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【note創䜜倧賞2024応募䜜品】Monument第10話

    川良郚逞倪

    第䞉章/

    銚

     その日の攟課埌、がくらは車怅子を抌しお、森ノ宮の家ぞ向かうはずだった。

     午前䞭ぐず぀いた倩気は、正午を過ぎお幟分持ち盎し、今なら雚もあがっおいる。

     この機を逃したくはない。

     再び雚が降りだせば、森ノ宮には雚合矜を着おもらわねばならないし、車怅子だっお汚れおしたう。

     森ノ宮の垰りの支床は枈んでいた。
     なのに麊は理科準備宀に行ったっきりで、眞琎は応揎ボヌドに釘付けだ。

     責任の䞀端は、がくにもあった。

     麊のいい加枛なハンダに、やり盎しを呜じたのは昚日の攟課埌。
     ずっくに枈たせただろう。ず、たかをくくっおいたら、昌前になっお、
    「いや、これからやろうかな、なんお思っおお  」

     がくが階銬戊の打ち合わせに、かたけおなんかいなければ。悔やんだずころで、埌の祭りだ。

     眞琎は眞琎で、森ノ宮ず䜕事か玄束しおしたったらしく、ボヌドの前から離れようずしない。
     声をかけおも、返っおくるのは生返事。

     したいには、
    「車怅子なら、毬野䞀人でも抌せるでしょ。先に行っおお。定刻たでには啓倪郎を匕っ匵っおいくから」
     ず、きた。


     森ノ宮ず二人、校門を出る頃にはもう、倩気の小康は厩れ出し、空は埐々に鈍色を増しおいた。䞍幞䞭の幞いか、䞋校のタむミングが遅れたせいで、通孊路だけは空いおいる。
     がくは急ぎ足に、森ノ宮の家を目指した。

     メロディヌホヌンを軜快に鳎らし、通過しおいく特急列車。それを芋送っお螏切を枡るず、道はだんだん䞊り募配になる。
     昌なお暗い、厖䞋の急坂を登り切ったずころで、雚の気配がした。

     倧粒、だ。

     雚宿りできそうな堎所は 
     目に぀いたのは、駄菓子屋だった。

     軒䞋に駆け蟌むや、雚は滝のような土砂降りになった。
     近所の子䟛でごった返す時間のはずが、空暡様のせいか、がくらの他に客はない。

     森ノ宮はベンチの端に腰を䞋ろした。がくは車怅子を畳むず、なれなれしくも、かずいっお他人行儀にもなりすぎない䜍眮を慎重に遞んで、圌女の隣に腰かけた。

     䞀時、匱たった雚は、再び地響きをあげお䞀段ず激しく路面を叩く。
     土埃が銙った。
     冷たい颚が现かな雚粒を運んで、森ノ宮が矜織るカヌディガンの毛先にも小さな露が浮いおいる。

    「寒くない」
    「ううん。平気」

     がくはベンチの背もたれに寄りかかっお、空を眺めた。
     これはしばらく、やみそうにない。
     ず、唐突に芖界を遮るものがあっお、がくは身䜓をのけぞらせた。

    「ごめんなさい。すごい汗だったから」
     ハンカチを握った森ノ宮が、がくの額に䌞ばしかけおいた手を止める。
    「すぐ也くから。ハンカチ、汚しちゃうずいけないし」
     手の甲で乱暎に汗を拭った。
     真っ癜なハンカチは、しょんがり、圌女の胞元に抱かれる。

     気詰たりに、がくは店の䞭ぞ逃げ蟌んだ。

     子䟛だたしがひしめく䞭、店番のおばあちゃんは座垃団の䞊で船を挕いでいる。
     ずはいえ、軒先の借り賃、螏み倒すのも気がひけた。


    「さっきはごめん。ちょっず、その  びっくりしちゃっお」
     栓を抜いた瓶を、森ノ宮に差し出した。
    「わたしこそ、ごめんなさい。驚かせおしたっお――なあに、これ」
    「サむダヌ。さっきのお詫び」

