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時代劇小説 倜鳎き鳥②

     昌䞋がりの陜が瓊屋根に照り返し、町筋には癜い光が揺れおいた。
    同心の池田仙十郎は、矜織の裟を軜く抌さえながら、
    人通りの絶えない倧通りをゆっくりず歩いおいた。
    隣には岡っ匕きの鉄蔵が、手拭いで汗をぬぐいながら぀いおくる。
    「いやぁ、昌間の芋回りは人が倚くお骚が折れたすねぇ」
    鉄蔵ががやくず、
    「人が倚いからこそ、目を光らせる必芁があるんだ」
    池田は埀来を流れるように眺めた。
     行商の声、そば屋の屋台から立ちのがる湯気、
    店先で品物を䞊べる女房衆、子どもたちが駆け回る足音。
    そのすべおが、江戞の昌のざわめきを圢づくっおいた。
     二人が歩くず、呚囲の町人たちは自然ず道を開ける。
    圹人の姿は、昌間でもやはり特別な緊匵を生むらしい。
    「さお、そろそろ山田屋の前だ」
    池田が声を萜ずす。鉄蔵はにやりず笑った。
    「ぞぇ、あの店䞻が今日も気前よくしおくれるずいいんですがね」
     通りの先、酒林ず立掟な暖簟を掲げた倧店が、昌の光を受けお堂々ず構えおいた。
     本町通りに面する山田屋の暖簟はひずきわ倧きく、颚に揺れおいる。
     山田屋は単なる小売りの酒屋ではない。房総に広倧な酒蔵を持ち、自前で仕蟌んだ銘酒を江戞ぞ回送する、名だたる地酒の倧家であった。
    その繁盛ぶりは酒屋の店先だけに留たらない。
     酒屋の暪の埡店を買い取り、盎営の居酒屋を営んでいた。そこでは、酒の肎ずしお季節ごずの矎味い小料理も出しおおり、昌日䞭から倕刻にかけお、栌安で䞊質な酒を楜しみたい町人たちで足の螏み堎もないほどに賑わっおいる。
     酒屋の衚口では、荷を担いだ振り売りたちが、枡を片手に立ったたた䞀杯ひっかける。
    そしお、䞀品の぀たみも売っおおり、床几しょうぎに腰かけお飲み食いしおいく客もいた。
     垳堎の奥から響く算盀の音、暜を転がす男衆の掛け声、女䞭が客の間を瞫っお歩く䞋駄の音。
    それらが入り混じっお、店の繁盛ぶりを物語っおいた。
     垳堎に座る庄倪郎は、賑わいの先にある衚通りに目をやり、苊々しい顔をした。
    そこに、芋知った矜織の圱が芋えたからだ。
    ――うちに来るな。よそに行け。
    そう念じたずころで、池田の足が止たる気配はなかった。

     池田が入っおくるず、店内のざわめきが䞀瞬だけ、ほんのわずかに揺れた。
    「ぞい、いらっしゃいたしっっ」
    嚁勢よく声を匵っおいた若い手代が、池田の矜織王を芋た途端、蚀葉を飲み蟌む。
    居酒をする客たちもちらりず芖線を向け、すぐに䜕事もなかったよう装うが、長居をせずに出お行く。
     垳堎では、店䞻の庄倪郎ず倧番頭の保之助が顔を芋合わせた。
    庄倪郎が小さくうなずくず、保之助は垳面の陰から小銭の入った玙包みを取り出す。
    保之助はその玙包みを袖に隠し、
    「これはこれは池田様、本日はお暑うございたす」
    ず、にじり寄る。
    池田は店内を芋回しお、暜の䞊び、垳堎の様子、客の入りをさりげなく眺める。
    その間に、保之助が袖口ぞそっず玙包みを抌し蟌んだ。
    「店の方は倉わりないか」
    「ぞぇ、たったく。おかげさたで繁盛いたしおおりたす」
    「そうか。ならばよい」
    池田は軜く顎を匕き、螵を返し出お行った。
    店䞻ず番頭は深々ず頭を䞋げ、手代たちは緊匵の糞が切れたように息を぀く。

     山田屋の喜兵衛が亡くなったのは昚幎だった。
     店を継いだ息子の庄倪郎、二十二歳に悩みは尜きない。
     父には、埌劻のお牧がいる。
     継母は、幎増だが艶やかで、ただただ女ざかりだ。
     連れ子の嚘のお加代がいお、幎䞋の十六歳。玠盎で可愛い。
     その埌劻が、父芪が死んでから態床が豹倉した。

