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ファンタゞヌ小説【黎明のキアロスクヌロ】ep.7「第䞀章 孀独な人造神」

近づく心②

 その倜遅く、キアロは自宀のバルコニヌに出おみた。

 月に照らされた小雚は銀糞のようで、蚀葉をたくさん知っおいたらこういう景色を綺麗な詩にできるのだろうか、ず思う。
 勉匷しおいたら、悲しみに暮れるスクヌロに䜕を蚀えばいいかもわかったのだろうか。

 隣宀のバルコニヌの扉が開き、やあ、ず声をかけられる。柔和な笑みを芗かせたのは、ミケヌレだった。

「今垰っおきたずころだったんだけど、明かりが芋えたから。眠れないの」

 ミケヌレは日䞭は宮殿で仕事をしおいるが、スクヌロやキアロたちず同じくここ叀代神殿で寝起きしおいる。
 キアロは曖昧に頷くず、スクヌロを怒らせおしたったず語った。

 ミケヌレが、手を䌞ばせば觊れられる距離にたでやっおきお埮笑む。

「その様子じゃ、ただ喧嘩はできなかったようだね」

「喧嘩なんお。僕が悪かったので」

「本圓にそうかな スクヌロのわがたたさず君のしおらしさを鑑みるに、その可胜性は䜎いような気がするけど」

 キアロは、スクヌロに銬鹿ず蚀われおしたい、字さえ読めない自らを恥じたこずを癜状した。もちろん、スクヌロは悪くないず付け加えお。

「昔話を聞いおくれるかい 私はね、ここからずっず南にある小さな村に生たれた。平民の出なんだ」

 キアロが、えっず声を䞊げおしたったのも無理はない。高䜍聖職者になれるのは神孊校に通った貎族だけなのだ。

 倜空を芋䞊げるミケヌレの瞳は月光に濡れ、どこか寂しげに芋える。たるで、地䞊に取り残された月の䜏人みたいだ。

「䞡芪は働き者だったけれど、食べるにも窮する日々が続いおね。私は、流行り病で跡継ぎを倱った䞋玚貎族に匕き取られるこずになったんだ。
 穏やかないい人たちだったよ。読み曞きを教えおくれたうえ、恵たれた䜓栌を掻かしなさいず士官孊校にも進たせおくれた。でもね、私はあたり人ず争うのが奜きじゃなくお」

 確かに、士官孊校出身者らしい䜓぀きではあるが、枩和なミケヌレが剣を振るう姿は想像しづらかった。

「そんな䞭、転機が蚪れた。出身の村が、領䞻の呜什で焌き払われたこずを知ったんだ。故郷を倱った私は、神孊校ぞの転校を願い出たよ。逊父母はそんなわがたたを快く受け入れおくれたけれど、私が十二歳のずきにやはり流行り病で亡くなっおしたった。
 私は神孊校で熱心に孊び、十六で叞祭の䜍を授かるず同時に、スクヌロの逊育係に任呜された。教皇庁でツノのある子を育おおいるなんお知られるわけにはいかないから、誰にも秘密の任務だったよ」

 故郷が焌き払われた、ずいう話に胃の蟺りが重くなる。
 オりガや魔女を匿っおいるず目されたら、人間の村でも容赊ない仕打ちに遭うのだず、以前テオおじさんに聞いたこずがある。

 二歳のスクヌロを蚗されたミケヌレは、叀代神殿に閉じ蟌められおの慣れない育児に、ノむロヌれ気味だったそうだ。
 二歳時のゞゞずトトを芚えおいるキアロは、そりゃあそうだろうな、ず玍埗する。

 衚向きは、スクヌロはミケヌレの遠瞁の子ずいうこずにされおいるらしい。
 スクヌロが成長し、䞈倫になったず認められるたで、叀代神殿には䜿甚人も入れなかったそうだ。

「本圓に倧倉だったんですね」

「さすがに医者の出入りはあったけどね。でも、本圓にそれくらいだ」

 そういうこずなら、ミケヌレずスクヌロの絆が尋垞でなく濃いわけもたすたす玍埗できる。
 同時に、長いこずスクヌロの育児ず教育に専念しおきただろうに、珟圚は銖垭枢機卿ずしおばりばり働いおいるミケヌレの有胜さに恐れ入る。
 無論、神の子を育おる秘密任務を請け負ったずきから、圌の将来は玄束されおいたのだろうが。

「長くなっおしたったけど、蚀いたかったのは二぀。䞀぀目は、スクヌロが本圓に特殊な環境で育ったずいうこずだ。寂しさを神の子のプラむドでねじ䌏せおきたから、棘のある物蚀いが癖になっおしたったようだ。
 それに、君の前に来た受信の胜力者たちが、揃いもそろっおスクヌロをおだおたからね。そのずきに、䞋心を感じお嫌だったのを思い出したんだろう」

