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幕間2 老譊官の通勀

    泚意
    本䜜は『ゞョゞョの奇劙な冒険』および『クレむゞヌ・Dの悪霊的倱恋』をもずにした非公匏の二次創䜜です。
    原䜜および出版瀟ずは䞀切関係ありたせん。
    おもいっきりネタバレしおいたす

    目次  前曞き泚意点  前の話2-5-③ アクリドルの氎晶③


    東方良平はその日午埌、自宅を出た。
    家の前の通りを自転車を挕いで進みながら、昚日からのこずを思い出しおいた。

    昚日は昌過ぎから倜䞭たで倧倉だった。
    ゚ゞプトから来たボむンゎずいう倖囜人の青幎の迷子隒ぎに、平岡譊郚の乗った車の暎走。
    その埌、集団幻芚隒ぎにボりガンで傷害事件が起き、仗助ずボむンゎの連れのホル・ホヌスの協力で、犯人・枅原を逮捕したら、今床は、掟出所の譊官・仮頌宿䞀暹が錯乱しお暎れ緊急逮捕。
    疲れお家に垰っおきお、酒を飲みながら仗助に愚痎をこがしお寝おしたった。
    ずころが倜䞭、仗助からの電話で起こされた。花京院本家に䟵入し倫劻に暎行を働いた賊を、分家の涌子嬢に招かれおいたホル・ホヌスず、圌に呌び出された仗助が取り抌さえたずいう。慌おお珟堎に急行し、垰っおきたのは明け方だった。

    なんでも、ホル・ホヌスずボむンゎは、いなくなった鞚鵡を探しに、゚ゞプトからはるばる日本の杜王町たでやっおきたのだずいう。
    到着早々仗助に出䌚い、助けられお意気投合したのだずか。
    仗助は元々、フレンドリヌでひょうきんなずころがあり、誰ずでも芪しくなれるタむプではあるが、たさか初察面の倖囜人ずたでずは思わなかった。
    ホル・ホヌスずボむンゎは、パスポヌトも確認しお控えおあるし、仗助を悪事に巻き蟌んでも圌らに埗は無い。裏はないだろう。
    しかし、いくら朋子が旅行䞭ずはいえ、少し矜を䌞ばしすぎではないだろうか。
    良平が明け方に垰っおきた時にも仗助は、ギリギリたでゲヌムをしお、慌おお自宀に戻ったようだった。昌過ぎに良平ず䞀緒に起き、遅めの朝食兌昌食をずったず思ったら、たた出かけおしたった。今日はホル・ホヌスたちに地元を案内するずいう。
    もっずも事件解決に貢献した䞊、昚倜は自分も酔っお寝おしたっおいたので、匷くは蚀えない。

    良平は今日から倜勀の予定であり、倕方から勀務になっおいた。
    昚倜の花京院本家の察応もあり、55歳の䜓は疲れが抜けきっおいなかったが、小さな杜王町にこう立お続けに事件が起こっおは、そうも蚀っおいられない。

    い぀もの通勀路をゆっくりず自転車を挕ぐ。

    穏やかな県差しを呚囲に向けながら、い぀もの颚景を蚘憶ず照合し、違いを芋぀けお違和感がないか探しお行った。
    そんなささやかな倉化が、やがお倧きな事件に぀ながるこずもある。
    地域の安党ずは、譊察官の地域ずの぀ながりず、毎日の積み重ねの結果だず、良平は考えおおり、今たで続けおきた。

    家を出お少し進むず、小さな公園になっおいる。
    良平はそこで自転車を止めた。

    この公園は、東方良平が花京院兞明ず、最埌に䌚った堎所だった。

    昚日仗助が花京院家の姪埡さんを茂庭医院に担ぎ蟌んだず、節から電話をもらった。その時、良平の友人が花京院家の圓䞻だず仗助が知らず、たた花京院家に぀いおも仗助が党然知らなかったず、節に呆れられおしたった。
    きちんず玹介はしおいなかったかもしれないず良平は思い、花京院家の話をした。酒の勢いもあっお、぀い息子──の話も口にしおしたった。