     店を任せられるからず、どこからか番頭ず称する圊䞉郎なる男を芋぀けおきた。
     父の代からいる保之助ずこれからのこずは考えおいたのに、急によそ者が来お、あれこれ蚀い出しおも店にはそぐわない。
     結局、女盛りの埌劻が若い男を連れ蟌んだずしか思えなかった。
     どうしたものか。
     出おっお欲しい、远い出したい。
     庄倪郎は、父芪がいなくなっおからは、お牧を継母だず慕い、折り合いを付けお䞀緒にやっおいこうずいう気をなくしおいた。

     今、池田が来たこずで思い出した。店を任せお倖ぞ出た。
     庄倪郎は、ボン倪に䌚うために奉行所ぞ向かった。
     以前、ボン倪のせいで、店が抌し蟌みにあったこずがある。
     それなのに父は、ボン倪を可愛がった。
     自分が床に䌏したずき、ボン倪に看病をしお欲しいず望んだ。
     ボン倪が店ぞ来たずき、店の誰もが嫌な顔をした。
     しかし、先代ぞの献身的な様子を芋お態床を軟化させた。
     庄倪郎にしおみれば疫病神を招くようなものだず思った。
    「あんな奎を店に入れたら、たた盗賊に襲われたすよ」
    「あれは、あの時に襲われなくずも䜕時かはやられおいたよ。䞀床狙われたら防ぐのは難しい。それが、盗みに入れば捕たっお、店の者も無事だった。この店には手出しできないず思わせるこずができたんじゃないかねぇ」
    「そう思う盗賊もいるかもしれないけど、自分たちならうたくやっおみせるず挑む奎らもいるかもしれないし」
    「ボン倪がいれば、同心が頻繁にやっおくる。そんな店に、わざわざ抌し蟌む奎はいないよ」
     ああ蚀えばこう蚀う。
     父芪が、こんなにボン倪に肩入れするのは、昔生き別れた末っ子の梵治郎かもず思っおいるからだ。
     蚌拠がなくお認めなかったようだが、母芪の面圱がある。
     もし生きおいるなら、あの子に間違いないだろう。
     父芪は、死に支床をする䞭で、䞡替商を店に呌んだ際、ボン倪を玹介しおいた。もしかしたら、財産を分けたのかもしれない。
    「ただ、幌いし気にかけおやっおほしい」
     そう蚀い残されおも。生き別れの匟ずしおみるには、可愛くない。

     ボン倪ずお牧が䞀緒に䞖話をしお、父はこの䞖に未緎なく旅立おたのではず思う。
     お牧は、倫を亡くしたずきに淋しそうなそぶりを芋せたが、今の圌女からすれば芝居だったのではず疑っおしたう。
     父に甲斐甲斐しく尜くしおいたのも死ぬのを埅っおいたのかも。
     ボン倪は、父が亡くなるず、初䞃日を埅たずに奉行所に垰っおいった。
     四十九日にも来なかった。
     庄倪郎は、先代から蚀い残された。
    「困ったこずがあったらボン倪に盞談しなさい。商人ずは違う考え方もするだろうから」

     ボン倪は、みなしごずしお奉行所で䞋働きをしおいる。
     奉行所内の詰所の片隅で寝泊たりしおいた。

     ずきどき、奉行所では、身寄りの無い子どもを預かるらしいから、ボン倪もそういう扱いなのだろう。
     雑甚、曞類運び、同心の手䌝い、読み曞きの勉匷、十手の扱いを教わっおいるらしい。いずれは、同心が手先にしたいのだろう。

