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『マミの1980むチキュッパ団地狂隒曲』 #14

    #14  :  昭和150円のプチバカンス〜茹でタコ芪父ず赀黒いアメリカンドッグ〜


    昭和の倏は、ずにかく容赊なく暑かった。
    今のように䞀家に䞀台゚アコンなんお䞊等なものはなく、我が家のお茶の間では、銖を振るたびに「カタカタカタ  」ず䞍穏な音を立おる扇颚機が、ただ生ぬるい空気をかき混ぜおいるだけだった。
    アスファルトは蜃気楌が発生しお、セミは狂ったように鳎き喚く。
    そんなある日の午前䞭、居間で転がっおいたお父さんが、突然ガタリず起き䞊がっお蚀った。
    「マミ、プヌル行くぞ。垂民プヌルだ」
    「行くヌヌヌヌヌっ」
    私の叫び声は倩井に響いた。
    その䞀蚀で、我が家の『倏のプチバカンス』は電撃的に決定したのである。

    私はクロヌれットからお気に入りの浮き茪を匕っ匵り出すず、ただ空気も入れおいないうちからそれをしっかりず腰に巻き぀けた。
    準備䞇端、気合は十分だ。
    お父さんず䞊んで䞀歩倖に出るず、倖気はたるでオヌブントヌスタヌのようだった。
    サンダルの薄いゎム底を通しお、足の裏がゞリゞリず焌き付けられる。
    しかし、これから向かう冷たいパラダむスを思えば、そんな苊難など探怜隊長自称の私にずっおは䜕のそのだった。

    目的地の垂民プヌルに到着するず、受付の看板には昭和の奇跡ずも蚀える神々しい数字が䞊んでいた。
    【倧人 100円  子䟛 50円】
    これぞ、1980幎代が誇る最匷の公共むンフラである。
    芪子ふたりでたったの150円。
    我が家の慎たしやかな財政にもたったく響かない、非垞にありがたい料金蚭定だ。

    「じゃあ、䞊がるのは時な。あずでプヌルサむドで䌚おう」
    受付を枈たせるず、お父さんは男湯ならぬ男子曎衣宀ぞ、私は女子甚曎衣宀の叀びた暖簟をくぐった。

    䞀歩䞭に入った瞬間、私の錻腔を匷烈に突き抜けるあの独特な匂い――そう、『塩玠カルキ』の銙りである。
    このツンずした匂いを嗅いだ瞬間、「あぁ、倏が来たんだ」ず现胞レベルでテンションが跳ね䞊がる。

    圓時の小孊生女子の定番ずしお、私はすでに自宅から服の䞋にワンピヌスのスクヌル氎着を着蟌んできおいた。
    胞のボタンを倖し、䞊着をさっず脱ぎ捚おる。
    するず䞀瞬にしお、お銎染みの玺色の氎着姿が珟れる。
    この間、わずか秒。
    魔法少女の衣装チェンゞ䞊みの早業である。
    仕䞊げに、お気に入りの赀い氎泳垜を頭にピッチリず被り、髪の毛を䞀本残らず収玍すれば、戊闘準備は完党に完了だ。

    しかし、プヌルサむドぞ蟿り着くには、党人類が避けおは通れない「最初の詊緎」が埅ち受けおいた。
    通称、『消毒槜』。
    冷たい消毒氎がなみなみず泚がれた、コンクリヌトで囲たれた小さい消毒甚プヌルである。

    私は意を決しお、その冷たい関門ぞず勢いよく飛び蟌んだ。
    ザブザブず進むず、氎䜍は容赊なく子䟛の腰の高さたで達する。
    それだけでも心臓が瞮み䞊がるほど冷たいのに、さらに頭䞊からは、容赊のない冷氎シャワヌが滝のように自動で降り泚ぐのだ。

    「ひゃあぁあ ぀めたいっ 死んじゃう」
    昭和の掗瀌を党身に济び、鳥肌をこれでもかず立おながらそこを朜り抜けるず、芖界がパッず開け、目の前にキラキラず茝く青いパラダむスが広がっおいた。

    プヌルサむドで埅っおいたお父さんず無事に合流。
    しかし、お父さんはプヌルに入る気などさらさらないようで、すでにビニヌルシヌトを広げ、マむペヌスに寝そべる䜓勢に入っおいた。
    「お父さん、泳がないの」
    「おう、お父さんはここで『日焌け』を楜しむから。マミは勝手に行っおこい」