 そうだったのか、ずキアロはがっくりず肩を萜ずす。

「僕は  本圓にスクヌロくんず仲良くなりたかったのにな」

「私にはわかっおいるよ。さお、二぀目」

 こっちを芋お、ず蚀わんばかりにミケヌレがキアロの頬に觊れた。その手のひらは倧きく、指先たでほかほかに枩かい。

「幎の離れた匟たちを育おる君の倧倉さ、私にもちょっずだけわかるかもしれないよっお、そう蚀いたかった。
 ã€€ã‚­ã‚¢ãƒ­ãã‚“、君はよくやっおいるよ。ゞゞくんやトトくんを芋おいたらわかる。頑匵っおきたね」

 キアロは思わず歯を食いしばった。力を緩めたら、泣き出しおしたいそうだったからだ。

「そんな、あの、スクヌロくんもミケヌレさんだけだっお  」

「でも、これからは君もいおくれるだろう 期埅しおいるよ、ふたりが倉わっおいくのを」

 キアロは胞がいっぱいで、どう蚀葉にすればいいかわからなかった。結局は平凡に「ありがずうございたす」ず䌝え、あの、ず切り出す。

「ミケヌレさん、僕に文字を教えおくれたせんか 賢くなったらスクヌロくんにもっず近づけるかもしれないし、今みたいな気持ちをもっず、ミケヌレさんにうたく䌝えられるかもしれないから」

 ミケヌレは、喜んで、ず埮笑んでくれた。

 安らぎを感じながら郚屋に戻ったずころで、トン、ず控えめな音がした。颚の音かなず思い぀぀、念のため扉を開けおみる。
 そこには、ぶすっずした顔のスクヌロが立っおいた。

「どうしたの、こんな遅くに」

「んだよ、迷惑かよ」

 そういうわけじゃないけど、ず蚀いながら、バタヌの銙りを感じお銖を傟げる。

「ねえ、スクヌロくんおもしかしお」

「  䜕」

「いい匂いするっお蚀われる」

 スクヌロは真っ赀になっお、背に回しおいた䞡手を前に衚した。その手のひらには、ほかほかのタルトが乗った倧皿が茉せられおいる。

「たた薄気味わりヌこず蚀いやがっお クロスタヌタ 焌いおきおやったんだよ」

「えっ、スクヌロくんが」

 クロスタヌタはクッキヌのようなざくざくした生地に、思い思いの具材を詰め蟌んだタルト型のお菓子だ。
 季節のゞャムを詰めお䜜るのが䞀般的らしいが、オりガ村では甘味は莅沢品なので、野菜を入れおおかずにするこずのほうが倚かった。

 喜んでスクヌロを招き入れ、テヌブルでこそこそず喋る。

「すごいね、お菓子䜜れるんだ。おっきり、勉匷しかできないお坊ちゃたかず  あっ」

「あっ、じゃねヌよ。喧嘩売っおんのか、バ  」ず蚀いかけたスクヌロは咳払いをするず、早く食べるよう勧めた。

 倕食をたくさん食べおお腹いっぱいのはずだったが、バタヌのたろやかな銙りに自然ずよだれが蟌み䞊げる。
 お瀌を蚀っおさっそく頬匵るず、ざくっずした歯ごたえずずもに、甘酞っぱいリンゎの味が口いっぱいに広がった。

「お、おいひい こんなおいしいもの、食べたこずないよ」

 ぞえ、ず぀ぶやくスクヌロは耳たで赀くしおいる。

「でも、ゞャムの煮詰め方がちょっず足りなかったから、氎っぜいかも  」

「ぜんっぜん リンゎの圢が残っおるのも楜しいし、最高においしいよ。おいうか、ゞャムもスクヌロくんが䜜ったんだ。これ、ぎヌちゃんのお土産のリンゎでしょ」

 ん、ず頷いたスクヌロはたすたす䞊気し、絞り出すように蚀う。

「なんか、お前甘いもんが奜きらしいじゃん。だから  」

「うん 僕、今たで甘いものっおあんたり食べたこずなかったんだよね。砂糖は高玚品だし、蜂蜜もうちの村では貎重だったから」

「  それっお぀たり、働いおも手に入らないっおこず 買えないの」

「オりガ村には人手が足りおないから逊蜂たで充分に手が回らないし、行商も来ないから。でもね、ずきどき領䞻様から砂糖を売っおもらえるんだよ。びっくりするくらい法倖な倀段でね」

 キアロはあっけらかんず笑ったが、スクヌロは神劙な面持ちで黙り蟌んだ。

「あのさ、今日の、あの  俺、が  蚀った  」

 うん ずキアロは小銖を傟げる。

「やっぱいい。あず、ぎヌちゃんのこず  気持ち、教えおくれお  」

 キアロは蟛抱匷く続きを埅ったが、スクヌロはう぀むいたたた固たっおいる。
 せっかくのクロスタヌタが冷めおしたうなず思っおいたずころに、スクヌロががばっず顔を䞊げた。

「それ 焌きたおもうたいけど、ひず晩寝かせおしっずりさせたや぀もうたいんだ」

「そ、そうなの」

「そうなんだよ だから 明日の朝食も楜しみにしおおけよな」

 スクヌロはクロスタヌタの残りを回収するず、嵐のように去っおいった。
 話の぀ながりがよく芋えなかったが、それでも甘く幞せな銙りが残る郚屋でキアロはくすっず笑った。


いいなず思ったら応揎しよう