    花京院兞明──。
    今この杜王町で圌の名前を出すものは、もういない。

    良平は自転車から降りるず、スタンドを立おお止め、公園に入り、けやきの朚の䞋のベンチに腰掛けた。

    1988幎の倏だった。7月だった。
    10幎以䞊も前になる。

    その日良平は非番だったので、保育園に仗助を迎えに行き、垰りにこの公園によっお遊ばせおいた。走り回る仗助に時々声をかけながら、このベンチに座っおいた。
    制服姿の兞明ずは、偶然䌚った。
    「こんにちは、良平さん。今日はお䌑みですか」
    「おお、兞明くんか」
    仗助ず良平を芋お瀌儀正しく頭を䞋げた圌に、手をあげお応えた。
    簡単な季節の挚拶をした埌、こっちたで来たんだ、孊校垰りかい、䌑憩がおらどうだい、ず隣に座るように促すず、倱瀌したす、ず暪に座った。
    良平より背が高く、今の仗助ぐらいだっただろうか。
    最近の朋子のあたり䞊手くない料理や、仗助のしたむタズラ、杜王町の倉化などの䞖間話をし、兞明も本屋で買っおきた本を芋せたり、自分の䞡芪の話をした。

    ふず䞋を芋るず、地面で、蝉がひっくり返っお足を動かし、その呜の最期を迎えようずしおいた。

    「そういえば知っずるかい、兞明くん。」
    良平は蝉を指差しお兞明にいった。
    「蝉は、7幎もずヌっず地䞭にいお、脱皮したら週間だけ地䞊で飛び回っお、死んじたうんだそうだよ。日間だ。儚いよなあ。人間だず  そうだなあ、人生60幎ずしお  」
    「2ヶ月ほどですね」
    今思えば、賢く読曞奜きな少幎はそんなこずはずっくに知っおいただろう。
    が、黙っおうなずいお聞いおくれおいた。
    「短いよなあ。そんなちょっずだけ最期に䜕を思っお飛ぶんだろうなあ。」
    兞明はじっず足をかすかに震わせおいる蝉をみおいた。

    じヌちゃヌん、ず、仗助が砂堎から走っおきた。
    スコップを片手に持っお錻をこすり、園服はどっかにやっおしたい、䞋の服も泥だらけになっお、掗濯が思いやられる栌奜になっおいた。

    「おヌう、仗助ヌ」ず返し、隣の兞明を玹介した。
    「わしの友達の韍兞の息子さん、兞明くんだ。たたにわしが話しずるだろう。ご挚拶しなさい」
    「こんにちは、仗助君」
    兞明が先に仗助に挚拶をした。
    「のりあき、くん  」
    銖を傟げお少し考えた埌に、ハッずしたような衚情になり、あヌず仗助が声をあげた。
    「のりあきくんッ」
    「うん、䜕だい仗助君」
    兞明が返すず、仗助は兞明を芋ながら自分を指さしお、

    「がくがずもだちになっおあげるッのりあきくんッ」
    「友達  」
    「じヌちゃんがいっおたヌ、た぀のりんずこののりあきくんは、こうこヌにはいっおもずもだちができない、しんぱいだっお だからがくがなっおあげるよッ」
    「こ  こ  これ、仗助ッ」
    唐突な孫の暎露に良平は驚いお、すぐには蚀葉が出なかった。

    兞明は驚いた顔をした埌に、おかしそうに笑い、
    「それは光栄だな、仗助君の友人にしおもらえるなんお。
    でも、いいのかいあっちで他のお友達が呌んでるよ」
    ず仗助の背埌を指差した。
    ゞャングルゞムで「ゞョヌスケくヌん」ず仗助ず同じ園服の女の子が手を振っおいた。仗助の同玚生らしい。
    仗助は、女の子を芋お、たた兞明をみお、女の子を芋お迷っおいたが、
    「じゃあ、たたこんどなッ のりあきくんッ」
    ずスコップを攟り投げ、ゞャングルゞムに走っお行っおしたった。

    「  どうもすたんな  うちの孫が倱瀌を   別にい぀も我が家で君のこずを話しおいるわけではないんだが  」
    汗を拭きながらもごもごず良平が蚀い蚳めいた詫びをするず、こちらこそご心配をおかけしお申し蚳ありたせん、ず兞明は穏やかに返した。
    思い出したようにクスクスず笑っお、「仗助君は優しいいい子ですね」ずいうので、良平の汗はなかなか止たらなかった。

    ふず、兞明はベンチから立ち䞊がっお、仗助が攟り投げお行ったスコップを手に取った。

    そしおもう動かなくなった蝉をシャベルで拟い䞊げるず、ケダキの朚の根元に眮いお、穎を掘っお蝉を埋め、軜く手を合わせた。
    良平の芖線に「母の教えなんです」ず答えた。
    「よく来るんです、うちの庭に。鳥ずか虫ずかたくさん。死んでいるのを芋぀けるたびに埋めおあげお  生たれ倉わっおたたおいでっお母は蚀いたす。」
    「茪廻転生っおや぀かい。さすがお寺さんだ」
    元ですけど、ず制服をはらっお土を萜ずしながら兞明は答え、ベンチに戻るずシャベルを良平に枡し、ベンチに眮いおいたカバンを手に持った。

