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小説 「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 第21回 〈第六章 無色曖昧 〉



    「怪物 〜曖流のなんでもない日垞〜」 


    第六章    無色曖昧


    


    「ほんず  尟鰭  」
     蚀ったあず、曖流がふにゃふにゃず頜くずおれた。
    「曖流」
     地面に厩れ蟌む前に、蒌はずっさに曖流をキャッチした。
    「こんな堎面で立ちくらみなんお、ありきたりの小説みたくおダサいわ  」 
    「ダサくない」
    「バチが圓たったのよ、蒌に倧切なこずを䌝えなかったから  」
    「ちゃんず神様は芋おるんだ、バチなんお圓おないよ」
    「だっおあたしは嫉劬深いし意固地だし意地悪だし䞍機嫌だし蒌より十こも歳䞊だし、良いずこ䜕にもない」
    「たた蚀っおる。いいかい、曖流。君は人間なんだろ、だったら人間臭くお良いじゃない。それにがくは、曖流のこずバチ圓たりだなんおちっずも思っおないもの。あ、がくをこの堎所に眮き去りにしたのはバチか  わははは」
    「  蒌に噛み぀こうずしたのよ」
    「わはは、そういえば曖流っお吞血魔女っぜいよな」
    「ひどいわ  」
     蒌は曖流の目の呚りを右人差し指でゆるりずなぞるず、
    「曖流、嘘っこなしで顔色悪いよ。具合の悪い時は、ちゃんず蚺おもらうんだよ」
    「  わかった」


    「おっ、䞭里くんじゃない、久しぶりだね。元気そうじゃないか」
     通りすがりに声をかけおきたのは本屋の店長だった。
    「里䞭さん、個展、行かれなくお悪かったね」
    「いいえ、こちらこそ長期のお䌑みを頂いお、ありがずうございたした。来週から埩垰したすのでよろしくお願いしたす」
    「いやあ、久しぶりに里䞭里さずなかざずが同じ髪型で揃っおるのを芋るず愉快になるな、はっはっは」
     ず、陜気に手を振っお行っおしたった。
    「出䌚った頃、店内で螊っお怒られちゃったこず、思い出すね」
     ふたりのくすくす笑いは次第に倧きくなり、わはははず倧爆笑に倉わっおいった。
    「曖流の個展、やっおたのを知っおたのに、がくこそ行かなくおごめん」
    「いいのよ、それは自由だもの。それに  それにたた街の文化祭もあったんでしょう」
    「ああ、あったけど二床目だから芁領は把握しおたみたいだ」
    「  家庭教垫は順調」
    「順調過ぎお入孊で合栌内定した。がくの䜜文指導が良かったんだな、えっぞん」
     蒌が自慢げに顎を䞊げおみせるず、曖流は䞋から芗き蟌み、
    「蒌ったら、嚁匵っお錻の穎が膚らんでるわ」ず笑った。
    「぀たりがくは、たたバむトを探さにゃならん。薄絊の本屋に戻るかな、わはは」
     陜が傟き始めた十月の空気は、銀杏の葉を柔らかく包み、雲の隙間は淡いバヌミリオンに染たっおいる。
    「がく、本圓は曖流の本気の絵に噛み぀かれそうな気がしお行かれなかったんだ」
    「倱瀌ね、絵は吞血魔女じゃないわ」

     倕刻の色なき颚が銖筋をひゅるりず撫でる。
     スカヌフを取り出そうずトヌトに手を突っ蟌む曖流に、蒌が背を向ける。
    「ん」 
    「ん」
    「んん」
    「ん」
    「んヌ、にぶい おんぶしたる」
    「  重いわよ」
    「こないだは軜いっお蚀っおた」
     曖流がふわりず背䞭に貌り付くず、蒌はゆっくり立ち䞊がり歩き始める。曖流の頬が再び蒌の銖筋にくっ぀く。蒌の銖のお陜さたみたいな匂いが倧奜きだ。

    「がくは曖流の蚀ったこずは党郚信じるよ。曖流は本圓のこずしか蚀わない、だけど  思い蟌みが匷いんだ。だから時々真実が芋えなくなる。違うかい」
    「う  小癪こしゃくな、でも圓たり」
     曖流は自分の重みを党お預けおいる蒌の背䞭から、今床こそ剥がれたくないず思う。
    「あたし、蒌に䌝えなくおはならないの  あなたのお父さんを憎たないでっお」
    「どうしお」
    「それは  透明な海ず同化したあたしの昔の恋人が、おそらく蒌の  お父さんだからよ」
     曖流は「やっず蚀えた」ず、蒌の銖に回しおいた腕をさらに匷く巻き぀けた。
    「苊しいよ、曖流。銖が絞たる」
    「はっ、ごめん」
    「噛み぀かれる前に銖絞められちゃうな、わはは」
    「その人は、あなたやあなたのお母さんのこずを守れなかった自分を悔いお海に還ったの」
    「  今は祈ろう」
     あなたのお母さんが既に旅立っおいるこずを圌が知っおいたのかどうかは、今ずなっおは確かめる術はないけれど  ず、曖流は蚀いあぐねた。
     ふたりはしばらく沈黙したたた、秋の倕暮れの公園をゆらゆらず移動する。
     曖流は䌝えおしたった安堵感ず空虚感から、「もうどうなっおも恚たない、でも、できればずっずこのたたがいい」それだけを思っおいた。
    「曖流の恋人だったその人ず、母ががくに話しおいた父芪像は、倚分同䞀人物だ。笊合が合いすぎるもの」
     曖流の脳みそが蒌の蚀葉の行方を暡玢する。

    「蚊いお、曖流。がくの母はずっず恋する少女だったんだ。その人のこずが倧奜きで、息子のがくに憚はばかるこずもなく、その人の話ばかりしおいたんだ。その玠敵な人・・・・・・があなたの父芪なのっお」
    「氎平線  」
    「そう、氎平線なんだ。でも、どこにその人ががくの父芪である蚌拠があるんだい でも調べなければ、母の理想の・・・父芪像を信じるしかないだろ」
    「疑っおるの」
    「母はがくを育おるのに䞀生懞呜だった。がくが愛する人の子であるず信じ蟌む・・・・こずによっお、苊しい生掻も乗り越えられたはず  」
     バヌミリオンの残骞の空にコバルトブルヌが降りおくる。
    「぀たりがくの生物孊䞊の真の父芪は、やっぱりわからないっおこずかな」
     西南西の空に金星が存圚を䞻匵しおいた。


     神のみぞ知る真実は神に任せる


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    第六章 無色曖昧  に続く



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