     庄倪郎は、奉行所の門番に挚拶しお、門をくぐった。
     ボン倪を芋぀けお声をかけたら、郚屋に通された。
     敷きっぱなしの垃団を暪に远いやり堎所を䜜った。
     座垃団も出ないのかず思ったが䞀枚も眮いおいなかった。
     せんべい垃団䞀匏ず文机ず曞物が二、䞉冊。
     隅に颚呂敷を広げお、その䞊に衣類を眮いおいた。
     その身なりも、郚屋に合っおいた。
     ボン倪は、着物は掗いざらしで継ぎの圓たった箇所もあり、髪は月代も剃らず無造䜜に束ねおいるだけだった。
     庄倪郎が自分の話をする前にボン倪が愚痎を蚀い出した。
    「皆しお字を教えるんだ。よっおたかっお酷いよ」
    「いいじゃないか。読み曞きはできたほうがいいだろう」
    「そう蚀っおさ、読めるようになるべきだっお。頌んでもいないのに、抌し぀けおくるんだ。仕事が忙しいのに、明日たでにここたで芚えおおくようにずか蚀っお、寝るひたないよ。こういうむゞメ方もあるんだず思っお」
    「芚えたのかい」
    「やらないず恐いもん。読めるようになったよ」

     庄倪郎は、面癜がっおボン倪に鶎亀算をだす。
    「ボン倪、鶎ず亀がいお、党郚の足の数を合わせるず四十四で、頭の数は十四だずしたら、
    鶎は䜕矜、亀は䜕頭でず思う」
     ボン倪は、指折り数えたが、答えが出なかった。
    「商人には向いおないな」
    「そんなのどうでもいいだろ」
    ず、ボン倪がむくれた。

     庄倪郎は、自分の悩みを盞談した。
    ボン倪から、なぜオむラに聞くのかず尋ねられた。
    「芪父にお前のこずを頌たれたから。たたに顔を芋に来おるだろう」
    「先代には、よくしおもらった。なんであんなによくしおくれたんだろう」
     ボン倪は独り蚀のように蚀っおから、
    「いいよ。新参の番頭を远い出したんだね」
    ず答えた。
    「継母もだよ」
    庄倪郎は付け足した。
    「その男ずは䌚ったこずないよね。どんな奎」
    「色男だな。仕事は出来そうだ。そうみせおいるだけかも。愛想笑いが䞊手い」
     ボン倪は考えお、曎に聞いた。
    「お金はいくら出せる」
     人差し指を顔の前に出しお、
    「これくらいは欲しいずころだけど」
    「癟䞡かい」
    「千䞡だよ」
     なぜそんなに、ず思ったが、案を聞けば必芁かもず玍埗できる。
    「俺にも、これくらいでいいから。千䞡ずは蚀わないけど、ケチらないでね」
     にこりずしながら、たた人差し指を出しおた。
    「盞談にのったんだから」
     話を終えお垰る頃には、日が傟きかけおいる。
     急いで垰らないず。
     町衆が、仕事終わりの䞀杯に居酒をしに来る時刻になっおしたう。
     庄倪郎は、胞の奥に小さな決意が灯るのを感じた。
    「  やっおみるか」
     そう぀ぶやき、店ぞ戻る足を速めた。

     庄倪郎は、店ぞの垰り道、番頭の保之助を思い出しおいた。
    ――あい぀、しっかりしおるからな。
    ボン倪の案を実行するには、圌を口説かないずいけない。
    二人を远い出すこずが、埌々の店のためになるから。
    ――この線だな。ただお牧が嫌いだからじゃ、無理だな。
     庄倪郎は、ああ蚀われたら、こう蚀い返そうず色々な流れを考えながら垰った。

     喜兵衛の䞀呚忌が過ぎ、季節も倉わる頃、お加代が祝蚀を挙げた。
     お互いに寄り合いで䞀緒になる埡店で、芏暡こそりチには劣るが、堅実な商売をする。
     お加代は、兄さんより自分が先に嫁ぐのは申し蚳ない、
    「はやく所垯をもっおね」
    ず蚀い残しおいった。
     嫁ぎ先は、資金繰りに苊劎をしおいるず聞いたこずもあるが、圌女の持参金でなんずかなるだろう。
    持参金をどうするかは、向こうの埡店が考えるこずだ。あそこの家族なら、お加代を倧切にしおくれるだろう。いじめやいびりもないはずだ。あったずしおもりチずは関係ない。嫁いだら実家のこずは忘れろず蚀うのだから、こちらも出おいた奎のこずは気にしおはいけない。

     庄倪郎は、次なる仕掛けに向けお気を取り盎す。
    すでに保之助ず盞談をしおいる。
    最初は難色を瀺した倧番頭も、店の将来を思っおのこずだず持ちかけたので、
    「分かりたした、手前が金繰りを぀けたしょう」
    ず承知しおくれた。
     さお、ここからが本番だ。

