Course1 目玉焼き
第三皿 沙智
1. 食堂のキッチンで、三日後の予告
沙智がフライパンを温め始める。
日奈子が首を傾げた。
「今日は目玉焼きですか?」
沙智は真顔で頷いた。
「そう。でも、その前に一つだけ。」
「父がね、昔こう言ったの。」
『肉を焼くときは、やっぱりアレだな! マリーゴールドを加えて焼くとうまいな!』
日奈子は一瞬考えてから、小さく笑った。
「……お花ですよね?」
「そう。」
沙智は肩をすくめる。
「本人は最後まで気付いてなくて。あとで母に『ローズマリーでしょ』って訂正されてた。」
日奈子は吹き出した。
「惜しいようで、全然惜しくないですね。」
「でも、父らしいなって思う。自信満々に間違えるところまで含めて。」
沙智は笑った。
瓶を一本取り出し、黒粒胡椒を入れる。
「料理も恋愛も投資も、思い込みって意外と多いんですよね。だから私は、まず確かめる。今日は目玉焼きのシロップを作ります。」
「えっ?」
「完成するのは三日後だから、また来てください。」
「……料理番組史上、一番気の長い予告ですね。」
「ちゃんと事前準備してあります。」
2. 黒胡椒メイプルの大人な目玉焼き
🍳 材料(1人分)
* 卵:1個
* パンチェッタ:4枚(ベーコンでも可)
* パン:1/2枚
* オリーブオイル:適量
* 黒粒胡椒:5〜10粒
* メイプルシロップ:30ml
🍴 作り方
① シロップを仕込む
数日前にメイプルシロップへ黒粒胡椒を漬け込み、香りを移す。
② パンとパンチェッタを焼く
パンを香ばしく焼き、パンチェッタを好みの焼き加減まで加熱する。
③ 卵を二段階で焼く
卵は白身と黄身を分ける。白身を先に七割ほど焼き、中央へ黄身を静かに戻す。火加減を調整しながら好みの半熟に仕上げる。
④ 仕上げ
黒胡椒香るメイプルシロップをかけて完成。
💡 ワンポイント
* カリッと焼いた白身と、とろりとした黄身のコントラストが決め手。
* 甘いメイプルシロップに黒粒胡椒の刺激が加わることで、朝食なのにどこか大人の味になります。
3. 日奈子の食レポ
「……えっ?」
最初にメイプルシロップの優しい甘さが広がる。
その直後、黒粒胡椒がふわりと香り、最後にパンチェッタの塩気が全体を引き締めた。
「甘いだけじゃない。」
黄身をパンにつけると、まるでブランチカフェで出てくる一皿のような味わいになる。
「目玉焼きって、こんなに奥が深いんですね。」
沙智は少し照れたように笑う。
「朝は少し驚きがあったほうが、目が覚めるから。」
日奈子も笑った。
「私、朝目覚めるだけじゃなくて、頭の中まで覚醒する方法を知ってるんです。」
「何?」
「目覚めのコーヒーをこぼすと、飲むより目が覚めます。」
一瞬静まり返ったあと、キッチンに笑い声が広がった。
「……それは確かに、一発で覚醒しますね。」
4. 日奈子のペアリング
☕️ おすすめの一杯:カフェラテ
ミルクのまろやかさが黒粒胡椒の刺激を包み込み、メイプルシロップの甘さとも自然につながります。
☀️ 休日なら
* メープルラテ
* アイスコーヒー
ゆっくり起きた朝に食べたくなる、ちょっと贅沢な目玉焼きですね。
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