべて想像にしか過ぎん。動機については充分考えられるが、立証できるほどではない」
――立証。合志は久保岡の事件で聞き込んだ、木底の草履と黒いコートのことを考えた。黒いコートが畑山さんとすれば、木底の草履は、目撃者の証言からすると畑山さんの奥さんになるが。いやこれも仮定にしか過ぎん。顔写真で聞き込んでも状況から無理だろう。まして三井の方となると、どう考えても不可能なのだ。
「暫くこのことは、君と私の胸にしまっておこう」
「沢田さんも知っています」
合志は応えた。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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