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第二郚  雚䞊がりの倩(そら)        第十䞉話 そのさき

    眠れない倜を過ごした。

    もし、もう䞀床䌚えるずしたら。
    そんな願いを胞に、私は車を走らせた。
    ハンドルを握る手に、自然ず力が入る。

    二十幎ずいう歳月は、人を倉えるには十分すぎる時間だった。

    目的地に着くず、そこは曎地になっおいた。

    雑草だけが、流れた幎月を物語っおいる。
    たしかに、䜏所は間違っおいない。
    この堎所だったはずだ。

    車を降り、蟺りを芋回した。

    䜕か手がかりはないだろうか。

    家の向かいには、昔ながらの喫茶店があった。

    同玚生が店を継ぎ、信倪郎は毎朝、その『歩笑倢ぜえむ』で珈琲を飲むのだず話しおいたこずを思い出した。

    そこなら、䜕かわかるかもしれない。」

    私は喫茶店ぞ向かった。

    『歩笑倢(ぜえむ)』

    ず曞かれた焌き杉の䞀枚板の看板。
    窓蟺には季節の花が食られおいた。

    私は深く息を吞い、扉を抌した。

    カラン――。

    鈎の音が静かに店内に響いた。

    思っおいたより、店の䞭は小ぢんたりずしおいた。
    店内には珈琲の銙りが満ちおいた。

    䞀歩足を螏み入れるず、カりンタヌ越しに、信倪郎ず同䞖代に芋える男性ず、高霢の女性が笑顔で迎えおくれた。

    いらっしゃいたせ。お奜きなずころにどうぞ

    私は窓越しに向かいの曎地がよく芋える垭を遞んで腰を䞋ろした。

    メニュヌ衚に目を萜ずす。

    「ブルヌマりンテンずグラタントヌストを頌むっお蚀っおいたな  」

    私はメニュヌを閉じた。

    「氎だしコヌヒヌず、グラタントヌストをお願いしたす。」

    カりンタヌには、数人の垞連らしき客が静かに珈琲を楜しんでいた。

    窓の倖に広がる静かな空き地を芋぀めながら、圌の家がどうなったのか、聞くべきか聞かざるべきか、私の心は揺れおいた。

    しばらくするず、こんがりず焌けたグラタントヌストず、冷たい氎だしコヌヒヌが運ばれおきた。

    軜く䌚釈をしお受け取る。

    氎だしコヌヒヌを口に運んだ。

    やわらかな甘みずたろやかな口圓たりが広がり、少し緊匵がやわらぐ。

    ふず、圌が話しおいた同玚生――棚田さんずいう名前が頭に浮かんだ。

    すみたせん。突然こんなこずを䌺っお倱瀌ですが もしかしお、棚田さんでらっしゃいたすか

    棚田さんが答えようずした、その時だった。

    お口に合うかしら初めおのお客さんよね
    ぇ」
    ​奥から高霢の女性が笑顔で声をかけおきた。

    絹さん ブルマン、少しだけ薄めで 

    はい、はヌい

    絹さんは肩をすくめ、目を閉じおにこっず笑うず、たた奥ぞ戻っおいった。
    その仕草がなんずも愛らしかった。

    棚田さんは苊笑しながら、ネルからゆっくりず萜ちる珈琲を芋぀めた。

      もしかしお、利奈さん」

    手にしおいたグラスを眮くず小さく頷いた。

    はい。

    やっぱり。信倪郎がよく話しおた。」

    棚田さんは懐かしそうに笑った。 

    私は意を決しお蚀葉を玡いだ。

    倱瀌ですが、䌺っおよろしいですか
    信倪郎さんのお宅がこの蟺りにあったず思うのですが  」

    棚田さんは少し考えるように黙り蟌んだあず、ゆっくり話し始めた。

    信倪郎さ  色々あったんだ。」

    棚田さんは珈琲を䞀口飲んだ。

    あい぀、本圓に苊劎した。」

    胞の奥がざわ぀くのを感じながら、私は小さく頷いた。

    棚田さんはそこで蚀葉を切った。

    私はその先を聞くのが怖かった。

    離婚したよ。嚘さんず奥さんは家を出た。」

    棚田さんは遠くを芋るような目をした。

    おばさんず二人で暮らしおいたけど  
    信倪郎自身が倒れたんだ。
    くも膜䞋出血で。」

    棚田さんはそう蚀うず、静かに珈琲を口に運んだ。

    私はグラスを匷く握りしめた。
    時間だけが止たったような気がした。

    信倪郎さ、ずっず利奈さんのこず話しおたんだよな。」

    私は思わず顔を䞊げた。

    二十幎。

    その歳月が、䞀気に胞ぞ抌し寄せた。

    元気でいるかなっお。幞せに暮らしおいるずいいなっお。そんなこずをよく蚀っおたよ。」

    私は思わず芖線を萜ずした。

    私も同じこずを思っおいた。

    窓の向こうの空き地が滲んで芋えた。

    そこには、もう圌の家はない。

    そしお、私の知らない二十幎があった。

    グラスを握りしめたたた、指先が冷たいのも忘れおいた。

    右半身に麻痺が残った。でもな、あい぀頑匵ったんだよ。リハビリしお、たた歩けるようになった」

    棚田さんは少し笑った。

    信倪郎は、昔から負けず嫌いだったからな」

    涙が静かに頬を぀たった。

    胞の奥が苊しかった。

    私が知らない堎所で。

    私が知らない時間の䞭で。

    圌は䜕床も倧切なものを倱った。

    それでも生きおきた。

    生きおいおくれた。

    先週も䌚っおきたよ」

    棚田さんは穏やかに笑った。

    杖は぀いおる。でも元気だった」

    生きおいる。

    圌は、生きおいる。

    涙が蟌み䞊げた。

    棚田さんは静かに私を芋た。

    「  逢いにいくか」



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    はじめたしお ゆるりたたゆらたりあ改め矎凪です。 経隓を経た人生の節目の今なら曞けるこず、曞きたいこずを倧切にしたいです。 誰かの䜕気ない䞀蚀や行いが、その埌の人生を支えになるこずがある。 静かに誰かの心に残る蚀葉を綎れたらず思いたす。 どうぞよろしくお願いいたしたす。

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