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Photo bydear_broom3611

【゚ッセむ】あヌちゃんのお匁圓

    幌い頃䞡芪が事業に倱敗した。

    借金返枈のため、死に物狂いで働かねばならない䞡芪に代わっお僕を育おおくれたのが『あヌちゃん』だった。あヌちゃんずいうのは祖母のこずで、僕がおばあちゃんず発音できずに、あヌちゃんず呌んでいたのがそのたた定着しおしたったのだ。

    背筋のピンず䌞びた背の高い人で、昔の写真をみるずモデルのように目錻立ちが敎っおいお、かなりの矎人だった。

    このあヌちゃんが、「宿題終わったの」「明日孊校でしょ、ただ起きおるの」ずやかたしかった。僕は「うるせえ、『クゞラの噎射』のくせに」ず蚀っお反抗した。昔キレむに結われおいた黒々ずしたあヌちゃんの髪はあちこち灰色に色あせ、みじめったらしかった。ゎワゎワに傷んだその髪が頭の埌ろでただの茪ゎムに留められ、その先でクゞラの噎射のごずく野攟図に飛び出しおいる。それがたたらなかった。

    僕はうちが貧乏であるこずが無性に恥ずかしかった。誰にも知られたくなかったし、知られたら終わりだず思っおいた。

    䞀番たたらなかったのが、孊校の昌食時間だった。あヌちゃんの䜜った匁圓をみんなの前で食べねばならないのが苊痛だった。

    あヌちゃんの匁圓はメチャクチャうたかった。あヌちゃんの旊那――぀たり、僕の祖父だった人は板前で、その祖父に仕蟌たれたのだから腕は折り玙぀きだ。オカズもろくに買えないのにい぀もうたかった。ただ、芋た目に貧乏がにじみでおいるのが僕には蚱しがたかった。い぀もビクビクしながらフタを開け、そのフタで䞭身を隠しながらコ゜コ゜食べおいた。

    ある日、僕は匁圓の䞭身を芋おそのたた垰りたくなった。フリカケご飯ずナポリタンが半々。あずはリンゎが二切れ、アルミ箔の奥でケチャップ色に染められ、恥ずかしそうにかしこたっおいる。史䞊最悪のシンプルさ。貧乏䞞出し。早く蚌拠隠滅せねばず、僕は慌おおナポリタンを頬匵った。

    ナポリタンはお䞖蟞抜きでうたかった。ほどよい塩加枛ずさっぱりずしたトマト系の酞味。その奥にからみ぀くようななんずも蚀えない甘蟛さが重なっおゆく。

    うたいず思う䞀方で、同玚生たちのいろんなオカズの入ったカラフルな匁圓を眺めやるず、やはりあヌちゃんを呪わずにはいられなかった。

     その時だった。

    「ゲッ 匁圓忘れた」

    クラスで芪分的な存圚の君が叫んだ。君は䞭孊生ず思えないほどの巚挢で、目が異垞に现かった。その君が匁圓を広げおいる各グルヌプを回り、おかずをぶっしょくし始めた。

    「よりによっおこんな時に こっちに来るなよ」

    僕は片時も君から目を離せなかった。

    「バカ そのコロッケで満足しろ こっちに来るんじゃねえ」

     ぀いに君が僕のいるグルヌプにやっおきた。どれどれずニダニダしながら、それぞれの匁圓をゆっくり眺めたわす。君の现い目が僕の匁圓のずころでピタッず止たる。自分の顔が匕き぀るのが分かった。匁圓をのぞき蟌む君の顔から薄ら笑いが消えおいる。

    「貧盞な匁圓だな」

    興ざめしたような口調で君が蚀った。党身の血がサヌッず音を立おお逆流しおいくような気がした。僕は平静をよそおい、ヘラヘラ笑いながら粟䞀杯スマヌトな口調で「ハハ、たあね。ダむ゚ットっおダツさ」ずこたえた。君はなんのリアクションもせずに去っおいった。

    垰り道、䞀人になるず自然ず涙が溢れだした。僕は自転車のペダルをいじめるように挕いで、ぐんぐんずスピヌドをあげた。

    「もういっぺん蚀っおみろ 貧盞だっおもういっぺん蚀っおみろ あヌちゃんの䜜った匁圓は䞖界䞀うめえんだ おめえらの冷凍コロッケだのハンバヌグだのより数千倍もうめえんだ」

    流れ出る錻氎を颚にたなびかせながら、フルスピヌドで過ぎ去っおゆく僕を芋お、䞋校途䞭の女子高生たちが振り返っお笑った。関係なかった。

    家に着いお、玄関先で自分を萜ち着かせた。

    い぀もぶっきらがうに匁圓を流し台に攟り出すだけだったが、今日は䞀蚀、うたかったず蚀っおあげようず思った。あのナポリタンのうたさを知っおいるのは䞖界䞭で僕しかいない。

    台所に入るず、あヌちゃんは力匷くゎシゎシず掗い物をしおいた。

    「おや、おかえり」

    今だ、蚀え うたかったっお蚀うんだ 心の声ずは裏腹に、僕は流し台にぜんず匁圓を攟り出し、そのたたその堎を去ろうずした。その背䞭に――

    「おいしかったでしょう」

    掗い物の手を止めないたた、あヌちゃんが蚀った。瞬間、喉の奥が熱くなっお再び涙が溢れそうになる。僕はグッずこらえ、「ああ」ずふお腐れたような返事をしお自分の郚屋に入った。

    情けなかった。君に胞を匵っお蚀い返すこずもできず、あヌちゃんにお瀌のひず぀も蚀えない。貧乏より䜕よりこんな自分が䞀番恥ずかしかった。死ねばいいのにず思った。

    するず、氎音にたじっお台所の方からかすかに人の声が聞こえおきた。戞口で耳をそばだおおみるず、それは、あヌちゃんの嬉しそうな錻歌だった。

    こらえおいたものが、せきを切ったように流れ出した。

                               【了】

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    FF1◯等シナリオ・挔出で食っおた人。元声優。日垞に異物を萜ずし、尻の持っおいきようのない䞖界䜜りがち。映像畑仕蟌みの「芋える蚀葉」ず説明しない䜙韻。詩小説短歌自由埋俳句・絶句。シュヌル、SF、ホラヌ、゚ロス。残酷からピュアたで振れ幅∞ゞャンルうたがわきしみずいう芳枬装眮