    そう蚀っお、お父さんは早くも目を閉じおしたった。
    私が䞻戊堎ずするのは、もちろん「子䟛甚プヌル」だ。
    ひょうたんの圢をした浅いプヌルや、小ぶりの滑り台。
    垂民プヌルなので芏暡は小さいが、倏䌑みの子䟛たちが氎济びをするには十分すぎる広さがある。

    さっそくプヌルに飛び蟌むず、そこはすでに芋掗い状態の倧混雑だった。右を向いおも巊を向いおも子䟛、子䟛、子䟛。
    お互いにバシャバシャず容赊なく氎を掛け合い、人ずぶ぀かりながら進んでいく。

    その喧隒の䞭で、私の野生の勘が、ある「異倉」を察知した。
    ふず目に留たった、1人の男の子。
    呚りの子䟛たちが氎鉄砲を撃ち合ったり倧隒ぎしたりしおいる䞭、その少幎だけが、露倩颚呂の打たせ湯にでも浞かっおいるかのようにプヌルの䞭でじヌっず目を閉じお埮動だにしないのだ。

      怪しい。実にあやしすぎる
    名探怜家ずしおの本胜が働き、私は氎面から目を皿のようにしお圌を芳察した。
    するず数秒埌、その男の子の䜓が「ブルルッ」ず小刻みに震えた。
    その瞬間、少幎の顔に埗も蚀われぬ『圧倒的な解攟感』ず『恍惚の衚情』が浮かぶのを、私は芋逃さなかった。
    さらに、圌の股間のあたりから、䜕やら心なしかモワモワずした枩かい陜炎のようなものが氎䞭で広がった気がした。
      やりやがったな、こや぀

    脳内の危険信号が倧音量でアラヌトを鳎らす。
    「倧倉だ 逃げろ」
    私は䞀目散に、猛スピヌドでその堎から平泳ぎずいうか必死の犬掻きで離脱した。

    そう、圌は今、広倧なプヌルずいう倧海原に向けお、己の䜓内で枩められた黄色い氎分をダむレクトにリリヌスしたのだ。
    たさに子䟛甚プヌルの『倏の隠れた颚物詩』であり『芋えないバむオテクノロゞヌの脅嚁』。
    巻き蟌たれおたたるかず、私は必死に氎を掻いおその堎を去った。

    呜からがら隣の゚リアぞず避難した私は、気を取り盎しお、子䟛たちに倧人気の「ゟりさん滑り台」の列に䞊ぶこずにした。
    ペタペタず濡れた足でじりじりず順番を埅ち、いよいよ次が私の番。
    「よし、行くぞ」ず身構えたその時だった。埌ろからやっおきた、頭半分ほど䜓栌の倧きな男の子が、私を抌しのけるようにしお無理やり前に割り蟌んできたのだ。

    「わっ」
    ドンず力任せに抌された勢いで、私はバランスを厩し、プヌルサむドのザラザラしたコンクリヌトの床で掟手に転倒しおしたった。
    「いったヌい  」
    芋るず、肘をズリッず擊りむいお、うっすらず血がにじんでいる。せっかくの楜しい気分に氎を差され、ムカ぀きが頂点に達し、蚀い返しおやろうずしたその時。

    ――ピピヌヌヌヌヌヌヌッ
    静寂を砎る、鋭いホむッスルの音がプヌル党䜓に響き枡った。
    芋䞊げるず、眩しい倪陜を背負い、赀い氎泳パンツを穿いたプヌルの監芖員のお兄さんが、たるで阿修矅か般若のような凄い圢盞で、バシャバシャず激しい氎しぶきを䞊げお飛んでくるずころだった。

    「こら ボク 今、前の女の子を力任せに抌したよね 抌したら危ないだろ ケガしたらどうするんだ 䞀番埌ろに䞊び盎しなさい」
    「ひぅっ  ごめんなさい  」
    お兄さんの凄たじい怒号に、さっきたでゞャむアン気取りで嚁匵っおいた倧きな男の子は、䞀瞬で顔を真っ赀にしお半べそになり、シュンず項垂れながら列の遥か最埌尟ぞずトボトボ䞊び盎しおいった。

    ふん、倩眰おんバツ いい気味だわ
    目の前で䞋された正矩の鉄槌に、私の心は䞀瞬にしお五月晎れのように爜快になった。

    やっず本圓の私の番が来た。
    「ヒャッホヌ」
    勢いよく滑り出す。ゟりさんの滑り台は高さわずか1メヌトル。倧人の目から芋れば超ミニサむズのアトラクションだが、圓時の私にずっおはディズニヌランド※ただ千葉にできお間もない頃だにも負けない極䞊のスリルだ。
    シュルルン、ザブヌヌヌン
    䞀瞬で滑り終わっおしたう。しかし、それがいいのだ。

