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[連載小説]月下の約束 逢魔が時に出逢ったもの(全10話) 第一話 逢魔が時に出会う


    あらすじ
    吸血鬼による殺人事件、そんな噂が流れていた。
    ゆかりはオカルト大好き、筋金入りの面食いの女子高生
    特に吸血鬼がでてくる耽美なホラーにハマっている
    新任の怪しい教師に逢魔が時には本物の吸血鬼に会うかもしれないよ、と警告をされたその日の夕刻
    夕闇の中、ゆかりの前に現れたのは美形の自称吸血鬼の薫
    好奇心が抑えきれず、彼らの領域に足を踏み入れてしまう
    吸血鬼による殺人事件は
    彼らの仕業なのか?それとも?
    恐怖と耽美な吸血鬼の世界に…と思っていたら、あれ?どうして?
    見た目は満点なのに、言動が変!
    私はコメディなんて求めてないのに…
    花嫁探しに来たという薫、
    彼は本物の吸血鬼?
    それともダメ男?
    ゆかりは求婚を受けるのか、それとも
    異種間ボーイ・ミーツ・ガールのちょっとホラーのラブコメディ

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    第一話 逢魔が時に出会う
    第二話 通りゃんせ
    第三話 月の下の吸血鬼
    第四話 吸血鬼の正体
    第五話 血の契約
    第六話 事故物件に住む男
    第七話 夢の国へ行こう
    第八話 不穏なデート
    第九話 実力(前半)
        実力(後半)
    最終話 吸血鬼は味音痴

    全話はこちらから⤵️



    第一話 逢魔が時に出会う

     月のない暗い夜でも、街には灯りがあり、人々が行き交う。
     それでも一歩踏み込めば、暗闇に引きずり込まれることがある。

     闇の向こうには、何がいるのか。
     人か、それとも——人ならざるものか。

    ---

     早朝の公園。
     散歩をしていた人物が、茂みの影に横たわる体を発見した。

     事件か、事故か。

     その遺体には傷もなく、争った形跡もない。
     ただ——

     その女の体には、血が一滴も残っていなかったらしい。

     警察発表は「死因不明」。

     マスコミは「不可解な変死」と言い換え、
     ネットは、もっと正直だった。

     ——吸血鬼だ。

     誰かがそう書き込んだ瞬間、話は一気にそちらへ傾いた。

     狙われるのは若い女性。
     抜かれた血液。
     夜の街を歩く影。
     夕暮れに人をさらう怪物。
     異形の存在。

     すべては——「吸血鬼の仕業」。

     事件は一件だけ。
     だが噂は増殖する。

     それはもう、事件というより——都市伝説だった。

    ---

     ゆかりの通う高校では、その都市伝説が昼休みの主役になっていた。

    「ねえ、昨日のニュース見た?」
    「血、全部抜かれてたんでしょ?」
    「こわ……」
    「夕方に一人で帰るの、やめたほうがいいよね」

     廊下のあちこちで、ひそひそ声が飛び交う。
     怖がっているくせに、どこか楽しそうだ。

     放課後、担任がいつもより強い口調で言った。

    「最近物騒だから、寄り道しないで早く帰りなさい。特に女子はね」

     女生徒たちは一斉に頷く。

    「吸血鬼とか出るらしいですし」

     誰かが冗談めかして言うと、先生は表情を固くした。

    「悪ふざけはやめなさい。興味本位で事件現場の近くに行ったりしないように」

     ゆかりは、その様子を冷めた目で見ていた。

    (そうはいわれても……)

     殺人事件なら怖い。
     でも——吸血鬼なら、むしろ惹かれてしまう。

     ゆかりは鞄から本を取り出す。

     美しい装丁の一冊。

    「ミッドナイト……」

     吸血鬼と人間の少女を描いたホラー小説。
     ゆかりは今、この作品に夢中だった。

     オカルトが大好きな女子高生。
     ホラー小説は、彼女の愛読書。

     今ハマっているのは吸血鬼もの。

     耽美で、残酷で、血と恐怖に彩られた愛の物語。

    (美しければ、それでいいの)

     ゆかりは筋金入りの面食いだった。

    ---

     その日も、ゆかりはまっすぐ帰らなかった。

     向かったのは、校舎の端にある図書室。

     夕方の図書室は人が少なく、静かで——最高だ。

     棚から取り出したのは、分厚い文庫本。

     ——『吸血鬼殺人事件』

     もっと吸血鬼の本を読みたい。
     その一心で通っている。

    「殺人事件か……」

     ページをめくりながら、呟く。

    「この本みたいに、美しい遺体なんてあるのかな」

     花と蝶に囲まれた、陶器のような完璧な死体。

     吸血鬼。
     夜。
     血。
     不老不死。
     人間社会の裏に潜む存在。

     胸が高鳴る。

     ふと、ヒステリックに怒っていた担任を思い出す。

    (……美しくないなぁ)

     現実と創作を比べながら考える。

     血液を一滴も残さず抜く。
     それには相当な力か、あるいは綿密な計画が必要だ。

    (ロマンはあるけど……現実的じゃないかも)

     窓の外は、いつの間にか空が茜色に染まり始めていた。

     ゆかりはまだ知らない。

     この帰り道で。
     理想と現実の落差を知ることを。

     そして——

     自分の「理想の吸血鬼像」が、音を立てて崩れることを。

    ---

     図書室の時計が、かちり、と音を立てた。

     顔を上げる。

     室内の照明が自動で落ちていた。
     窓の外には、夕焼けの名残だけが残っている。

    「まだいるのかい」

     低く、落ち着いた声。

     振り返る。

     入口に立っていたのは——藤原ヒカル先生だった。

     長身。黒に近いジャケット。
     整った顔立ちと、どこか現実感の薄い雰囲気。
     今年きた新任の先生。こんなにイケメンなのに、なぜか話題にならない。

     それがむしろ、
     ゆかりの好奇心がくすぐる。

    (……潜んでいる吸血鬼みたい)