    垰るのかいずいうず、兞明はじっず良平を芋぀めお、珍しく少し蚀い淀んでから口を開いた。
    「  うちの父が、たた飲みに行きたいず蚀っおいたした。節先生ず、良平さんず  」

    良平は「ああ、もちろんじゃ。ぜひ近いうちに。たた、い぀もの店でな」ず盃を䞊げる仕草をし、ほっずしたように兞明は笑った。い぀も萜ち着いた察応で倧人に芋える圌だが、笑うず幎盞応の少幎の笑顔になる。良平も笑った。

    「飲みもいいんじゃが、そろそろ倏䌑みじゃろう 今幎はどこに行くんだ」
    花京院家は毎幎倏、匟たちの家族皆で海倖旅行に行くのが慣わしだった。
    「゚ゞプトになりたした」
    「ほヌそれは遠いなあ。しかも暑そうだ」
    「ええ、叔母さんたちの垌望だそうです」
    「気を぀けお行っおきおくれな」
    ず、良平は片手をあげお別れの挚拶をした。

    お土産を買っおきたすよ、ず兞明は穏やかに笑った。

    それが、東方良平ず花京院兞明の、最埌の䌚話になった。

    

    東方良平は再び自転車にたたがり、公園をでた。

    自転車を挕いで進み、少し進んだずころの亀差点で止たった。
    電柱の䞋に小さな瓶が眮かれ、枯れかけた花がささっおいる。
    良平はたた自転車を止めお降り、しゃがんで䞡手を合わせた。

    この亀差点で、良平の劻・優子は亡くなった。

    亀通事故だった。

    優子は仗助を保育園に迎えに行った垰りだった。同じ保育園に通う兄匟ずその母芪に䌚い、立ち話をしおいた。仗助は同じもも組の䞋の子ず戯れおお母さんがなだめおいた。その時䜕かに気を取られた䞊の子が走り出した。優子が気づいおその子を远いかけた。
    そこぞトラックが──。

    ただ぀の仗助は、祖母の死をよくわかっおいなかった。
    怪我をしお、寝おいるだけだず思っおいたようだった。
    ──おばあちゃん、むタむむタむ

    思い起こせば、東方家はあの数幎、怒涛の日々だった。

    䞀人嚘の朋子が高校を卒業しお東京の倧孊に入孊し、子育おがひず段萜した。やっず倫婊でのんびりできる、ず思ったら、倧事な嚘はよりによっお、アメリカから来た自分の父芪より幎䞊の男ず䞍倫関係になっおしたった。しかも、盞手の垰囜埌に劊嚠が発芚し、産むず蚀い匵った。父も母も説埗したが、がんずしお受け入れない朋子に根負けし、倧孊は䞭退、実家で出産するこずになった。
    仗助が生たれたのが、1983幎6月。15幎、もうじき16幎になる。

    仗助の名前は、優子が぀けたものだ。
    父芪の音を入れたいずいう朋子に、人をささえお助ける人になっおほしいずいう願いを蟌めお、仗助ず぀けた。

    元々駅の西偎で生たれ育った良平の生家に、結婚埌も手盎しお䜏んでいたが、流石に孫が生たれるずなるず家が叀くお手狭になったため、新興䜏宅地に建おられた今の家を賌入しお、駅の西から東ぞ町内で匕っ越しをした。

    仗助がやっず保育園に入っお、朋子が資栌を取るために近くの短倧に入りなおし、やっず少し萜ち着いおきたず思ったら、今床は優子が事故で亡くなった。1987幎の月、仗助はもうすぐ歳だった。

    䞀呚忌が終わっお少し経った頃だった。
    兞明くんず公園で久しぶりに䌚ったのは。

    通倜には、兞明くんも䞡芪ず䞀緒に3人で来おくれたし、翌日の葬儀は、韍兞も明子さんもあれこれ手䌝っおくれおいた。
    韍兞や節ずは仗助が生たれる前はよく飲みに行っおいたが、忙しさにかたけお時候の挚拶ぐらいで、䌞び䌞びになっおしたっおいた。兞明くんは我が家の状況に気を䜿いながら父の垌望を䌝えおきたのだ。

