ストレスで、食べられなくなる ―― "いつもの味"を備えるって話
今週は、水(「断水したら何が止まる?」「水のため方」)、食べもの(「非常食は買わなくていい」「お湯であったかい一杯」)と、少しずつ備えを積み重ねてきたね。
ここまで来たあなた、ほんとにすごいよ。
(きのうの"温める"話は、こっち)
でも今日はね、ちょっと毛色の違う話をさせて。
"備えた物を、いざその日、ちゃんと食べられるか"って、話。
一生懸命、備えた。でも「食べられない」ことがある
水も、食べものも、お湯も、がんばってそろえた。
でもね ―― いざその日、「食べられない」ことが、あるんだ。
意外でしょ? せっかく備えたのに、食べられない。でも、これ、けっこう起きることなんだよ。
災害みたいな大きなストレスがかかると、人は、食欲がストンと落ちる。大人でも、そう。まして子どもは、"いつもと違う"というだけで、ぱたっと食べなくなることがある。
僕、防災の実務に関わっていた頃、「せっかく用意したのに、うちの子、何も食べてくれなくて」っていう声を、何度も聞いた。
でもね、これは ―― わがままでも、親の準備不足でも、ないんだ。
体と心の、ごく自然な反応。誰にでも起きること。だから、まず、そこで自分を責めないでね。
いちばん効くのは、"栄養"じゃなくて"安心できる味"
ここで、大事な気づき。
防災の食べものって、つい「カロリー」とか「栄養バランス」で考えがちだよね。もちろん、それも大事。
でも、いざという時、いちばん効くのは ―― "安心できる味"なんだ。
不安で、ざわざわした心に、"いつもの味"がひとつ入ると、ふっとほどける。「あ、大丈夫だ」って、体のほうが、先に思い出す。
だから、備えの中に、「栄養満点の非常食」だけじゃなくて、「好きなもの・いつものもの」を、ちゃんと入れておく。
これが、地味だけど、すごく大きな備えなんだ。
いつもの味・好きなおやつを、備えに入れる
やることは、シンプル。
子どもの好きなお菓子
いつものふりかけ
飲み慣れたスープやジュース
好きなカップ麺、レトルト
こういう"いつものもの"を、備蓄の中に、少し混ぜておく。それだけ。
「栄養バランス的に、どうなの?」って思うかもしれない。でも、いいんだ。まず"食べられる"ことが、心と体を守る。栄養のことは、落ち着いてからで、じゅうぶん間に合う。
「今日はお菓子ばっかりになっちゃったな…」って、自分を責めないで。それでいい。むしろ、それが正解の日も、あるんだ。
甘いものは、心のスイッチ
とくに、甘いもの。果物の缶詰、チョコ、ゼリー、あめ。
甘いものは、疲れた心を、そっとほどいてくれる。「ホッ」の力があるんだよね。
なかでも果物の缶詰は、スグレモノ。シロップで水分も取れるし、常温で長持ち、包丁もいらない。避難生活の"ちいさなごほうび"に、ぴったりだよ。
赤ちゃんがいる家へ ―― 液体ミルクが、すごく心強い
ここからは、当てはまる家族がいる人へ。とても大事な話だから、ゆっくり読んでね。
まず、赤ちゃん。
断水・停電したとき、実は"粉ミルク"って、けっこう大変なんだ。お湯と、きれいな水と、消毒した哺乳瓶が、いる。断水した部屋で、それを全部そろえるのは、なかなかしんどい。
そこで、すごく心強いのが ―― 液体ミルク。
お湯も水も、いらない。常温で、そのまま飲ませられる(哺乳瓶に移すだけ)
断水・停電でも、すぐにあげられる
厚生労働省が2018年に国内での販売を解禁して、今はスーパーやドラッグストアでも買える。内閣府や厚労省も、災害の備えとしてすすめてるんだ
ちょっとした注意も、そえておくね。
賞味期限は、粉ミルクより短め(紙パックで半年〜、缶で1年ほど)。だから、ふだん使いしながら買い足す"ローリングストック"がコツ
開けたら、使い切り(飲み残しはあげない)
寒い時期は、冷たいと赤ちゃんが飲まないことがあるから、少し温める配慮も
目安は、最低3日分、できれば1週間分×人数
配られる物が「食べられない」人が、いる
赤ちゃんだけじゃない。
避難所で配られる食事が、食べられない人が、いるんだ。
乳幼児
食物アレルギーのある人
噛む・飲み込むのが難しい、高齢の家族
こういう人たちに合う"特殊な食品"は、行政の備蓄も、実はそんなに多くないのが実情なんだ(農林水産省の、要配慮者向けのガイドにも書いてある)。
つまり ―― 当てはまる家族がいるなら、自分で用意しておくのが、いちばん確実。ここは、公助を待つより、自助がしっかり効く場面なんだよ。
アレルギーのある子には、食べられる物を、いつもの備蓄とは"別に分けて"、少し多めに
高齢の家族には、やわらかい物、飲み込みやすい物を、少し多めに
(「何を、何日分、どう確認して備えるか」―― 要配慮者の備えを、もっとくわしく、順番立ててまとめたものは、週末の"回し方"の記事で渡すね。当てはまる人は、そっちも見てもらえたらうれしい)
備えは、大切な人を思うこと
最後に、いちばん伝えたいこと。
防災の食べものは、お腹を満たすためだけの、ものじゃない。
心を、守るための、ものでもあるんだ。
追い詰められて、食欲もなくなって、心が折れそうな時。"いつもの味"が一口、「まだ大丈夫」って、小さな灯りをともしてくれる。
あなたが、大切な人の"好きなもの"を、ひとつ、備えの棚に入れておく。
それは、その人の心を守る準備。いちばん優しい、備えだと思う。
(白状すると、僕にも"これがあると落ち着く"っていう、いつもの味がある。。。まあ、それが冷凍庫をアイスで埋め尽くす原因なんだけどね)
今日できる、いちばん優しい一歩
今日できることは、ひとつ。
家族の顔を、思い浮かべてみて。
「この人が、しんどい時でも、これなら食べられそうだな」っていうものを、ひとつ、思い出す。
子どもの好きなお菓子でも、自分の好きなカップスープでも、なんでもいい。
そして次の買い物のとき、それをひとつ、多めにカゴに入れる。
いつものお菓子、ひとつぶん。それだけで、あなたの備えは、"心を守る備え"に変わる。
次は、いよいよ「どう回す?」の話
さあ、今週も、水・食べもの・お湯・いつもの味と、いろいろ備えてきたね。
でも ―― ここで、最後に大事な問いが、残るんだ。
「そろえた。じゃあ、いざその日、それを"どう使う"?」
明日は、今週の総まとめ。そして、いよいよ ―― そろえた物を、3日間"どう回すか"、その話への入口を渡すね。
(週末には、朝・昼・晩の"一日の流れ"を、ぜんぶ地図にして渡すつもり。でも、急がなくていい。今日はまず、大切な人の"いつもの味"を、ひとつ思い出すことから)
今日も、ここまで読んでくれて、ありがとう。
備えは、モノをそろえることだけじゃなくて、大切な人を思うこと。
あなたが今日、誰かの好きなものを、ちょっと思い浮かべた ―― それだけで、もう、いちばん優しい備えが、始まってるよ。
また明日ね。
防災たろう