    「すみません、夢中になってて」

     本を閉じると、先生はゆっくり歩み寄り、表紙を一瞥した。

    「……ずいぶん物騒な本を読むんだね」

    「趣味です」

     即答。

     先生は小さく息をついた。

     笑ったのか、呆れたのかは分からない。

     窓の外へ視線を向け、静かに言う。

    「もうすぐ日が暮れる。逢魔が時だ」

     その言い方に、妙な引っかかりを覚える。

    「え?」

    「境界が曖昧になる時間だ」

     一瞬だけ、目が鋭くなる。

    「本物の“吸血鬼”に会うかもしれないよ」

     冗談だと、笑えなかった。

    「……脅かさないでくださいよ」

     ゆかりが言うと、先生はわずかに口角を上げた。

    「忠告だ。今日は寄り道せず、まっすぐ帰りなさい」

    ---

     校舎を出ると、空はほとんど夕闇だった。

    (本物の吸血鬼、か)

     言葉が頭から離れない。

     冗談のはずなのに、背中が冷える。

     校門を出て、坂道を上る。

     街灯は、まだ点いていない。

     途中で、足が止まった。

     ——人影。

     坂の上。
     夕闇の中に、誰かが立っている。

     ロングコートが風に揺れる。

     すっと立つその姿は、この場に溶け込んでいるのに、どこか現実離れしていた。

     他に人はいない。

     息をひそめた、その瞬間。

     人影が、ゆっくりと振り返る。

     白い肌。
     沈む夕陽に、髪が金色に見える。

     影の中で光る、深い緑の瞳。

     少年の面影を残しながら、
     人間とは思えないほど整った顔。

     ——美形すぎる。

     思わず、息をのむ。

    (なにこれ……)

     頭に浮かぶ。

     ——本物の吸血鬼に会うかもしれない。

    (本物……!)

     喜びと緊張で、体が固まる。

     少年はゆかりを見つめたまま、ゆっくり歩き出した。

     音もなく、距離が縮まる。

     夕闇が、二人の間を満たす。

     目の前で、止まる。

     近い。
     近すぎる。

     そして——綺麗すぎる。

     ゆかりは、考えるより先に口を開いていた。

    「……吸血鬼」

     言った瞬間、後悔する。

     だが。

     少年は一瞬きょとんとしてから——

     ゆかりの目を見て、言った。

    「あたり」

     淡々と。

     そして、楽しげに笑う。

     からかうような笑み。
     口元から覗く、牙のような八重歯。

     あまりにも——それらしい。

     少年は顔を近づける。

    (近い近い近い!どうしたらいいの!?)

    「君さ——」

     そのとき。

    「薫くーん」

     場違いなほど明るい声。

     少年——薫が動きを止める。

    「……ヒカル」

     振り返ると、坂の下から先生が歩いてくる。

     ふたりは明らかに初対面ではなかった。

    「ああ……やっぱり、会っちゃったね」

    (やっぱり?)

     胸の奥で警報が鳴る。

    「この人は……?」

     恐る恐る尋ねる。

     ヒカルは一拍置き、言った。

    「僕の親戚だよ。薫くん」

     ——親戚。

     見た目と、まるで噛み合わない。

     ゆかりが挨拶すると、薫も話しかけようとする。

     だが。

    「薫、今はいい」

     ヒカルが半歩前に出る。

     それ以上話させない位置だった。

     薫は不満そうに眉をひそめるが、口を閉ざした。

    「さて」

     ヒカルはゆかりに向き直る。

    「僕たちはこれから用事がある。ここまでだ」

     穏やかなのに、有無を言わせない声。

    「君は、寄り道せず帰りなさい」

    「……はい」

     頷くしかなかった。

     二人は並んで坂を下りていく。

     その背中を見送りながら、胸がざわつく。

    (親戚?)
    (吸血鬼って認めたよね?)
    (“今はいい”って何?)

     納得できるはずがない。

     ゆかりは数歩進み、立ち止まる。

     そして、踵を返す。

     まだ見える。

    (……ちょっとだけ)

     言い訳をして。

     ゆかりは、距離を保ちながら二人の後を追い始めた。


                       第二話へ続く

    第二話 通りゃんせ



    あとがき になります

    マンガ家に憧れていました、以前からマンガとして描けたらなどと思ってましたが、
    この度、小説として書きあげることができました。
    自分の中の、長い間の妄想が形になり嬉しいです
    ホラーかと思いきやかなりのラブコメディです、コメディ大好き💕なんで

    実は以前書いたこちらの小説の修正加筆しているものになります。
    コレの続編を書いていたのですが、書いてるうちに、
    前作が所々ちょっとこれじゃないと思うところが出て、現在に至ります。
    あのときはとにかくかき上げたい、が先走っておりました。頭の中ではいろんなシーンがあったり、なかったり
    後半はだいぶ加筆ありです。


    前作はpixivに載せてあります

     
     
    日々のアレコレをnoteに綴っていきたいと思っております マンガや小説などにも手を出してます、イラストはAI生成イラストと両方あります。それらもゆるく投稿してます 物語投稿サイトTALESにも投稿

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