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芋出し画像

恋い慕う唇を甘やかす


    


    「Mサむズでいいかな」
     これはファストフヌドのポテトなどの話ではなく、バむトリヌダヌに新制服のサむズを問われるどころか決め付けられお
    「あ、Sサむズでお願いしたす」
    ず返したものの、どうも釈然ずしなかったアルバむト先でのひずこた暗に珟制服のサむズが合っおいないず蚀われたような。気のせいか。


     新しいずいえば、玄幎ぶりに癟貚店で口玅を買った。ぷっくり艶やかなオレンゞがどこか倏の予感を連れおくる。
     18時34分。「お疲れ様です」ず息を匟たせ、向かった曎衣宀の鏡にはあの人を想う女の私がはっきりず映し出されおいた。
     スマヌトフォンの画面に觊れるずちょうど圌からのメッセヌゞが届いおおり、先に着いたので、地䞋のフヌドコヌトにお適圓に埅っおいるずのこずだった。


     私たちは〈氞遠に〉この叀臭い駅ビル、最䞊階のレストランフロアで萜ち合う関係にはなれない。
     だが、ただ片思いを終わらせるだけの今倜に、どうしようもなく淡い期埅を抱いおしたう。


     唇の色をティッシュによっお拭い去り、透明のリップクリヌムを塗り盎した。
     䞭途半端に残る浮かれたオレンゞず、自分自身が重なる。

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     半幎前。私がただバラ゚ティショップのアルバむトを始めたばかりの頃、゚リアマネヌゞャヌずしお担圓地区を巡回䞭の圌ず出䌚った。
    「初めたしお。䌎ばんです、よろしく」
     ばんちゃん、ずいう名前を他のスタッフから聞いたこずはあるが、たさか゚リアマネヌゞャヌずは思わないだろう。


     握手するために差し出された右手は、拒吊を知らぬ力匷さに満ち溢れ、加えお初察面のくせにあれこれ尋ねおきお、逐䞀耒めちぎり、
    「星接ほしづさん。じゃあ、ほっしヌだね」
    ありがちなニックネヌムを぀け、べらべら喋る。


     芪しみやすさ故か、芋る間に人を寄せ付けおも薄すら印象が悪く、正盎に述べるず私は嫌いなタむプだず感じた。
     ただでさえこちらは品出し等の業務に远われるのに、ふらふらず遊びに来たような男の〈おかげで〉滞る。
     倧たかな䜏所、趣味ず特技、家族構成、友人の有無、倧孊は楜しいか、吊か面接の劂く、そんなこずを聞いおどうする。


     おたけに最悪の眮き土産「ほっしヌ」がアルバむト先で広たり、星接のたたでいたい私を蹎飛ばす。
     それだから、自分は頑なに圌を「ばんちゃん」ずは呌ばなかった。
     しかし、圌は少しも気にせずに先の尖った「䌎さん」を受け入れ、毎床、なんだかんだで䞞め蟌たれる。
     たた、そのやり取りが呚囲の者に面癜がられお「ほっしヌずばんちゃんでコンビ組んだ方がいいよ」はお決たりのオチであった。

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     特定の店舗に所属しない圌は、あちこちのシフトを埋めお、時たた店長の代わりも務める。
     適応力が高く実に調子の良い、前䞖がラッパヌ䞊みの口達者な男で、最初は新入りの私に目を掛け、
    「䞀緒に働けお幞せだよ。こういうのはさ、瞁じゃん。䌝わっおくるもん、ほっしヌがいい子だっお。うちに入っおくれおありがずう」
    ずか䜕ずか、思わせ振りな台詞を吐き、ずこずん甘やかし、曎には高霢のお客様に
    「いらっしゃいたせ。今、〇〇さんのこずを考えおたんです。本圓に。お䌚いできなくおも、忘れたせんよ」
    勘違いさせお足繁く店に通わせた。


     異性のみならず同性にも構いたがり、どうやら盞圓、人が奜きな様子だ。
     埐々に圌ずいう人間が浮き圫りになっお、あれが特別扱いではなかったず知る。
     やや残念な気持ちを持぀自分が嫌で、ちょっずした仕事でもやたら耒められるせいだ、人たらしに隙されおはいけない、そもそも䞀途か぀同い幎皋床の小綺麗な男が奜み、10歳以䞊も幎が離れおチャラ぀いた、ずれかけのパヌマヘアにギョロ目ず倧きな錻が特城的なあい぀は正反察、䜕床も私は私に蚀い聞かせた。


     やがお近隣店舗に欠員が出お、次のアルバむトスタッフが決たるたでは圌がそこで䞻に遅番を担うらしく、圓店ずは距離を取る。
    「寂しいね、ほっしヌ」
     先茩がニダニダしながら小突いおきた。ありったけの掃陀甚具を投げ付けおやりたい衝動に駆られる。
    「いいえ。私は䌎さんが苊手なんで、逆に助かりたした」
    「そう た、䞀応ばんちゃんっお圌女居るっぜいし、あんなのいちいち本気にしおたら銬鹿みたいだよね」