    私はプヌルから䞊がるず、すぐさた氎が滎る䜓で列の最埌尟ぞダッシュ。滑っおは䞊び、滑っおは䞊び  。
    その姿は、たるでれンマむを巻かれお同じ動きを健気に延々ず繰り返す、昭和のブリキのおもちゃのようだった。
    気づけば氎面には倕方のオレンゞ色の光が反射し、圱が長く䌞びおいた。

    玄束の時になり、埅ち合わせ堎所ぞ行く、そこには䞀日䞭お日様を济び続けたお父さんが転がっおいた。
    しかし、その姿を芋た私は蚀葉を倱った。
    お父さんは、信じられないほど「党身真っ赀っか」に倉気しおいたのだ。
    誇匵抜きで、倧釜で茹で䞊がったばかりの巚倧なタラバガニ、あるいは茹でダコ状態である。

    「お父さん  それ、やばくない 真っ赀じゃん。垰ろ」
    「おう、垰るか  ひ、䞀おおおっ」
    お父さんはタオルが肌に擊れるだけで悲鳎を䞊げ、ロボットのようなギクシャクした動きで立ち䞊がった。
    私たちは這う這うの䜓でプヌルを埌にした。

    心地よい疲劎感ず、ただ髪に残る塩玠の匂いを感じながら歩く垰り道。
    私たちの前に、どうしおも抗えない『最倧の誘惑』が珟れる。
    道路の脇に䜇む、アメリカンドッグの屋台だ。

    クツクツず小気味よく音を立おる油の匂いず、甘酞っぱい゜ヌスの匂いが、倕方の涌しい颚に乗っお錻腔をダむレクトに刺激しおくる。
    プヌルの埌でお腹はペコペコ、゚ネルギヌはれロ。
    こんなの、小孊生に我慢しろずいう方が物理的に䞍可胜な話だ。
    「お父さん  アメリカンドッグ  買っお  」
    私は埗意の䞊目遣いを発動し、お父さんのシャツの裟を匕っぱっおおねだりした。
    普段は頑固で厳しいお父さんだが、プヌル垰りの劙な解攟感からか、
    「しょうがねえな、ひず぀だけだぞ。ほら」
    ず、ポケットから小銭を出しおくれた。やった倧勝利である。

    手枡された揚げたおのアメリカンドッグは、綺麗な狐色に茝いおいお、たるで宝物のようだった。
    この屋台は、゜ヌスを自分で塗るセルフスタむル。
    私は銀色の容噚に入ったハケを手に取るず、これでもかずいうくらい、たっぷりず党面に赀黒い゜ヌスを塗りたくった。
    サヌビス粟神の限界突砎、もはやアメリカンドッグがケチャップ゜ヌスの衣をもう䞀枚たずったような状態だ。

    ガブリ、ず豪快に䞀口かじる。
    倖偎はカリッず銙ばしく、䞭はホットケヌキみたいにほんのり甘くおフカフカの生地。そしお䞭心に鎮座する゜ヌセヌゞの絶劙な塩気ず、たっぷり塗った濃厚な゜ヌスの酞味が口の䞭で完璧なディスコを螊り始める。
    「おいしいね、お父さん」
    「焊っお食うな、服にこがしたらお母さんに怒られるぞ  痛おお」
    お父さんは䞀歩歩くごずに腰をさすりながら苊笑いし、私たちは䞊んで歩いた。

    口いっぱいに広がる゜ヌスず油の銙ばしい匂い。そしお、自分の髪や肌からふんわりず挂っおくる、あのツンずしたプヌルの消毒の匂い。
    その぀の匂いが混ざり合った独特な銙りは、今でも私の錻の奥に、色鮮やかな倏の蚘憶ずしお刻たれおいる。

    しかし、このプヌル倧䜜戊の「本圓の恐怖」が始たったのは、その日の倜からだった。
    家に垰るやいなや、お父さんの日焌けは本栌的に牙を剥いた。
    「痛い 冷やしおくれ 痛おおおお」
    お父さんは文字通り、垃団の䞊でのたうち回った。
    お母さんが呆れ顔で「バカねぇ、䜕時間焌いおたのよ」ず蚀いながら、冷たいおしがりや氷嚢を背䞭に圓おおいたが、翌日にはその真っ赀な肌が、今床は䞍気味な玫色ぞず倉化しおいった。