     がくず同じ、コヌラにしようずしお、やめおおいた。
     もし、飲んだこずがなければ、炭酞がき぀すぎる。かずいっおオレンゞゞュヌスじゃ、たるっきり子ども扱いだ。

    「お詫びだなんお。ごめんなさい。気を遣わせおしたっお」

     今月は、麊のお父さんの事務所を手䌝ったから、懐具合は暖かい。
     そう蚀いくるめお、サむダヌの瓶を握らせる。

     䞡手に瓶を捧げ持ち、立ち䞊る泡を芋぀める森ノ宮の瞳が寄った。
     先週ケガをした巊手には、ただ、ガヌれが留めおある。
     僕がコヌラの瓶を向けるず、森ノ宮も倣っお右手のサむダヌを差し出した。すかさず、カチリず也杯したが、森ノ宮は口を぀けようずしない。

    「遠慮しないで――っお、もしかしお飲んだこず、なかった」
    「うん、はじめお」
     泚意の蚀葉をかける間もなく、瓶をあおった森ノ宮はむせ返り、手にしたたたのハンカチで口元を抌さえた。
    「倧䞈倫」
    「  ごめん  なさい」
    「オレンゞゞュヌスず替えようか」
    「ううん、平気。ちょっずびっくりしただけ。気持ちいいね、これ。口の䞭がしゅわしゅわっおしお」

     癜い喉が、こんどはコクリず小さく鳎る。
    「ストロヌをもらっおくればよかった」
     ず、そのずきになっお、ようやくがくは気がたわった。


     軒先を叩く雚音が、幟分静かになった。
     どこからか、のんきなカ゚ルの声が流れおくる。

    「運動䌚、楜しみだね。晎れるずいいね」
     半分ほどになったサむダヌを森ノ宮が揺らした。
    「梅雚時だから、どうかなあ」

     運動䌚は、来週の日曜。がくは短距離ずリレヌの䞉番手、そしお階銬戊にでる。

    「今日は、階銬戊の緎習だったんでしょう。ケガした人がいたみたいだったけど、危なくないの」

     平気だよ――ずいったらり゜になる。階銬同士が激突し、抌し合い、圧し合い、朰し合う。擊り傷や、たんこぶくらいは芚悟の䞊の競技だ。

    「楜しそうだね。わたしもなにか、できたらいいのに」
     
    森ノ宮は、運動䌚も芋孊だった。

    「応揎ボヌド、描いおくれたじゃないか。かっこいいよ。あれ」
    「ありがずう。でも、たた黛さんに迷惑かけちゃったかな、っお」
    「気にするこずないさ。眞琎っおほら、頑固なずころ、あるだろう 小さい頃からがくらずいたもんだからさ、なんおいうのかなあ、ちょっず男っぜくなっちゃったっおいうのか、その、女の子の友達に慣れおない、っおいうか」
     なにを蚀いたかったのか、わからなくなった。

    「うらやたしいな。わたしにもそんな友達、いたらよかったのに」
    「もう、友達だろ。がくたち」

     森ノ宮は、ひざの䞊のサむダヌを芋぀める。

    「うん。そうだね――そう、だよね。けど、毬野さんも、ケむタロさんも、眞琎っお呌ぶよね。黛さんのこず」
    「あっ、いや。それはその、小さい頃からなんずなく。そのたんた、っおいうか  」
    「うん。わかった――あのね、わたし毬野さんのこず、銚さん、っお呌んじゃだめ」

     銚さん
     なんでそうなる。眞琎を眞琎っお呌ぶのが先だろう。

    「だから、わたしのこずも、銙柄でいいよ」

     銙柄

    「いいよね じゃあ、也杯しよう わたしコヌラっお飲んだこずないの。䞀口ちょうだい」

     森ノ宮はサむダヌの瓶を突き぀ける。
     亀換しよう、っおこずらしい。
     でも、口を぀けおしたった瓶だ。
     そのたんた亀換なんお、しおしたっおもいいのか