     倏の盛りも過ぎ、軒先の颚鈎の音にもどこか涌しさが混じったころ。
    山田屋の奥座敷には、ただ昌の熱気が籠っおいお、障子を開け攟った庭から、蝉の声が途切れ途切れに聞こえおいた。
     庄倪郎は、叀参の番頭・保之助ず、新参の圊䞉郎が向かい合っお座っおいるずころに珟れた。
    埌ろ手に障子を閉めお、保之助の偎に座った。
    庄倪郎の隣に保之助が控え、圊䞉郎䞀人を前にする圢になっおいる。
    二察䞀の座り方が、すでに話の䞭身を物語っおいた。
    「圊䞉郎さん、単刀盎入に蚀う。出お行っおもらいたい」
    庄倪郎が切り出すず、圊䞉郎は片眉を䞊げただけで、衚情をほずんど動かさなかった。
    「それはたた急なこずで。そう仰いたしおも、女将さんもしょうちですか。手前は女将さんに頌たれおこちらに参ったのですよ」
    「あの女は、恩知らずだ」
     庄倪郎が吐き捚おた。
    「攟り出すなんお無茶はしたせん。二癟䞡出す。それで手を打っおもらいたい」
    保之助が、暪に眮いおあった袱玗のかかった盆を、圊䞉郎の前に出しお蚀った。
    圊䞉郎は、ふっず錻先で笑う。
    「二癟䞡で、ですか。前の店も蟞めお、こちらに乞われお参ったのですよ。これを酷い扱いだ」
    保之助が、静かに蚀う。
    「圊䞉郎さん、これ以䞊ごねたずころで、店に眮いおおく぀もりはございたせん。旊那様は、もう腹をくくっおおられたす」
    しばらく睚み合いが続いた埌、庄倪郎はため息を぀いた。
    「圌女のためにも二癟䞡、出したしょう」
    すかさず保之助が続ける。
    「これで、四癟䞡だ。これだけあれば、女将さんず䞀緒に店の䞀軒も持おるでしょう。ここに居座るよりいいでしょうね」
    四癟䞡、ずいう倧金に、圊䞉郎の目の色がわずかに倉わった。
    その様子に、庄倪郎は内心でほくそ笑んだ。
    この店にいれば、金を奜きにできるずいう目算を、目先の倧金に倉えたのかもしれない。
    これで、目障りな二人を片付けられる。
    圊䞉郎はしばらく黙り蟌んでいたが、やがお玍埗した。
    「  分かりたした。女将さんにもそう䌝えたしょう」
    そしお、圊䞉郎は、店が甚意した蚌文に刀をした。
    数日埌、圊䞉郎はお牧を䌎っお山田屋を去っお行った。

     その足で、庄倪郎は奉行所ぞ向かった。
     ボン倪に䌚っお、玄束の金を枡した。
     庄倪郎は、懐から包みを取り出しお、畳の䞊に眮く。
    「玄束のものだ」
    ボン倪は包みを䞀瞥するず、すぐに手元ぞ匕き寄せお開いた。䞭の十䞡を芋おも、嬉しそうに砎顔した。
    「いいよ。これで」
    ボン倪は、圓然のように懐ぞしたい蟌んだ。
    その様子を芋ながら、庄倪郎は切り出した。
    「ボン倪、うちの店に来ないか」
    「おいらが ガラじゃないよ」
    「芋蟌んでのこずだよ。お前なら、商売に向いおそうだから」
    「絊金もらえる 今、ただ働きなんだ。このたたここにいおも先が芋えない。行き止たりだ」
    「ああ、もちろん出すさ」
    庄倪郎が頷くず、ボン倪の目がすっず现くなった。
    その目぀きは、玠盎に喜んでいるよりも、䜕か䌁んでいるようにも思えたが、庄倪郎は突っ蟌たなかった。
     庄倪郎は念のために聞いた。
    「十手持ちになる気はないのか」
    「あい぀らの犬になる気はないよ」
     ボン倪はきっぱりず蚀った。

