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Photo bymiho_tb

「家に垰るたでがフェス」誰が蚀ったのだろう

    圩生透

     ラむブが趣味でフェスにも行くこずがある。
     以前、勀務先の先茩に「ああ、倏の野倖だよね」ず蚀われお「それも合っおたすけど、実は幎䞭どこかしらで行われおるんですよ、䟋えば」云々を぀い熱く語っおしたい、早口のMC、次第に盞手が愛想笑いを浮かべ「はいはい、もう分かったから」で遇らわれ、はっず気付いた頃には冷房の真䞋でひずりきりだった。


     孊生時代は毎幎グルヌプで参加しおも、就職すれば忙しく予定が調敎できなかったり、私の知らぬ間に友人ずが䞍仲になったりで、䞀定の距離を眮き、そのうち誘っおみるず『ロックに察する興味が薄れた』ずの返事に肩を萜ずす。チケットの䞀般発売に挑み、数秒で〈予定枚数終了〉に匟き飛ばされたような感芚。


     挙げ句の果おにSNSで芋぀けた、自分ず音楜の奜みがそっくりな男ず䌚堎で顔を合わせるも、ステヌゞ間の移動䞭に酔った勢いずやらの執拗な「ねヌ、今倜泊たらせお」「にゃにゃさんはがっちなの寂しくない」に足を取られ、ぷ぀りず切れる。
     こうしお、単独で特に珟地集合もせず、自由気たたなスタむルの旅が始たった。


     春先の出挔アヌティスト、日割り発衚開催は月の土日。日目を遞び、申し蟌んだ抜遞に圓たり、喜び勇んで支払ったチケット代手数料が幟らかは、ずうに忘れたが新曲の歌詞は䞀発で芚えられる。マゞック。


     さお。肌觊りがマシュマロに䌌おいる、ワむダレスむダホンで初期のアルバムを聎きながら、きびきびず駅に向かう。
     キャップずサコッシュは念の為に防氎加工、フェスの事前通販で手に入れたノィンテヌゞ颚のTシャツ、銖にタオルの䞭に冷华シヌト、接觊冷感を謳う、アヌムカバヌず緩いシル゚ットのパンツ、履き慣れた軜量スニヌカヌ。Tシャツに描かれたロゎをもずにミントグリヌンを䜿っお露出も少なめ、比范的シンプルな装い。


     持ち物リストを䜜り買い物、小旅行のシミュレヌション、倩気予報ず睚めっこしおは雚具を揃え、結果的には晎れのち曇り、只今の気枩は24℃。
     階段を䞊り、ちらっずスマヌトフォンの画面に芖線を移し、人圱がたばらな日曜の時過ぎ、改札を通る。
     通勀ずは別の路線、電光掲瀺板に埓っお、ホヌムで電車を埅぀。この胞の高鳎りを自分しか知らないような朝が奜きだ。


     昔はよく䌚堎近蟺の宿を取っお前日入り〈埒歩で行けた〉ものの、今は時に起きお朝食、着替え、スキンケア、寝がけ県で化粧をした。
     新しい日焌け止めが色぀きで助かる。眉や睫毛以倖を明るく仕䞊げ、メむクキヌプミストは必須「だけどもしも」、倧量の汗によっお厩れたら。瞌をキラキラさせおおこう、ず思った。
     现かく袋に分けた鞄の䞭身を再䞉確認したせいで、䌞ばしかけの前髪などにストレヌトアむロンを通す時間はなくヌヌ蚈画を立おたにも拘らず、私はい぀もそう。
     電車に乗り蟌むず予想通り、座垭は空いおおり、車窓に映ったショヌトヘアの毛先が跳ねおいた。


    『おはよ』『にゃにゃ楜しんできおね』『熱䞭症に気を぀けお』
     玄30分ガタンゎトンず揺られお埮睡んだずころ、友人からメッセヌゞが寄せられる。
     間もなく久しぶりの新幹線に乗り換えお、険しい衚情のたた黙々ず豪華な匁圓を食べるお爺さんの隣に座っおもいいか迷い、詊しにぺこりず頭を䞋げおみた。
    「どうぞ」
    「あ、ありがずうございたす」
    思いの倖ふわっず心地奜く、優しげな声が耳に残る。話さなければ分からなかったこず。   
     軜装。最小限の荷物を芋お、本圓に旅慣れた印象を受け、将来、自分も圌のようになるのだろうかず考えた。


    「しヌっ だよ」
     通路を挟んだ暪に芪子がいる。初めおの新幹線らしいに目を茝かせおはしゃぐ子䟛、腹をこしらえおペットボトルの麊茶を飲むお爺さん。私にずっおはどちらも幞せそうで、人に限らず出䌚いの連続が面癜く、あっずいう間にアナりンスが流れた。
     無事に降りるず、ちらほらバンドTシャツ、グッズを身に着けたカラフルな者が珟れ、これのおかげでどこぞ行っおも安心できる。


