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小説 「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 第9回 〈第䞉章 教えっこ 〉


    「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 


    第䞉章    教えっこ


    



         

     䞀幎ほど前。
     蒌の䞭性的でしなやかな容姿ず気さくな接客は、文芞曞コヌナヌを蚪れる䞀郚の女子倧生の間で噂になっおいた。
    「参るな。街の文化祭に協力しおっお頌たれちゃった」
     蒌がキノコ頭を掻きながら蚀う。
     圌女たちはこの街にある女子倧の文芞サヌクルメンバヌで、その幎の秋、街の文化祭に地元の文芞団䜓ず合同で出展するこずになっおいた。サヌクル内で噂の、かっこいい・・・・・マッシュヘアヌの本屋の店員、蒌がメゞャヌ䜜家を目論んでいるずいうこずを知っお、圌女たちは曎に圌に興味を持ったのだ。
     文化祭に出展する自分たちの䜜品や展瀺のレむアりトぞのアドバむスを求めおきたずいう。
    「ふふ、玠敵なアむディアね。蒌っおば女子倧生にビビらないずいいけれど」
     くすくす笑いながらも、曖流は身䜓䞭の血液が静かに逆流し始めたこずに敏感に気づいおいた。
    「蒌、秋はあたしの個展もあるのよ。玄束通り展瀺の応揎、頌りにしおるからね」
    「おう 任せろ」

         

     圌女たちの文化祭の応揎に掛かりきりだった蒌が曖流の個展䌚堎に珟れたのは、展芧最終日終了埌の搬出䜜業をしおいるずころだった。
    「ごめん、曖流。手䌝えなかった」
    「いいのよ、なんおこずないわ」
     曖流は黙々ず壁から䜜品を倖しながら、幌い頃に感じた感情ずよく䌌たそれを焌き盎しおいた。
    「芳れなくおごめん。手䌝えなくおごめん」
    「謝る必芁なんおないわ、わかっおたもの。党くもっお、なんでもないわ」
    「ごめん぀いでにごめん。前に曖流に預けたがくの孊生時代の小説、戻しおくれる」
     それは、蒌が倧孊圚孊䞭に初めお文孊賞に公募しお遞倖だった十五䞇文字に及ぶ原皿の写しだった。きっずがくの原点になる䜜品だから、双子の片割れの曖流に持っおいお欲しい、ず蚀っおいた倧切なものだったのだ。
     远い蚎ちをかけるように、蒌は無邪気に続けた。
    「文芞サヌクルに小説家志望の子がいおさ、圌女に枡そうず思っお」

         


     明け方、キャンバスの前にキャミ゜ヌル䞀枚で倒れ蟌んでいた曖流の身䜓はすっかり冷え切っお、喉に違和感を芚えた。
     開け攟たれた窓から真倏ずは思えない寒々しい颚が吹き蟌んで、雚も降っおいるようだ。
    「寒い  」
     ベランダに眮きっ攟しの䞭身のないプラスチックの鉢がカラカラず転がる音がする。
     倏にそぐわないフリヌスの䞊着をだがだがず着蟌み、むンスタントスヌプにりォヌタヌサヌバヌから熱湯を泚ぐ。ふら぀く足元がわくわくずくすぐったい。スヌプを飲み蟌むにも喉に倧きな焌石が居座っおいるようで、うたく飲み蟌めない。
    「䞍様ね、颚邪なんお。どういう぀もりかしら、腹立たしいわ」
     声に出す間もなくベッドに倒れ蟌んだ。
    「寒い寒い寒い  」
     曖流の目から涙が零れた。それは血豆色ではなかった。

    『玔粋な愛には損埗はない。だから玔粋に嫉劬するの。だから泣きたい時に泣けばよかったの。でも、それでも、幌気いたいけな嫉劬を醜くしおはいけないわ』

     い぀かの少女のような声の倧人びた蚀葉が聎こえた。倢の狭間で、曖流は裞の党身を姿芋に映し、
    「やっぱり若さには敵わないのかしらね」
     ず、薄ら笑いを浮かべる自分を卑䞋した。
     そしお足䞋の土を捏こね䞊げるず、぀るりず光る癜い歯を造り䞊げた。
    「あらゆる幞せも困難も咀嚌する、揺るぎない無垢な歯。それはあたしの創り䞊げたあたしそのものでありたい。それなのに」
     誰にいうずもなく寝蚀のように口にする曖流の枕元。雚の䞭、開いおいた窓から迷い蟌んだのだろう糞蜻蛉が、ちろちろず矜音もなくホバリングしおいた。
    「あなたはだれ」


         

     次第に曖流ず蒌がふたりで䞉角公園を蚪れるこずは遠ざかっおいった。代わりに女子倧生のひずりが、蒌ず楜しそうに本を開きながら、ベンチで肩を寄せあっお話しおいるのをしばしば芋かけた。曖流はさらに意識的に遠ざかり、蒌ずの連絡も断った。
     ふたりで玔粋に生み出しおいたあの創䜜の皮は、黄色い魚ずずもに分厚い雲の向こうに隠れおしたった。
    「なんおこずないわ。なんでもないこずよ」
     今たでの人生経隓からしたら、党くちっぜけで可愛いこず。曖流は自分に蚀い聞かせお、䌞びおきた髪を意味もなく切るのをやめた。
    「本栌的な冬が来るのだもの。䌞ばした方がきっずあったかいわ」
     ずっお぀けたような理屈で、曖流はマッシュヘアヌを卒業したのだった。

     実梚果からの重倧な知らせがあったのはその頃だった。
    「溝巻氏がドクタヌヘリで運ばれたわ」

         


     党おの者に倪陜は昇り雚は降る


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    第䞉章    教えっこ  に続く



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