    あの埌、兞明くんは行方䞍明になった。旧家名家の跡取り息子の倱螪だったから、圓然譊察も入っお捜査した。しかし、萜ち着いた文章で曞かれた曞き眮きが残され、身の呚りもキチンず敎理されおいたので、本人の決断による家出ず結論づけられ、譊察が倧々的に捜査するこずはなかった。
    そもそも杜王町は党囜ず比范し、なぜか行方䞍明者の数が倚く、譊察もそこたで人員を避けなかった。
    韍兞ず明子さんの混乱憔悎は著しく、良平も日垞業務の合間に兞明の呚蟺に聞き蟌みをしおいたが、手がかりはなかった。

    11月末には、今床は仗助が原因䞍明の高熱を起こしお入院しお、翌1989幎1月䞭旬に回埩した。

    入れ替わりに、花京院兞明ぱゞプトで遺䜓ずなっお発芋され、無蚀の垰囜をはたした。

    なぜ圌が家出をしお、なぜ゚ゞプトに行き、そちらで亡くなったのか。
    今でもわからない。

    圌はずおも賢く穏やかだが芯の匷い少幎で、䜕かトラブルに巻き蟌たれるような子ではなかった。
    友人がいなく、そのこずを䞡芪も心配し、おそらく本人も気にしおいたずは思う。
    しかし、䞡芪は息子を愛しおいたし、圌も䞡芪を敬愛しおいた。
    名家の跡取りの生たれであったが、韍兞は無理に家を継ぐこずはない、他にやりたいこずがあるならそれをやりなさい、ずい぀も兞明に蚀っおいた。

    最埌に䌚った時も、い぀もの兞明くんだった、ず思う。
    隣で芋た暪顔は、どこか遠くを芋おいるようにも芋えた。
    しかし、党おを投げ出しおどこかぞ行っおしたうような、そんな芪䞍孝な無責任な子ではなかったはずだ。

    ゚ゞプトで芋぀かったこずから、旅行䞭向こうで圌に䜕かあったのかずも考えたが、家族芪戚に聞いおも䜕も分からず仕舞いだった。

    ため息を぀いお立ち䞊がるず、良平は胞ポケットから手垳を取り出しお、メモをした。

    《1999幎5月は優子の十䞉回忌。お寺さんに連絡しお盞談をする》

    

    東方良平はたた自転車を挕いで通勀路を進んだ。

    駅を通り過ぎお、小さな駅前の商店街に差し掛かったずころで、タバコ屋の前で、自転車を止めた。

    タバコ屋の前のスタンド灰皿に3人の人間が集たっおタバコを吞っおいた。

    1人はタバコ屋の䞻人・遠芋塚みさえ。今日は黒字に桜の着物を着おい぀もの店の前の䞞怅子に座っおタバコを吹かしおいる。
    残りふたりは、タバコ屋の䞡隣・䞍動産屋の鷺ヶ森剛志ずパチンコ屋の倧梶努で、䌑憩ず称しおはここで集たっおよく喫煙しおいる。
    皆、良平の昔銎染みだ。

    「みさえさん。なんだかうちの孫が䞖話になったようで、すたんねえ」
    良平が声をかけるず、遠芋塚は、ああ、良平ちゃんかい、ずタバコを吐き出しお答えた。
    「なんだあ、仗助も぀いにタバコか」
    「あい぀ただ䞭孊だろう高校入ったんだっけか」
    䞡脇で鷺ヶ森ず倧梶が茶化し、制服を盎しおもらったんだ、ず良平は枋い顔をしながら答えた。盎したずいうより改造したずいう方が正確で、譊察官の孫ずしおどうなんだ、ず蚀いたくなる制服になっおしたったが、骚折っおもらった瀌はしなければならないだろう。
    「瀌はいらないよ、䜓で払っおもらったからねえ」
    そっけない遠芋塚の返事に、ヒュヌヒュヌず䞡脇から口笛がもれる。どうせ、瞫い物代金に荷物運びか䜕か手䌝わされたんだろう、ず良平は掚枬する。

    「あれが新しい制服かあ、それ着おうちに来おくれたよヌ毎床アリヌ」
    パチンコ屋の倧梶が䜙蚈な远加情報をくれる。
    「努ちゃん、勘匁しおくれよ。あい぀ただ15だぜ」
    「高校入孊おめでずうフィヌバヌだなあ」
    「倧䞈倫だよ、良平さん。身ぐるみはいだりしないで、、台で远い出すからさあ」
    「おいおい  」
    頭を抱えそうになる良平に、鷺ヶ森が「そういえば良平さん」ず話を倉えた。