     次は埀埩シャトルバスここは有料。無料のフェスもアリ。わざわざ乗り堎を地図アプリで調べなくお枈むくらいには䞊んでおり、時到着では遅かった。暇朰しにSNSを開いおフォロワヌの぀ぶやき『やっぱ入堎列もえぐい』『䌚える人〜』『暑すぎ』『自宅䞊みの安定感』ず写真を眺める。私の前は男女で埌ろは女性ふたり、呚囲の話もこっそり聞く。
    「こんなんじゃ、開挔には間に合わんよな」
    「去幎もっず空いおた気がする」
     さながらテヌマパヌクのアトラクション埅ち、䞀向に進たない。珟圚の気枩は30℃、ぶわっず汗が吹き出お、透かさず月癜の飲料氎で喉を最した。氎分ず塩分を補絊。


     しかし目的地の公園に着くたでがあたりにも遠く、バスに入った途端、涌しさに感動を芚える。
    「炎倩䞋だし、普通に危険じゃん。ラむブハりスで良くね」
    ふず元恋人の冷静な発蚀ず呆れ顔が浮かんだ。かき氷の劂くキヌンずくる、が、あのステヌゞに立぀、最も奜きなバンドが芳たかった。

     はじめは手の届く距離にいお、毎週ラむブの予定があり、海の町から着実に倢を叶えおいく圌らの存圚に励たされ、幎霢が近いのでこちらも仕事を頑匵ろうず思える。
     サコッシュごず窓偎に寄り掛かるようにしお盗難察策シヌトベルトを締め、ぐっすり眠り、埌に備えた。

    倏雲の行方


     入堎口付近ずフォトスポットが混み合う。
     電子チケットをリストバンドに換えお、各所で写真を撮り、今回は利甚しないクロヌク、たたに吹く枩い颚、無数の喋り声、色柄豊富なレゞャヌシヌトで埋たる朚陰、倪陜のような笑み、䜓に響く音楜、涌を感じさせる装食、冷えたビヌル、フヌド゚リアやアパレルブランドずのコラボに惹かれ、人気が䞀目瞭然の物販を暪切る。

     たずは12時半からサブステヌゞでのラむブを楜しんで、昌食にしよう。クヌルタむプのボディシヌトで汗を拭き、衣類甚のスプレヌをかけお、぀いでに日焌け止めを塗り盎したい。


     ずもかく私の倏ず蚀えば、日垞を離れお、生の音を济び、初察面の誰かしらず歌い、叫ぶ。
     数幎前に客ずしお蚪れ、メンバヌが仲良くなったきっかけはたさに野倖フェス、売れおもギタヌボヌカルが必ず「はじめたしお」ず名乗るスリヌピヌスバンドず共に。


     ドリンクブヌスは珟金払いの方が早かった。自分の䜓枩より高い暑さ、熱䞭症を防ぐためにアルコヌルは避ける。
     曎に、有名店がこんにちは。
     ご圓地グルメは勿論、䞖界各囜の料理も。ワンハンドフヌド、スむヌツ、䞌もの、カレヌ、麺類、等々の屋台を前に、心が螊った。キッズ゚リアは未知の領域。

     ただでさえ忙しなくタむムテヌブルを远い掛けるのにどれも魅力的で困る。
     䌚瀟で過ごす日は氞遠のようだけれど、応ち倕空に照らされ、メむンステヌゞのトリたで駆け抜け、移動時間を螏たえるず新幹線の終電が迫った。


     ずいう蚳でアンコヌルの曲を聎き぀぀垰路に、歩を進める。
     短い髪がパサ぀き、倚少は日に焌けおしたった。今曎、呚りの芖線は気にならない。
     がしかし、先を行く艶やかなロングヘアを束ねた现身の、服装はオヌバヌサむズの耪せたTシャツに䞈が長めのハヌフワむドパンツ、ず真っ黒の人が䞍意にふら぀き、濡れたペットボトルを銖筋に圓おお、立ち止たったので䜓調䞍良を疑い、さっず声を掛ける。
    「お姉さん。蓋、開けたしょうか」
     振り返るずアンニュむな切れ長の目、ツンずした錻、薄い唇の矎しい顔立ち。
    「芪切にありがずね。でもごめん、男  」


     改めおよく芋ればミニショルダヌポヌチ、腕時蚈、そしお䜓のパヌツが。
     居た堪れない沈黙を、圌が埐ろに柔らかくふっず埮笑んで砎った。そこはかずなく暗がりの道に差し蟌む月光を思わせる。
    「玛らわしいよね。倧䞈倫、慣れおる」
    歩き出すず私に速床を合わせ「日通しでちょっず疲れたんだ」ず、蚀い添えおゲヌトを朜る。


     ありのたたの話、ひずりだず散策のみで異性が近寄っおきた。
     矎人の圌も同じくナンパに遭い酒を奢られ、こちらず違う点はあらゆる堎面を
    「皆、優しかった。小っちゃい子がさ、ご飯食べる時シヌトに入れおくれたり。俺なんか目立぀ みたいで埅ち合わせの目印、あず撮圱係頌たれお、協力したら塩风ずか゚ナゞヌドリンク貰えた」
    プラスに捉える。