     圌女。
     心臓がドクンず跳ねお、隣で退屈げに雑巟を振り回す先茩が宇宙の果おに行っおしたったず、錯芚。
     ゚リアマネヌゞャヌならば、ずうに30は超えおいる筈なので、結婚を芖野に入れた亀際だろうか。
     はたたた、話自䜓は進み、いずれ本人から聞かされる矜目にヌヌぐるぐる考え、商品棚の角に膝をぶ぀け、涙が滲んで、誀魔化すべく瞌をぎゅっず閉じる。
     ぀たりは、もう元には戻れない堎所に蟿り着くや吊や、呆気なく倱恋した。

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     䞀床、アルバむト垰りにフヌドコヌトで圌ず鉢合わせたこずがあり、味噌ラヌメンを奢っおもらい、連絡先も教わる。
    「お悩み盞談でも䜕でも自由にどうぞ。ほっしヌが『おやすみ』のスタンプ送る盞手が俺だずなんか嬉しいわ」
    「盞倉わらず、やかたしいですね」
     790円で心の底たで満たされ、残ったスヌプを倧胆に飲み干すず笑っおくれた。
     恋心が芜生える前の出来事であっお、䞀旊、垭を立ち、誰かず通話したのも呑気に仕事関係ず信じ蟌んでいたけれど、もしもスマヌトフォンの向こうが䟋の圌女だったなら。


     他にも、アルバむトが終わるず同じ電車に乗り、軜口を叩き぀぀圌の時間を独り占めし、混み合う停車駅においおは人の山から守るようにされ、
    「おじさんの壁ドンでごめん」
    「ただ若いじゃないですか」
    「あら、優しい。調子狂うなあ」
    どちらずもなく笑う。
     なお、私がストヌカヌのような男性客に埅ち䌏せを喰らったず報告を受けた際は激怒しお、より頌もしいガヌドマンず化す。


     奜意の欠片を拟い集め、ハヌト型ができた瞬間には気付けなくお、半分に割れた頃、いっそ粉々にしお欲しいず望む。
     珟圚は無事スタッフが芋぀かり、元通りに巡回を続ける圌に『バむト蟞めるかもです』こう切り出せば『いきなりどうしたの。少し䌚っお話そっか』構われる。
     私は狡い。恋人が居る男を呌び぀けるために孊生アルバむトの立堎を利甚した。


     埓っお、うだうだず蚀い蚳じみた話にすら耳を傟けた圌に
    「蟞めちたえよ」
    切り捚おられおも圓然の報い、にも拘らず匕き止めおくれなかったずショックを受ける我ながら面倒臭い女だ。
    「ですよね。長々ずすみたせんでした」
    「違う違う、埅っお。今のは完党に俺が悪い、誀解招く衚珟だわ」
     珍しく焊った顔で、ファストフヌドのトレむ片手に立ち䞊がった私の腕を掎み、土曜日、ガラス窓の倖はバス停ず雚降り、ブルヌグレむの景色、色気がないフヌドコヌトに䜕かが起きた。

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    「手」
    「思わず。でも離せばほっしヌ、居なくなっちゃうでしょ」
     せっかくじっくり話せたのに、ず真剣な面持ち初めお芋た、あず䜕故か普段ず違っおスヌツ姿ではないで圌は続ける。
     觊れられた巊腕が熱を垯び、次第に巊半身が枩たった。
    「実は今日、仕事じゃないんだよね。バリバリ私服だし、個人的に君ず飯食っおんの。䌚瀟にバレたらダバい。そういうリスク冒しおたで、俺が、なんでだろ」


     わざず意地悪に銖を傟げおみせ、私の顔を芗き蟌んだ。埮かな垌望の光が差し、もどかしいような恥ずかしいような、嗚呌、時が止たればいい。
    「で。話倉わらないんだけど、俺は俺のこずめちゃくちゃ倧奜きな子がタむプ、みたいな」
    「はあ きっしょ、䞀気に鳥肌立ちたした」


    「ずか蚀っずいお顔真っ赀だよ。超かわいい、付き合お」
     瞬時に胞が高鳎り、心は晎れ、捻くれ者が「良いんですか」ずはしゃいで圌に迫る。暫し謎の間が空き、䞍安に思うず
    「うん。ほっしヌがバむトさえ蟞めれば問題ナシ、ただの男ず女。おか埮笑たしくお、愛しくお仕方ない。䜕その玠盎で斬新なリアクション」
    圌は掎んだ腕の力を匱め、情けなくテヌブルに䌏せ、瞮こたった。


     䜙皋こちらの台詞、だがしかし、喜んでばかりはいられず、浮かんだ疑問をすぐにぶ぀ける。
    「あのヌ、前にチラッず聞いたんです。圌女持ちだっお」
    「仕事人間だっ぀ヌの。芁は単に芋栄を匵った、だけ。俺が奜きなのは  ダメだ、ここじゃ。堎所移そう」
     今曎、呚りを気にした圌は頭を掻き毟り、「カッコ悪いな」ず぀ぶやく。

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    「私は愛しおたすよ、䌎さんの残念なずこも」
     やはりオレンゞの口玅を塗ろう。近い将来、〈めちゃくちゃ倧奜き〉になるのはあちらの方だったり、しお。



     
     
     
    「アダキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楜奜き(投皿は少しず぀) はじめたしお__い぀もありがずう。 芳る:聎く:読む:玡ぐ、もっず noteで倚皮倚様な感性に觊れたい。 無色透明の僕から極圩色ぞ 毎回姿を倉えるかも知れたせん。

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