    お父さんは䞀週間ほど、服を着るのも䞀苊劎で、たるでおじいちゃんのように背䞭を䞞めお暮らす矜目になった。
    そしお、プヌルに行っおから玄䞀週間埌。
    お父さんの背䞭に、党子䟛たちが歓喜する「奇跡の瞬間」が蚪れた。

    日焌けしお死んだお父さんの背䞭の皮膚が、ペリペリず音を立おお剥がれ始め、ボロボロになっお浮き䞊がっおきたのだ

    その光景を芋た瞬間、私ず兄匟たちの目は、獲物を芋぀けた猛獣のようにギラリず茝いた。
    「お父さん 背䞭の皮、剥いおあげる」
    「いや、俺が剥く」
    「私に剥かせろヌヌヌっ」
    我が家で突劂ずしお、『お父さんの背䞭の皮剥きオリンピック』が開幕した。
    昭和の子䟛にずっお、日焌けした倧人の背䞭の皮を剥くこずほど、脳汁が出る嚯楜はそうそうない。
    私たちは我先にお父さんの背䞭を取り囲み、う぀䌏せに寝かせた。
    「おい、無理に匕っ匵るなよ 生皮は痛いからな」
    お父さんが垃団に顔を埋めながら譊告するが、私たちの耳には届かない。
    ルヌルは簡単。「いかに千切らずに、倧きな䞀枚の皮ずしお剥き進められるか」。これに尜きる。

    私はお父さんの肩甲骚のあたりに狙いを定めた。少し浮き䞊がっおいる癜い皮膚の端っこを、息を止めお芪指ず人差し指でそっず぀たむ。
    焊るな  慎重に、慎重に  
    たるで薄いセロハンテヌプを剥がすかのように、指先に党神経を集䞭させお、じわじわず䞋に向かっお匕っぱっおいく。
    ペリペリペリペリ  。
    心地よい、脳に盎接響くような音を立おお、お父さんの背䞭から広倧な皮膚が剥がれおいく。
    「おぉぉ   すごい、倧物だよこれ」
    兄効たちが固唟を飲んで芋守る。盎埄センチ、センチ  千切れずに、お父さんの背䞭に綺麗な「新しいピンクの肌」の道が出来䞊がっおいく。
    この時の達成感たるや、授業で100点を取ったずきよりも遥かに倧きかった。

    「あ、ああっ 埅っお、そこ繋がっおるから俺にちょうだい」
    「ダメ これは私の゚リア」
    剥がした皮の倧きさを競い合い、お父さんの背䞭の䞊で子䟛たちの仁矩なき戊いが繰り広げられる。ちょっずでも匷匕に匕っ匵っお「ブチッ」ず途䞭で千切れおしたったずきは、「あぁヌヌヌっ」ず党員から萜胆の悲鳎が䞊がった。
    たたに調子に乗っお、ただ剥がれる準備ができおいない黒い生皮の境界線たで䟵入しおしたい、
    「いったあああああ バカ野郎、今のは痛い」
    ずお父さんが跳ね起き、子䟛たちがクモの子を散らすようにギャハギャハ笑いながら逃げ惑うたでが、我が家の䞀連のルヌティンだった。

    すべおを剥ぎ終わったお父さんの背䞭は、ただらにピンク色になり、たるでどこかの囜の地図のようになっおいた。私たちは満足感に包たれ、お父さんは「やれやれ  」ず倧きなため息を぀きながら、ベビヌパりダヌを背䞭に叩き蟌んでもらう。

    党身を包むカルキの匂い、甘酞っぱいアメリカンドッグの味、そしお、お父さんの背䞭からペリペリず剥がれる皮の手觊り。

    あの暑くお、䞍䟿で、だけど最高に愉快だった昭和の倏。
    今思えば、お父さんの背䞭でさえも、私たちにずっおは忘れられない極䞊の゚ンタヌテむンメントだったのだ。

    #13  了
    この小説はノンフィクションです。

     
     
    平滑筋肉腫ず戊いながら 50代倫婊で倢芋るキャンピングカヌ賌入たでの道 倢に向かう途䞭の物語です。迷いながら前に進もうずする倫婊の時間もそのたた綎っおいこうず思いたす その他にもノンフィクションやフィクションの小説も曞いおいたす プロット䜜成の䞀郚に生成AIを䜿甚しおいたす

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