     昌の興奮ず曇りの予報はどこぞやら、猛暑を䟮るなかれ。
     時が経぀に぀れ、私は䜕もかもが煩わしく、無衚情を貫いお独特のオヌラを攟った。
     他に、邪魔されたくなかったから。圌ずお健康なら良し、甚はない筈が、ぜんぜんず䌚話が匟み、ふたりでバスに乗る。

    宵ずシル゚ット

     
     久留須
    さんは同い幎・26歳で、私のスマヌトフォンケヌスに挟んだステッカヌを「かわいい」ず頻りに耒めた加えお、あちらのヘアゎムは䟋のバンドがさりげなく昚幎に販売しおいた物で、぀たりはファン。
    「友達誘っお『盞手が無理だったらいいや』じゃなく、党囜ツアヌわりず平気。理由をはっきり蚀うず、い぀死ぬか分かんないでしょ。䜆し、゜ロキャンプは厳しいかも、ただ」
    「うん、俺も倧䜓そんな感じ。ちなみに来月のワンマン行く」
     互いに共感ず質問を繰り返し、自然ず距離が瞮たる。圌のボタニカルな銙りを嗅ぎ、癒され、こんなこずが起こるずは、密かな埌悔、せめお着替えを持っお来れば良かった。


     SNSのアカりントを教え合い「本名ななちゃん」「ううん。高校の修孊旅行だっけ、えヌっず。䜕でか子猫に囲たれる倢芋お、寝蚀がやばかったっぜい」「だから、にゃにゃ。正盎で奜き」に、くらっずする。
     偶然、店で流れたBGMが忘れられず、未開拓のゞャンルにのめり蟌むかの劂く、可胜ならばもっず話したくずも、枋滞ナシで駅前に送られた。運転手さんに感謝。


     土産を買う䜙裕さえありそう、久留須さんは電車移動だず語る。心なしか倜のロヌタリヌはネオンカラヌに染たり、さよならの蚀葉を探しおダブルアンコヌル。
    「朝䞊んでた時に。埌ろの人達が、䜏んでるずこはすっごく離れおお、でも、幎に䞀床あそこで䌚うっお決めおるの。聞こえた」
    「わあ、玠敵な関係」
    解いた髪がみぞおちの蟺りに垂れる圌、やや䞋から顔を躊躇いがちに芗くず「俺は。にゃにゃず、たた来月䌚いたい。迷惑」尋ねられお花火があがった脳内で。


    「嬉しい。肩身狭くお、思い出に瞋らなきゃ生きおけなかった数幎を。曎新しおいこ」
     どう頑匵っおも抗えない、あんみ぀みたいな甘いずきめきに「じゃあね」ず手を振っお新幹線の改札方面に走り去る。
     努めお平静を装ったが、長たらしい髪の毛が本、私のTシャツに萜ちおおり、クラゲの觊手が絡たった。


     銘菓をたずめ買いしお、ホヌムでひずり、くたびれた䜓に沁みるサむダヌを飲み干す。
     スヌパヌ銭湯に寄っお倜行バスで車䞭泊ずいった、か぀おのコヌスは倉わり、私が思うに。

     フェスは耇数アヌティストを自由に芳るこずができ自分はこれを機に『ラむブハりスにも遊びに行こうかな』ず考えるような収穫を埗た、ステヌゞ以倖でも様々な楜しみ方がある。
     仮に目圓おがひず぀なら割高だが、初芋客の反応を知り、誰かが音ず恋に萜ちる瞬間に立ち䌚い、玠晎らしいパフォヌマンスず、爆笑必至のMCだずか、琎線に觊れるカッコいいメッセヌゞによりファンが増えるのを芋たい人にはおすすめ。


    『本日はありがずうございたした初出挔の〇〇 ROCK FESTIVAL  』
     バンド公匏の通知。扉が開くも満垭、続いおメンバヌの発信、熱気に満ちたフォトギャラリヌ、悩んだであろうセットリスト、魂が蟌められたラむブレポヌト、ハッシュタグ怜玢で感想を読み、再生される蚘憶、歓声ず拍手に包たれ、目頭が熱くなった。


    「涙ぐんでる」
    「メむクだよ」
     流石は終電、通路すらぎゅうぎゅう詰めの車内に久留須さんずのやり取りが挟たれるや吊や、たさかの本人からダむレクトメッセヌゞが届く。
    『こんばんは。お家に垰るたでが心配なので連絡ください』『いや、お父さんか』
    ヌヌずうっず続けば良い、なんお䜙韻に浞ったたたの真倜䞭に私の最高な旅が幕を閉じる。   

     明日正確には今日は仕事、掗濯物の山、筋肉痛、蚀わずもがなの事埌〈特兞〉が埅ち受けるずしおも。


    ★行く前も行った埌も含めおフェス、の物語でした。䞻人公ず䞀緒にいるような気分になればず思いたす。


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    「アダキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楜奜き(投皿は少しず぀) はじめたしお__い぀もありがずう。 芳る:聎く:読む:玡ぐ、もっず noteで倚皮倚様な感性に觊れたい。 無色透明の僕から極圩色ぞ 毎回姿を倉えるかも知れたせん。

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