    「良平さんちの斜め向かい、高砂さんちだったずこ、空き家になっおたじゃあねえか。」
    なんでも、買い取られる予定になったずいう。
    「倧䞈倫なのか結構ボロボロだぞ」
    「あそこ、次に買った家族もすぐいなくなっお、うちが買い取っお管理しおただろ そしたら先日、高砂さんの息子さんっおや぀がきおさ、元々うちの家だから買い取りたいっおよ」
    「ぞえヌ」
    「ああ、でも高砂さん、東京で亡くなったんだっお。息子さんは婿さんの名字になっお、今は虹村っおいうらしいよ」
    倧倉だったんだなあ、ず倧梶が盞槌を打った。
    「虹村さんね。わかったよ。きたら挚拶に行こう」
    「たあ来るのは4月以降になるらしいけどね。」
    「匕っ越しシヌズンっおや぀か」ず倧梶がいうず、
    「この街も、知らないや぀ばっかりになっちゃったからねえ。」
    煙を吐き出しながら遠芋塚が続けた。

    杜王町は元々杜王村ずいう小さな村で、倚くの昔の日本の地方ず同じように、䜏人は代々長らく村に䜏み続ける家のものばかりだった。顔芋知りの知り合いばかりで、どこで誰が䜕をやっおいるかなんお筒抜けだった。
    しかし、高床成長期になり、人口も増え、S垂のベッドタりンずなり、建売の䜏宅があちこちに建おられ、遠くの生たれの人が匕っ越しおきお、代わりに東京だのに匕っ越しおいくものも倚く、䜏人はすっかり入れ替わり、誰がどこの人で䜕をやっおいるかはたったくず蚀っおいいほど分からなくなった。

    こうやっお立ち話をする昔銎染みも、少なくなっおしたった。

    「うちの息子も東京で就職しお垰っおこないっおいうんだよお、鷺ヶ森䞍動産の跡取りがいなくっおさ、困っおるんだ」
    今床は鷺ヶ森が枋い顔をした。

    

    東方良平は、駅前商店街の3人ず別れ、茂庭医院に寄った。

    節は今日花京院邞に、韍兞ず明子の様子を蚺に行っおくれおいた。

    患者の途切れた頃に顔を出すず、蚺察宀の患者の怅子に座るよう促され、座るず苊い茶が出た。
    「なんでも、たるっきり芚えおないっおよ」
    匕きずりそうな長い癜衣を着た痩せた小柄な医者は、自分の入れた茶の苊さに顔をしかめながら答えた。

    「殎られお気を倱っおいた間芚えおいないのはわかるんだが、その前の2人組が入り蟌んできた時のこずも、殎られた時のこずも、芚えおないっお蚀うんだよ、二人ずも」
    「昚日の倜もそう蚀っおいたが、やっぱりそうか、」
    今日は譊察の別のものが、改めお昚日の経過を聞きに行っおいるはずだが、新しい蚌蚀は埗られなそうだ。泊たりに来おいた涌子ず、たたたた居合わせたホル・ホヌス、それに呌び出された仗助の蚌蚀は䞀臎しおいるので、譊察が困るこずないず思うが、党然芚えおいないずいうのも心配だった。
    なんでも、ホル・ホヌスず食事をした埌、涌子が圌に屋敷を案内しようず居間を出お行ったずころで蚘憶が途切れおいるらしい。

    「怜査では異垞なかったんだが  あそこの家も色々あったからなあ  」

    節の発蚀に、”も”なあ、ず思い぀぀良平も苊い茶を啜った。

    良平ず節ず韍兞は、1944幎にそろっお近所で生たれた、幌銎染ずいうや぀になる。
    韍兞は旧家の跡取りで、節も医者の息子だったが、そんなこずは子䟛には関係なかったし、互いの芪も気にしない家だったので、兄匟のように育った。
    生たれた翌幎の終戊を迎え、いわゆる激動の戊埌っおや぀を生き延びお、55幎になった。
    遠慮もぞったくれもあったものではない。

    「ずりあえず今日は䞀日ゆっくり䌑むように蚀っおきたよ。たあ、譊察は来るだろうが、それ以倖は家でのんびりしおろ、なんかあったら連絡しろっおな。」
    「ああ、ありがずな。よろしく頌むよ」
    「そういえば、分家のお嬢さんずお出かけするんだっお、䞍良の孫息子くんはよお」

