
「労働は作品たりえるか?─西成ジャージ曼荼羅とBaronessの働き方実験」【中間報告書】
★前回までの詳細:初回企画書参照
Ⅰ.はじめに
✅ この研究の意味
労働は義務か、表現か?
「働くこと」を“生産”ではなく“創作”と見立てたとき、世界はどう変わるのか。
本研究は、街を歩き、人と出会い、そこで交わされた言葉を記録しながら、その答えを探す試みです。
Ⅱ. 方法
観察は次の条件で行った。
期間:2024年9月~2025年9月
場所:大阪市西区・西成区・ミナミエリア・兵庫県加西市
方法:現地を歩き、店に入り、会話を交わしながら記録。
方針:実名・店名は伏せる/対象者は番号で示す
その心は:単に朝から晩まで飲み歩きたい。
Ⅲ. 観察記録
以下に、出会った人びとを時系列で記す。
それぞれの場面で、私のメモも併せて残した。
2024.9.1 スーパーT(K店)
【対象者①】警備員のおっちゃん
・状況:数日後閉店の張り紙についてあまりにびっくりして警備員のおっちゃんに「びっくりやわ!」と思わず話しかける
・印象的な言葉:「まぁ、ひと月くらい改装工事はいるわな。」(K店が閉店し他店になることについて)
・Baronessメモ:そのおっちゃんの目はスーパーTと自身の未来を憂えていなかった。跡地は現在スーパーHとなっている。
2025.7.3 下町のビオトープ
【対象者②】管理者・Iさん
・状況:私が移植した緑の様子見がてらの散歩中、ビオトープで植物の手入れ
・印象的な言葉:「与那国いってきたんかいなぁ?(私のヨナグニサンTシャツを見つけて)」「ヨナグニサンってわかるんですか?」「当たり前やぁ、アゲハも卵から育てて、皆に見てもろてる。」
・Baronessメモ:石と蝶と緑化活動で20年この川沿いを見守る男。盆栽並み鉢植えから始まり、地元の有志の協力で果樹園へ広がったと語る。もともとは、花が咲いたような自然石を愛するダンディ。

2025.7.6 午後1時 西成居酒屋N
【対象者③】ジャージで光る俺を見てくれ・A氏(臙脂ジャージ)
・状況:前週に名前刺繍入りジャージ姿で現れる
・印象的な言葉:「その服装のまま、あの地域を歩きたい。…それは享楽的な行動かもしれません。成人が日常で着ないジャージで、課題のある街を徘徊、店舗を利用することによる周囲へ及ぼすその影響と波及効果について。要は、一緒にジャージを着て労働者の街を徘徊してもらいたい。」
・Baronessメモ(青ジャージ):グラス二杯目からは互いに手酌で。作品か享楽か、その境界を歩く徘徊者。一大西成曼荼羅の形成なるか。
午後3時 Hちゃんの店
【対象者④】63歳のあんちゃんサーファー
・状況:1600円の会計を告げられ、そんなのないから知らないと拒否。
・印象的な言葉:「体臭いと思われたら自×する」
・Baronessメモ:中近東風スカルスカーフにかりゆし、白い帽子。粋でイナセ。
午後5時 ホルモン屋の路上
【対象者⑤】不明(酔客)
・状況:店先で立ち話
・印象的な言葉:「おねーちゃんこの辺部屋あんの?」
・Baronessメモ:店主がすかさず、「飲食店に不動産情報聞いてどないすんねんな」と切り返す。
午後6時 カラオケ居酒屋
【対象者⑥】東大阪のアルファード乗り
・状況:酒を飲みながら昔話
・印象的な言葉:「俺らの中学校の卒業式に機動隊来たで」
・Baronessメモ:その後、私は圭子の夢は夜ひらくから六本木心中まで絶唱。
午後10時 アートバー
【対象者⑦】妙齢男性2人
・状況:自身のオーダーしたカクテル名に食いついた妙齢男性二人と同タイトル映画シリーズトーク。
・印象的な言葉:「西成の暴動はパーッと明るいねん。」
・Baronessメモ:ゴッドファーザーを痛飲。

深夜 ミナミのバー
【対象者⑧】桃ジャージ候補・31歳バーテン
・状況:カウンターで仕事の話
・印象的な言葉:「介護士を普段はやっています。本当は保育士なりたかったけどピアノが弾けなくて断念、やっぱりやりたい仕事したくてここに。」
・Baronessメモ:やりたい仕事を探し続ける声。介護と酒場、その間で生きる。…そして私はその酒場片隅で朝まで爆睡。
2025.7.24 とある福祉事業所
【対象者⑨】職員
・状況:いつものやりとり
・印象的な言葉:「歌うしかないんだよ、みんな自分の歌を」
・Baronessメモ:「私はみんなと自身の歌を記録して伝えていきたいです。」
2025.8.某日 自宅部屋
【対象者⑩】あるイラストレーター
・状況:いつものグダグダ長電話
・印象的な言葉:「どちらも違うね、業。(絵描きのお仕事は労働ですか?作品ですか?との私の問に)」
・Baronessメモ:生業とは?
2025.8.31 兵庫県加西市
【対象者⑪】路上写真家Cさん
・状況:鶉野飛行場跡施設に行った私へ、父上が紫電改の整備士であったことを語る
・印象的な言葉:「父は零戦と紫電改を比べて、性能の違いをよく話してくれました。戦争末期、鳴尾基地に48機の紫電改が集められ、源田実がパイロットや整備士に檄を飛ばしたそうです。」
・Baronessメモ:整備士たちの誇りは、飛行機を飛ばすための技術にあった。その営みは、作品と呼べるのだろうか。

2025.9.1 朝 自宅浴室前
【対象者⑫】あるバーのマスター
・状況:あるバーの元常連よりマスターの訃報
・印象的な言葉(マスター):「俺、あんたらの息子で良かったよ。(実家に里帰りした際ご両親に言ったとマスター談)」
・Baronessメモ:大金を積まずとも親孝行はできる。他常に労働について問題提議し、そのバーは逃げてきた私の雨宿りの場所だった。マスターの仕事は接客そのものを“作品”にしていたのだと思う。
また雨宿りさせてよ、Tさん。
Ⅳ. 現時点の気づき
・労働を作品とするには、美化ではなく記録と編集の視点が要る
・「やらされた仕事」ではなく、物語を発見する態度が価値を変える
・人の営みは、形を残さなくても、記憶と痕跡で誰かに影響を与え続ける
・労働は、完成品ではなくプロセスにこそ創造性が宿る
Ⅴ. 今後の計画・他登場人物(あくまで予定)
中間報告をもとに考察を深める
年末に最終報告書を提出
「メガネの奥には未来への光」O氏
「生きた証を残したい」父Baron・T
他etc…
Ⅵ. 課題・問いの深化
「作品の条件」って何か?労働と「生業、業(なりわい)」はどう違う?
「労働」を作品と呼ぶための臨界点はどこか?
先だってアップした初期計画書からの大幅な脱線、迷走はどうかご容赦ください。(飲んでるだけじゃん!)
最終報告?…たぶん、さらに漂流しています。
(※本記事は連作です。続きはこちら↓)
※本記事は、ランサーズ「新しい働き方LAB」の研究員制度に参加し、私Baronessが行う半年間の働き方実験に基づくものです。