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小説 「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 第2回 〈第䞀章 血豆色の玉 〉


    「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 


    第䞀章 血豆色の玉

    



    「今から䌚わない 溝巻みぞたきロスなのよ」
     詩人である友人、実梚果みりかからのだった。

     我楜倚の倚すぎる狭い郚屋で、ひらひらずお気に入りの黒いワンピヌスに着替えようずしお曖流の目に入ったのは、背面にくっきり付着したスカむブルヌ  たたやっおしたった。い぀付いたのか、その油絵具は也燥しお黒いワンピヌスに定着しおいた。
     無造䜜にそれらを扱っおいる曖流には、「なぜ」ず考えるのも面倒だった。躊躇うこずなく速也性の黒いアクリル絵具で眪なきスカむブルヌを隠しおみたが、塗り重ねられた郚分だけテカテカ光る異質な黒色が存圚するだけだった。
    「目立぀わ  」
     油絵具のアむボリヌブラックあたりをじっくり重ね塗りしおゆっくり也燥させおおけばよいのかもしれないが、曖流はどうにもこのワンピヌスを今すぐに着お行きたかった。特に理由はない。
     少なくずも顔に絵具が぀いおいないこずを鏡で確認しお、やっぱり䞍機嫌な顔にうんざりする。貌り付けた笑顔を䜜っおみたが気に入らない。曖昧に困った倉顔をしおみた。
    「䞀番しっくりくるわ」
     䞍自然に䞀郚がテカテカ黒く光るワンピヌスを翻しお街に出る。
     いくら塗り重ねおも消えないものは消せない。それが、消そうずする蚘憶であるならなおさらである。䞀秒前に「終わり」ず沈めおも䞀秒埌には浮䞊する。閉じ蟌めおも抌し朰しおも黒く塗り朰しおも、䜕床でもだ。むしろ圢を倉えお暎走するこずすらある。蚘憶は厄介な魔物だ。
     歩きながら、曖流は誰にも芋せられない癟面盞を展開しお、い぀か䞊塗りが真実になる時が来るのだろうか、それが忘れる、、、ずいうこずなのだろうか、ず考えおいた。
    「空が青いからっお、なんおこずないわ」
     ぐいっず口角を䞊げお、実梚果の埅぀カフェぞ軜快に足を向ける。

     糞蜻蛉が曖流の呚りをちろちろず぀きたずっおいた。
    「あなたはだれ」


         


    「それっお涌しいの」
     実梚果は曖流が銖から䞋げたファンに目配せしながら、アむスコヌヒヌのストロヌを咥える。
    「炎倩䞋を歩いおる時は正盎わからない。空気が暑すぎお、氎槜に䞀滎萜ずした色氎みたいに、この颚は曖昧よ」
    「じゃ、そのファン止ずめおよ、お店の䞭なんだから。早く泚文しおきなさい」
     曖流がアむス・カフェラテのミルクずコヌヒヌの分離地点を厩さないように、端からそっずストロヌを差し蟌んで、グラスず液䜓のその狭間に矎しくの字が描けたこずに「おお」ず感動しおいるず、
    「盛り䞊がっおるずころ悪いんだけど、早速我らが駄々っ子、溝巻氏を語りたしょう」
     埅ちきれないように実梚果がテヌブルに肘を぀いた。
    「ラゞャラゞャ、溝巻悪口倧䌚ね」
    「そうそう、悪口しか出おこないわよね」
     二人は楜しそうに笑いながらも、実梚果の目には既にうっすらず涙が浮き出おいた。
    「実梚果、目からなんか出おるわよ」
    「曖流がいけないのよ、あんなこず蚘事に曞くから  倢芋たんでしょ、溝巻氏の。あれ読んだらおんなじ気持ちだわっお泣けおきちゃっお」
     二ヶ月前に、そのキャラクタヌからは想像し埗ない壮絶な死を遂げた小説家、溝巻垌のぞむ。圌のか぀おの恋人だった二人の女性が圌を肎に盛り䞊がろうずしおいた。
    「  ごめん、実梚果。あれ嘘なの」
    「う そ」
    「うん、倢を芋たのは本圓。けど  誰の倢か忘れちゃった。でもその構図が、昔溝巻をモチヌフに描いた絵にそっくりだったのよ。だから  それっぜく創䜜したの」
    「嘘だったのかい 隙されたわ」
    「うん、ごめんね」
     実梚果は神劙ぶる曖流の䞊目遣いを睚み぀け、暫しの沈黙のあず吹き出した。
    「ぷヌっ 涙が匕っ蟌んだわ」
    「だからね、少しは埌ろめたさを感じおるから、次の蚘事は倢逃げせずにちゃんず曞いたわよ、溝巻のこず。実梚果、ただ読んでないでしょ」
    「すぐに読むわ。私も新聞瀟から远悌コラム頌たれおるんだ」
    「実梚果、真面目に曞いちゃダメよ、うふふ」


     倢の正䜓は神のみぞ知る


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    第䞀章 血豆色の玉  に続く



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