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小説 「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 第25回 〈最終章 双子 最終話〉



    「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 


    最終章    双子


    最終話


    「蒌くんはどうしおるかしら」
     䞉角公園のベンチで実梚果が癜い息を吐く。
     隣にはい぀もの野良猫を膝に乗せた曖流が倜空を芋䞊げおいる。
     その瞳は、宇宙そらを自由に泳ぐ黄色い魚を探しおいた。

    「蒌くんからの音沙汰は」
    「ん  きっず星の数ほどの分岐点で脱皮しおるのよ」
     様々な分岐点に立ち止たる床に、蒌は容かたちを倉えた薄い抜け殻を眮いおいくのだろう。
    「あたしはその幟぀もの抜け殻を回収しお焌华するのかしらね」
     曖流の目に溜たった透明な玉の䞭で、がんやり黄色い尟鰭が跳ねたのを、実梚果は芋逃さなかった。

    「それにしおも、こないだの個展は倉な瓶尜くしだったわね」
    「ふふふ、蓋のない瓶  封印するのは疲れちゃったからね」
    「瓶からいろんな音色が聎こえおくるみたいで面癜かったわ」
    「それぞれの瓶にはそれぞれの可胜性があるなっお思ったのよ」
     䞀瞬、倧きな鳥の矜音が通り過ぎた気がした。
    「じゃ、蚘憶を封印せずに、我らが溝巻氏の远悌集の『ふたり朗読䌚』をしたしょう」
     文芞誌が溝巻垌の远悌特集を組んだものを曞籍化したものだ。本人も認めおいた長身痩躯むケメンの写真入りである。
     溝巻ずの時間が去来する。二床ず䌚えない珟実が、抱きしめおおきたい蚘憶だけを浮䞊させる。
     ずるいわ   
    「ねえ実梚果、溝巻はい぀もあなたの分岐点にいた」
    「そうね、少なくずも私の分岐点には圌がいたわ。でも、圌の分岐点には  わからないわ、最期はひずりで逝っおしたったもの」
    「あたしず蒌の堎合は  」

    『どこにいおも分岐点には曖流がいるよ。おそらくずっず前の䞖界から。だから次の䞖界でも䜕凊にいおも芋぀け出せる』

     幻聎。
    「次の䞖界  か。蒌の分岐点に圌がどんな姿で立っおいおも、あたしがどんな姿になっおいおも、意固地にならないで『おかえり』っお蚀うのよ。そしおくねくね螊ったら、たた『いっおらっしゃい』っお。
     きっず次の䞖界もその次の䞖界も脱皮しながら真実の己を探る事を繰り返すんだわ。
     もしも䞇が䞀  癟䞇が䞀、あたしず蒌が本圓にふた぀に分かれた双子なら、い぀かあたしの䞭に蒌の真実を蒌自身が俯瞰できるのかもしれない」

     曖流は信じる方を遞んだ。

    「次の個展が終わったら匕っ越すわ。海  氎平線の芋える土地がいい」
    「あら、蒌くんを埅たないの」
    「埅たないわ。だっおどこにいおも圌がその気になれば、すぐに芋぀け出しおくれるもの。圌の嗅芚を䟮っおはいけないわ。それにほら、人差し指のテレパシヌがあるもの」
     曖流は実梚果に䞡人差し指をピンず立おお芋せた。


           


     実梚果は、五䞇文字に満たない原皿を膝の䞊で閉じた。
     欠けた月が照らす䞉角公園のベンチ。月の欠片を探すように、䞀月も終わる倜空をひずり、銖が痛くなるたで芋䞊げる。

    「曖流、私こそがあなたず双子。私の埌から生たれたあなたは、最初の分岐点で分かれたもうひずりの私。溝巻垌ずいう愛すべき媒䜓を通しお、こうしおひず぀になれる時もある」

    「溝巻さん、あなたを远っおこんな小説を曞いおみたわ。私を倧きな翌でずっず抱きしめおいお」

     詩人、立花実梚果は曖流の芋おいた黄色い魚が星々の隙間を優雅にすり抜けるのを、倢のような心持ちで芋䞊げる。耳元に季節にそぐわない糞蜻蛉が音もなくホバリングしおいた。
     曖流の描く、合わせ鏡のような怪物の䞖界で。



    完


    画像


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    怪物



    第䞀章 血豆色の玉  から



    マガゞン



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