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銖なし地蔵 第章

    ◆あらすじ

    「#銖なし地蔵」——そのハッシュタグが静かに広がり始めたのは、い぀の頃からか分からない。

    党囜各地で撮圱された、銖のない地蔵の写真。投皿者のアカりントは決たっお、数日以内に曎新が止たる。倱螪者はすでに䞃名。

    オカルトラむタヌの奥山朔から連絡を受けた民俗孊者・蟻村鈎音は、地域文化研究家の田所めぐみずずもに調査に乗り出す。
    出珟地点をプロットするず、バラバラに芋えた地蔵は䞀本の旧街道に沿っお䞊んでいた。街道を歩けば「芋られおいる」感芚が残る。フィルムカメラには、いるはずのない人圱が写る。倱螪者の最埌の動画には、誰のものでもない声が残っおいた。

    足跡を蟿るほど、道は北ぞず続いおいく。叀い地図を遡れば、旧街道の終着点にはか぀お「銖無し村」ず呌ばれた集萜があった。今は䞉神垂久仁地区ずしお名を倉えたその堎所に、䞀人の老婆が暮らしおいた。二人が来るのを、埅っおいたかのように。


    ◆登堎人物

    蟻村 鈎音぀じむら すずね26æ­³
    民俗孊者・倧孊院研究員。蚌拠ず論理で動くこずを信条ずし、孊術的アプロヌチを厩さない。以前の案件を経お「普通ではない案件」ぞの嗅芚がわずかに鋭くなっおいるが、それを認めたくない。感情が高ぶるず心の声が関西匁になる。

    奥山 朔おくやた さく43æ­³
    フリヌラむタヌ・オカルト専門。今回は自ら取材しおいた案件に鈎音を匕き蟌む偎。SNSで広がる郜垂䌝説を远うのは本業だが、「い぀もず䜕かが違う」ずいう盎感を最初から持っおいる。愛甚のフィルムカメラは今回も持参。

    田所 めぐみたどころ めぐみ52æ­³
    地域文化研究家・フリヌランス。倱螪者リストず出珟地点の資料をいち早く敎理し、情報提䟛圹ずしお調査を支える。今回は珟地調査にも同行する。

    橋爪 枉はしづめ わたる24æ­³
    フリヌの動画クリ゚むタヌ。チャンネル登録者数は䞉千人ほどの、小さな掻動をしおいた人間だ。銖なし地蔵の写真をSNSに投皿したこずで拡散のきっかけを䜜り、珟圚は行方䞍明。圌のSNSアカりント・動画・䜍眮情報が、調査の重芁な手がかりになる。

    杉本 照子すぎもず おるこ71æ­³
    旧街道沿いの限界集萜・䞉神垂久仁地区に䞀人で暮らす老婆。聞かれたこずだけに答える。饒舌ではないが、目が怖い。この道ず颚習に぀いお、誰よりも長く向き合っおきた人間だ。


    第章 来た

    橋爪枉がその写真を撮ったのは、十月の終わりのこずだった。

     堎所は特に決めおいなかった。前日の倜、ホテルの安いシングルルヌムでスマヌトフォンを眺めながら、地元の芳光ブログを流し読みしおいたら「旧街道沿いに銖なし地蔵がある」ずいう蚘事を芋぀けた。写真が䞀枚だけ添えられおいお、コメント欄には「怖い」が二件あった。

     それだけの理由で来た。

     バズるかどうかは分からない。心霊系のコンテンツはアルゎリズムずの盞性が読めない。でもネタずしおは悪くない——そういう刀断だった。枉はい぀もそういう刀断をする。面癜そうかどうか、それだけで動く。貯金はないが埌悔もない。二十四幎間、ほがそれだけで生きおきた。

     珟地に着いたのは午埌䞉時過ぎだった。

     旧街道の入口は、幹線道路から少し奥に入った堎所にあった。看板も案内板もない。地図アプリで堎所を特定しお、草が割り蟌んだ现い道を歩いた。十月の終わりで日が傟くのが早く、朚々の間から差し蟌む光がすでにオレンゞがかっおいた。

     実物は、思ったより地味だった。

     道の脇に、ひっそりず立っおいる。高さは腰のあたりたで。衚面は苔ず汚れで黒ずんでいお、台座の文字はほずんど読めない。そしお確かに——銖がない。切断面は叀く、䜕十幎も前からそうであったかのように、滑らかに䞞みを垯びおいた。ホラヌ系の動画でよく芋るような、劇的な䜕かは䜕もない。ただ、叀い石像が、銖だけない状態で立っおいる。

     枉はスマヌトフォンを構えお、䜕枚か撮圱した。角床を倉えお、近づいお、匕いお。フォロワヌが喜びそうな構図を探す。日が傟きかけおいお、圱の入り方がちょうどよかった。銖のない郚分が圱で黒く抜けるず、それなりに䞍気味に芋える。これは䜿えるかもしれない。

     撮り終えお、その堎を離れようずした。

     そのずき——䜕ずなく、振り返った。

     理由はない。虫の知らせずか、気配ずか、そういうものではなかった。ただ䜕ずなく、もう䞀床芋おおこうず思った。それだけだ。

     振り返っお、地蔵を芋た。

     さっきず同じ石像が、同じ堎所に立っおいた。同じ、はずだった。でも䜕かが——匕っかかった。匕っかかりの正䜓が䜕なのか、その堎では分からなかった。光の加枛か、角床か。枉はもう䞀枚撮圱しお、今床こそ堎所を離れた。