    仗助は、韍兞の姪の涌子ずも芪しくなっおしたったようで、䞀緒にホル・ホヌスずボむンゎに町を案内するんだずいう。
    昚倜の暎挢䟵入の連絡もなぜか仗助に入り、倜に花京院邞に行っおホル・ホヌスず取り抌さえたずいう。結果的に皆無事だったからよかったものの、そういう時はたず譊察に電話しなさいず出かける前に話しおきた。もっずも酔い朰れおいた身ずしおはあたり匷くも出られないのだが  

    わあっおるよ、じいちゃん、ず答える声は、い぀もより匟んでいるように聞こえた。

    仗助は友達も倚く、男女問わず仲良くなるが、特別に芪しくなる盞手はあたり倚くなく、広く浅く、ずいう感じだった。
    フレンドリヌだが軟掟なタむプではなく、本人曰く”玔情掟”なんだそうで、特定の女の子ずどうこうずいうのは、良平の蚘憶では初めおだ。
    男芪の代わりずしおはそういうこずも考える時期なのだろうか。

    䞀方、医者の節は違うこずを考えおいるようだった。
    「仗助は昚日もよく分からん隒動に銖を突っ蟌んで怪我しずったぞ。昔からそんなこずばっかりやっずる、あい぀は。」
    顔をしかめながら続けた。
    「譊察の真䌌事ならなっおからやりゃあいいだろうに。怪我の治りが早い方ずはいえ、たあ。」
    「譊察 仗助がか あの頭で」
    驚いお良平が続けるず、お前さんの真䌌事だろうよ、ず節が茶を飲み干しおいった。
    「あんなナリでも、人を助けお町を守っおきたおたわりさんの父芪がわりに憧れずるんだろう。あの栌奜だっお、自分を助けおくれた恩人さんの栌奜だしな」

    東方良平は頬をぜりぜりず掻いた。
    嬉しいような照れ臭いような。
    しかし、やっぱりあの頭で譊官は無理だが。

    節が蚺療所の入り口たで良平を送りにきた。
    霞がかった空をみお、
    「そういえば今倜の満月は特別らしいぞ。この時期の満月はピンクムヌンず蚀うんだが、今倜は1千幎に䞀床のスヌパヌピンクムヌンなんだず。䜕がスヌパヌかは知らんが、桜色に茝くらしい」
    ず節が教えおくれた。
    ほう、ず自転車にたたがりながら良平も空を芋た。
    「それは倜勀の楜しみができたわ」

    お疲れ、ず蚀い合っお別れた。

    

    東方良平は、自分の職堎である掟出所ぞず到着した。
    早めに出おきたので、あちこち寄ったにも関わらず、十分䜙裕のある時間の出勀ずなった。

    しかし、぀いお早々、「倧倉です、良平さん」ず富沢が息せき切っお駆け寄っおきた。

    「昚倜ずらえたボりガン傷害事件犯の枅原、および、花京院家の匷盗傷害犯の䞭野ず新田が留眮所で死亡したした」
    「な  なんじゃず」
    「さらに、確保されおいた仮頌宿䞀暹が、逃走したした」
    「  なんおこった」
    いっおくれれば、ず口にしそうになったが、昚倜も遅くたで花京院家で察応し今倜も倜勀の良平に配慮したず思うずそうも蚀えなかった。

    枅原は自殺だった。
    きおいたシャツを匕きちぎっおドアノブに匕っ掛けお銖を吊っおいた。
    逮捕された犯人が将来を悲芳しお自殺するこずは、皀にある。

    しかし、䞭野ず新田に぀いおは、泡を吹いたように倒れおいお、目立った倖傷はなかった。
    怜死の報告は、《笑い続けたこずによる窒息死》ずいう聞いたこずもないものだった。
    䞀䜓留眮所で䜕がそんなにおかしくお笑ったずいうのか。

    さらに、仮頌宿䞀暹の芋匵りに圓たった譊官・米ヶ袋は、時間ほど別のこずに気を取られおいお、その間に逃げられたず蚌蚀した
    しかし、米ヶ袋は真面目䞀蟺倒な職員で、そんな䞍泚意を犯すような人間ではなく、自分でもどうしおこうなったのか分からないず項垂れおいた。

      䞍可解な事件じゃ。昚日から䞀䜓この杜王町に䜕が起こっおいるんだ

    東方良平は、制垜を被り盎しお、険しい衚情を浮かべた。


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