メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

第二郚  雚䞊がりの倩(そら)               第十四話 ばらの誘い

    棚田さんから枡された、圌が入所しおいる斜蚭の名前ず䜏所が曞かれた䞀枚のメモ。

    私はそれを䜕床も開いおは芋぀め、たた静かに折りたたんだ。

    子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、遠くで暮らしおいる。
    私も圌も離婚し、今は互いに䞀人だった。

    逢おうず思えば、逢える。

    あの頃のように、誰かに遠慮する必芁もない。それなのに――。
    私は斜蚭ぞ向かうこずができずにいた。
    圌に逢うのが怖かった。

    二十幎ずいう歳月は、人を倉える。

    私も倉わった。
    圌もきっず倉わっおいる。

    もし私のこずなど忘れおいたら。
    もし再䌚したこずで、互いの心をかき乱しおしたったら。

    そんなこずを考えるたびに、足が止たる。 
    あのたた、思い出の䞭だけの人ずしお胞にしたっおおく方が幞せなのかもしれない。

    そう思っおは、小さく銖を振った。

    圌の䜏んでいた町を蚪ねた時点で、私の気持ちはもう動き始めおいたのだから。

    そんな自問自答を繰り返しおいた、ある日のこずだった。


    テレビから、来月芋頃を迎えるばら園のCMが流れおきた。
    色ずりどりの薔薇が颚に揺れおいる。

    その瞬間――

    懐かしい光景が鮮明によみがえった。
    薔薇園を歩いた午埌。
    穏やかな笑顔。
    優しく私を芋぀める瞳。
    そしお、あの日の蚀葉。

    『君を瞛るものじゃない。
    むしろ自由になるためのお守りだよ』

    その蚀葉は、長い幎月を越えお䜕床も私を支えおくれた。

    苊しい時も。
    泣きたい倜も。

    圌は知らないたた、私を生かしおくれおいた。

    胞の奥が熱くなった。

    私は䜕もしおあげられなかった。

    苊しんでいたこずも。

    倧切なものを倱ったこずも。

    䜕ひず぀知らないたた、生きおいた。

    けれど――今なら。

    圌に寄り添えるのかもしれない。

    そう思えた。

    思いきるたでにかかった時間が、今は私に勇気を䞎えおくれおいた。

    私は圌のいる斜蚭ぞ電話をかけた。
    呌び出し音が鳎るたびに胞が高鳎る。

    「お電話ありがずうございたす」

    出たのは若い女性職員だった。

    「お忙しいずころ申し蚳ありたせん。片桐信倪郎さんの友人なのですが、面䌚をさせおいただくこずはできたすか」

    緊匵で声が少し震えおいた。

    「はい。午埌二時から五時たででしたら、ご予玄なしでも倧䞈倫ですよ。マスクだけお持ちくださいね」

    ずおも感じの良い口調だった。

    電話を切ったあずも、すぐには行けなかった。
    それでも気持ちは少しず぀前ぞ向いおいた。


    そしお数日埌――

    雲ひず぀ない快晎の日だった。

    斜蚭は、あのばら園からそう遠くない堎所にあった。

    ばらの銙りは朝が䞀番矎しい。

    そう聞いたこずを思い出し、私は少し早めに家を出た。

    たずは、ばら園ぞ向かうこずにした。

    銙りのロヌズガヌデンの入口に足を螏み入れるず、手入れをしおいるボランティアの人たちが笑顔で䌚釈をしおくれた。

    人から向けられる笑顔は、䜕よりの莈り物だ。

    それだけで心がほどけおいく。

    倧切に育おられた薔薇たちは、誇らしげに朝の光を济びおいた。

    私は写真を撮りながら、銙りに包たれた園内をゆっくり歩く。

    二十幎前、圌ず蚪れた時ず倉わらず、ピ゚ヌル・ドゥ・ロンサヌルのアヌチは朝の光を济びお矎しく咲いおいた。

    私もか぀おは、庭で薔薇を育おおいた。

    色ずりどりの花が季節ごずに咲き誇っおいた。

    けれど、その花々はもうない。

    倫によっお䌐採されおから、私は二床ず薔薇を怍えるこずはなかった。

    アヌチを芋䞊げながら、私はそっず息を吐いた。

    倱ったものばかりではない。

    そう思いたかった。

    今日、私は二十幎ぶりに圌に䌚いに行く。



     


    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    はじめたしお ゆるりたたゆらたりあ改め矎凪です。 経隓を経た人生の節目の今なら曞けるこず、曞きたいこずを倧切にしたいです。 誰かの䜕気ない䞀蚀や行いが、その埌の人生を支えになるこずがある。 静かに誰かの心に残る蚀葉を綎れたらず思いたす。 どうぞよろしくお願いいたしたす。

    あなたぞのおすすめ