     特に䜕も感じなかった。少し肌寒かったが、それだけだ。

     アパヌトに垰ったのは倜の八時過ぎだった。

     今倜の宿は駅近くのビゞネスホテルではなく、栌安の玠泊たりアパヌトだった。月単䜍で借りられるタむプで、キッチンず掗濯機が぀いおいる。党囜を転々ずする枉には、こういう宿の方が郜合がいい。シャワヌを济びお、コンビニで買っおきた匁圓を食べお、ベッドに寝転がった。スマヌトフォンで今日撮った写真を芋返す。い぀もの䜜業だ。

     銖なし地蔵の写真を開く。

     悪くない。圱の入り方が思ったより良くお、銖のない郚分が黒く抜けおいる。䞍気味さが出おいる。これはいけるかもしれない。最埌に撮った䞀枚も確認する——やはり匕っかかりの正䜓は分からない。同じ石像だ。さっきず倉わらない。

     枉はSNSのアプリを開いた。写真を遞んで、文章を入力する。銖なし地蔵、発芋。なんか䞍気味。#銖なし地蔵 #心霊スポット #旧街道 。投皿ボタンを抌した。

     スマヌトフォンを胞の䞊に眮いた。倩井を芋る。

     倉だな、ず思った。

     郚屋が静かすぎる。い぀もなら、倖の通りを走る車の音が聞こえるはずなのに。窓は閉たっおいる。゚アコンも切っおいる。それにしおも、静かすぎる。たるで郚屋ごず、音から切り離されたみたいな——

     気のせいだ。

     枉はスマヌトフォンを取り䞊げた。もう「いいね」が来おいるかもしれない。画面を開いお、投皿した写真を確認する。

     芋た瞬間、手が止たった。

     地蔵に、銖がある。

     おかしい。さっき投皿したずきは確認した。銖はなかった。ない、はずだった。でも画面の䞭の地蔵には——銖がある。いや、正確には「銖があるべき堎所に、䜕かがある」ずいう方が正しいかもしれない。石の色ず、少し違う。圢が、少し——違う。

     枉は写真を拡倧した。

     拡倧するほど、それが銖ではないず分かっおきた。石ではない。もっず——柔らかい䜕かだ。茪郭がある。目も錻も口もないのに、圢だけがある。そしおそれは、こちらを向いおいる。

     スマヌトフォンを投げ出した。

     心臓が跳ねる。萜ち着け、ず自分に蚀い聞かせる。加工か。光の加枛か。撮圱のずきに気づかなかっただけで、最初からそういう圢の石があっただけか——

     でも、振り返ったずきに撮った写真はどうだ。あのずきも確認した。銖はなかった。間違いない。なかった。それがなぜ今——

     考えるのをやめた。考えれば考えるほど、倉な方向に行く気がした。

     郚屋の空気が、倉わった。

     枩床ではない。音でもない。䜕かが倉わった、ずしか蚀えない。ただ——誰かがいる、ずいう確信だけが、胞の䞭に静かに生たれた。じわじわず、ではなく。䞀瞬で、確信ずしお、来た。

     枉はゆっくりず䜓を起こした。郚屋を芋回す。六畳䞀間。ベッド、机、本棚、テレビ。誰もいない。圓たり前だ。鍵はかけおある。オヌトロックだ。入れるはずがない。

     それでも、いる。

     もう䞀床スマヌトフォンを芋た。

     画面が、暗くなっおいた。スリヌプになったのだ。い぀の間に。ほんの数秒前たで芋おいたのに。

     ホヌムボタンを抌そうず手を䌞ばした瞬間——画面が、ひずりでに明るくなった。

     通知ではなかった。アプリが起動したわけでもなかった。ただ画面が光っお、カメラが起動しおいた。むンカメラが。自撮り甚のカメラが、枉の顔を映しおいた。

     枉は画面を芋た。

     画面の䞭の自分の顔を芋た。

     蛍光灯の光で、癜く浮かんでいる。少し口が開いおいる。目が、少し——開きすぎおいる。

     肩の埌ろに、䜕かが立っおいた。

     茪郭だけがある。顔がない。手がない。ただ、そこにある。枉より少し背が高くお、じっずこちらを——画面の䞭の枉を——芋おいた。

     振り返れなかった。

     䜓が動かなかったのではなく、振り返っおはいけないず分かっおいた。理由は分からない。ただ、分かった。画面の䞭だけで芋続けた。それがゆっくりず、近づいおくるのを。䞀歩、たた䞀歩。音はない。気配だけが、濃くなっおいく。

     背䞭に、芖線がある。

     耳元で、息がかかった。

     声がした。

    「来た。」

     枉の声ではなかった。


    第章 #銖なし地蔵  ぞ

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    長野・安曇野垂圚䜏。 郜垂䌝説やオカルト陰謀論、UMA、宇宙人、土着信仰などからむンスパむアされたミステリヌ、ホラヌ系が奜きです。 ふず思い立っおAI掻甚しお自分でも曞いおみようず執筆䞭。

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