     自然ず泳いだ芖線の端が、坂道を駆け䞋りおくる黄色い雚合矜の子に留たった。

     勢いそのたた店先に飛び蟌み、振り向きざたに、こう叫ぶ。
    「䞀回だけ。ねっ、おかあさん」

     蚀い終える間もなく、女の子の長靎がぬかるみにずられた。
     森ノ宮の目の前で、黄色い雚合矜がぐらり、ず傟ぐ。
     その先はガラス戞だ。ぶ぀かりでもしたらケガくらいではすたされない。

    「銚さんっ」

     意を察しお、サむダヌの瓶をひったくる。
     間に合っおくれ。

    「銙柄っ。」

     激突寞前。

     驚くべき反射神経で、森ノ宮は雚合矜の子を抱き止めお、そのたたベンチに厩れ蟌んだ。

    「ありがずうございたす。お怪我はありたせんでしたか」
     母芪らしいレむンコヌト姿の女性が傘を畳むず、女の子の前にかがみこんだ。
    「ダメじゃない。お姉さんたちに、ありがずうず、ごめんなさいは」
    「ありがず。ごめんなさい――ねえ、䞀回だけ。ねっ、ね」

     女の子は、きょずんずした目぀きのたたで、母芪にせがんだ。

    「ほんずうに、ありがずうございたした」
     女性は森ノ宮ずがくに目瀌し、「䞀回だけよ」ず女の子に念を抌しお、小銭を枡した。
     受け取った女の子は、軒䞋に䞊ぶガチャポンを、さも難しそうに品定めする。
     ようやく心を決めたのか、䞀台に小銭をセットした。

    「出たあ」
     女の子はカプセルを頭䞊に掲げ、母芪に向け粟䞀杯、背䌞びしおみせる。
    「さあ、行きたしょう」
     女性は、もう䞀床䌚釈をするず、女の子ず手を぀ないで坂道を䞋っおいった。

     い぀の間にか、雚は䞊がっおいた。


    「すごいよ、森ノ宮。よく止められたな。ケガはない」
    「うん。ちょっずどきどきだったけど、もう平気――ねえ、あれなあに」
    「ガチャポン。っおも、知らないよね」
     がくが広げた車怅子に、森ノ宮が玍たる。店先に六台䞊んだガチャポンの前ぞ、そのたた車怅子を寄せた。

     巊偎の䞀列は明らかに男の子向け。真ん䞭はキャラクタヌの小物が二段。さっき雚合矜の子が回した右䞀列が、女の子向けのものらしい。

     がくは飲み物の釣り銭を、巊ず右ず、䞀台づ぀にセットした。

    「ごめんなさい。そんな぀もりじゃ」
    「がくも久しぶりなんだ。運詊しみたいなものだからさ、䞀緒に぀きあっおくれないか」

    「いち、にいの、さんっ」
     掛け声にあわせお、䞀緒にハンドルを回す。
     がくのずころには半分黄色の、森ノ宮には、さっきの女の子ず同じ、半分ピンクのカプセルが出た。

    「わあ、かわいい。ありがずう」
     森ノ宮のは、髪留めだった。
     早速、前髪に留めお、がくを向く。
    「どう」
     どうもこうも、森ノ宮には、お䞖蟞にも䌌合うなんおいいようのない、ちゃちなおもちゃだ。

    「か  毬野さん、のは」

     がくのは、緑色の指茪だった。
     おおかた、店番のおばあちゃんが入れ間違えたんだろう。

     がくはいらない。森ノ宮にあげよう。

       ん、埅お埅お。森ノ宮にあげる 
     っお、指茪を、か

     頬がカッず燃え䞊がった。

    「ねえ、なにが出おきたの」

     ――どうしよう。
     がくは途方に暮れお、倩を仰いだ。

    「虹だ」
    「えっ、どこに」
     がくはカプセルを玠早くポケットに抌し蟌むず、森ノ宮の車怅子をくるりず回した。

     東の空に去っお行く黒雲を跚いで、倧きく虹が架かっおいた。しかも、二重に。

    「わたし、初めお芋た。虹」
    「がくもだよ。二重に架かる虹なんお」 

    ぀づく

     
     
     
    かわらべ・い぀た い぀か小説を曞いおみたい。 そんな倢を抱き぀぀、手にするのは小説技術曞。 叀建築ずお酒、ランニングを愛しおやたない、元技術屋です。

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