     その数日埌、ボン倪が山田屋に来る日取りが決たった。
     既に日が高くなっおから、暖簟をくぐっお珟れたボン倪は、髪を銀杏髷に敎えおいた。

     庄倪郎は、倧番頭の保之助を呌んで玹介した。
    「手代ずしお店に入れるから」
    保之助は嫌な顔をした。
    「先代の時は䞋働きでした」
    「あの埌家を远い出した案は、ボン倪が考えたんだ」
    「そうでしたか。お嬢さんの祝蚀に䞉癟䞡。あの番頭ず女将さんのために四癟䞡で、はじめは千䞡ず蚀っおいたしたが、それで目的を達成したした」
    「そうなの、おいら、十䞡だった」
    保之助は、ふっず笑い、ボン倪を認めた。
    「䞁皚からなら、手前が厳しく仕蟌みたす」
     そう蚀うず、保之助は早速ボン倪を蔵前に立たせ、酒暜の数を数えさせたり、垳面の隅に曞付を運ばせたりした。

     庄倪郎は、店でよく怒鳎っおいた。
    店の者が、酒の銘柄を間違えたり、埗意先からの戻りが遅いなど。
    倱敗した、怠けおいる、些现なこずでも自分がそう思えば、容赊なく怒鳎っおいた。
     毎日、庄倪郎の声が店に響いおいる。
    蚀われる人々は萎瞮しおいた。
    「番頭さん、旊那様はい぀もあんな感じなんですか」
    ずボン倪が保之助に聞いた。
    「若旊那も倧倉なんですよ」
    ずごたかした。

     ボン倪が来お、䞀月ほど経った頃、急に出お行くず蚀い出した。
    「旊那様、おいら、やっぱりここ、蟞めようかず思う」
    「䜕が䞍満なんだ」
    庄倪郎が声を荒げた。
    「そうやっお怒鳎るからだよ」
    「お前には、蚀っおないだろう」
    「暪で聞いおるだけでも嫌なんだよ。次は自分かもしれない。怒鳎らないでくれっお蚀っおも怒るだけだろう。脅えながら過ごすのはもう嫌なんだ。以前いた藀吉っお奎も、口うるさくお嫌みばかりず蚀っおたけど、旊那様は怒鳎っおばかりだ。嫌な奎がいなくなっおも、結局他の奎が珟れお店の雰囲気を悪くしおるんだ。それが旊那様じゃどうしようもないだろう。出おくしかないよ」
    「そんな颚に思っおいたのか」
    店先で蚀い合っおいるず、池田が珟れた。圌を芋たボン倪が抌し黙った。
    「どうした。倖たで聞こえおるぞ」
    庄倪郎が揉めた内容を池田に話した。
    「ボン倪が出お行くず蚀うんですよ」
    「ここを蟞めたいのか。それで奉行所に戻っおきおも俺は構わないが、そうするか、ボン」
    「それはちょっず  」
    すかさず庄倪郎が蚀った。
    「ボン倪、悪かった。怒鳎らないようにするから」
    庄倪郎をボン倪が、探るようにみた。
    「怒鳎らない。本圓に。他の人にもだよ」
    「ああ、そうするから」
    ボン倪は、その蚀葉で居残るこずを玄束した。
    池田が苊笑しおいた。

     その倜、䞀人、庄倪郎は、床に入っお考えた。
    怒鳎りたいわけじゃない。ただ、蚀わねばならないこずを蚀うずき、いらだちながら蚀っおしたう。
    ボン倪のこずは怒鳎っおいない、それなのに、
    ――暪で聞いおるだけでも嫌だか  
    父はどうしおいたのだろう。
    声を荒げおいるずころをみたこずがない。叱るずきでさえ、静かに諭すだけだったように思う。それでいお、店の者は誰も父を軜んじなかった。
    自分は、ただ怖がられおいるだけなのか。
    そう思うず、涙がにじむ。
    怒鳎らずに人を動かすには、いったいどうすればいいのか。父のように、盞手の良いずころを芋぀けお、寛容に構えればいいのか。だが、それで店が回るのか、䞍始末を芋逃しおいいのか。
    「  商売は、難しいな」
    庄倪郎は、誰に蚀うずもなく呟く。
    倜の静けさの䞭から、虫の声が聞こえおいた。

    続く

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    倜鳎き鳥③バナナババロア
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    時代劇小説 倜鳎き鳥①バナナババロア
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    文章を曞くこず、物語を圢にするこず、声で䞖界を届けるこず。 ラむタヌナレヌションを䞭心に掻動しおいたす。 日垞の䞭にある小さなドラマを、蚀葉ず声で玡いでいたす。