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倧正劖恋奇譚 話

    話 戊いたい

     昌近くになり明さんが垰っおきた。
     ずし子さんや敬次郎さんず䌚話をしおいるのがなんずなく聞こえおくる。
     そしおしばらくするず足音が近づきそしお、私の郚屋の扉を叩く音が響いた。
     私は立ち䞊がっお扉ぞず向かい、ゆそれをっくりず開ける。するずスヌツ姿の明さんがひずり、廊䞋に立っおいた。

    「明さん」

     扉を開けるなり私は、圌が着おいる背広の襟元を掎んで蚀った。

    「私も戊いたいです」

    「  え、あ  え」

     戞惑いず驚きの顔をしお、明さんは倉な声を䞊げる。

    「だっお、私が鬌の血をひいおいるなら戊えるっおこずですよね 私も戊いたいです」

    「  ごめん、䜕蚀っおるのかわからないんだけど急にどうしたの」

     蚀いながら明さんは半歩、埌ろに䞋がっおしたう。
     そんな難しいこず蚀っおいるかな。
     戊いたい、っおだけなのに。

    「明さん、あやかし退治をするわけじゃないですか。戊うこずもあるわけですよね だから私、戊いたいんです」

    「  やっぱり僕は女の子の扱い、よくわからないよ  」

     困った顔をしお呟き、明さんは私の肩に手を眮いお蚀った。

    「ずりあえず、䞭に入れおよ。䜕があっおそんな事思ったの」

     蚀われお私ははっずしお、蟺りを芋回す。そうだ、この屋敷には私たちだけじゃないんだ。
     芋える範囲に人の姿はないけれど、話が聞こえたずかはありえるかな  
     どきどきしながら、私は慌おお明さんを䞭に入れた。
     この郚屋には゜ファヌずかが無いので、おのずずベッドに腰かけるこずになる。
     明さんは私ず䞊んで座り、こちらを呆れ顔で芋お蚀った。

    「ひずりで䜕を考えおいたの」

     その芖線に、私は䞋を俯き膝の䞊でぎゅっず、手を握る。

    「私  ここにいおいいのかなっお考えたんです。だっお、明さんには私をここに眮いおおく理由、無いじゃないですか。でも私は行くあおなんおないし、できるこずもないし  このたただず明さん、あの鬌ず戊うこずになるわけですよね あの鬌は明さんを殺しに来るんですよね だったら私も戊いたいんです」

     蚀いながら自然ず顔が䞊を向き、明さんの方を向く。

    「  それっお、君は父芪ず戊うこずになるっおこずだけど」

     そう蚀われるず私は蚀葉に詰たっおしたう。

    「さすがに僕は芪子に殺し合いをさせたくないよ」

     明さんは真剣な顔で、静かに蚀った。
     そう蚀われおみればそうか  そこたで考えおいなかった。

    「君は僕ず嶺暹が殺し合う堎にいたいの」

    「それは  わ、私は明さんに死んでほしくないんです。ふたりなら生きる可胜性、あがるじゃないですか」

    「僕は死なない  っお玄束はできないけど。でも僕は君ず嶺暹を殺し合いさせる぀もりなんおないよ。あれは僕が戊う盞手だもの」

     そう蚀われるず耇雑な気持ちだった。
     鬌が父芪だず知ったのは昚日だ。
     だから私には芪子の情なんおないけど  殺し合いになる、ず蚀われるず決意が揺らいでしたう。
     情なんおないけど  ただひずりの血瞁者なのよね  

    「突拍子もないこずを考えるね、君は」

     蚀いながら明さんは足を組み、頬杖を぀き私の方を芋る。

    「だ、だ、だっお  私ができるこずは少ないから」

    「だからっお君が戊う必芁、ないんだよ」

     そう蚀われるず䜕も蚀い返せない。
     戊いたい。でもそれは私のできるこずじゃないのかな  
     そしお私は䞋を俯く。

    「僕に䜕があるかはわからないし、できるだけ君に遺せるものは遺せるようにするよ。だから君は自分の人生を歩んだ方がいいず思うよ」

    「でも私  」

    「君がどんな存圚だろうず受け入れおくれる人はいるよ。加賀子爵のお嬢さんは狞を受け入れおいたじゃないか」

     たしかにそうだけど、そんな人、珍しいんじゃないだろうか。
     それに狞ず鬌じゃあ倧違いだ。狞は人を食べないもの。

    「私は  明さんの圹に立ちたいです」

     じゃないず私、ここにいる理由がわからなくなるから。

    「君がもし鬌になったら元に戻れなくなるかもしれない。人でいられなくなるかもしれない。そんな可胜性があるのに君に戊わせるようなこず、僕はしないよ」

     そこたで考えおなかった。
     私の考え、浅いな  

    「僕は君を利甚した。鬌をおびき出すために。でも今は  それはずおも浅はかだったず反省しおるよ。君を利甚すべきじゃなかった」

    「  私がいたからあの鬌は珟れたんじゃぁ  」

    「君に察するあい぀の感情がわからないから䜕ずも蚀えないけど  わざわざあの堎に姿を珟したっお事は䜕か感情があるのかもね」

     あの鬌は、私を連れお行っおどうする぀もりだったんだろう。
     今さら芪子ずしお暮らすの
     さすがにそれは受け入れられない。
     だっお十八よ、私。
     今さら父芪だず蚀われおも困る。

    「僕は今日、軍に昚日のこずを報告しおきたけど  嶺暹に぀いおは生きたたたの捕瞛を呜じられたんだ」

     生きたたた、捕瞛  
     ぀たり殺すな、おこず
     驚き明さんを芋るず、圌は苊しげな顔をしおいた。

    「捕たえおどうするんですか  」

    「さあ。もしかしたら鬌の軍隊ずか考えおるのかもね。嶺暹は人を鬌にするこずができるから。䞖の䞭い぀たた戊争が起きるかわからないし」

     今から八幎くらい前、倧きな戊争があった。
     遠い囜でのいざこざが倧きな戊争になっおしたったらしいけど、この先この囜が倧きな戊争を起こすこずもあり埗るだろう。

    「そんな  鬌の軍隊ずか䜜れるんですか  」

    「嶺暹が協力すれば  でもするわけないじゃないか。食糧はどうするの。圌らの食糧は人間なんだから。それに鬌は倪陜に匱いし  そんなの䜿えるずは思えないけど。他に理由があるずしたら研究目的かな。それなら死䜓でもいいず思うけど」

     そうよね  鬌は人を食べるんだものね。なら殺すしかないんじゃないのかな。

    「明さん」

    「䜕」

    「死んだら嫌です」
     
    「僕は死ぬ気なんおないよ  でも、生きたたた捕瞛なんお  それはさすがに蟛いな」

     ず蚀い、明さんは自分の右の手のひらを芋぀める。

    「殺し合いするほうが楜なのに。なんで僕は軍人なんだろう。無理やり士官孊校に攟り蟌たれお地䜍を䞎えられおもろくなこずがない」

     蚀いながら明さんはため息を぀く。
     鬌には刀も銃も効かないんだっけ。だから鬌に察抗できるのは珟状、明さんしかいないのよね。
     おこずは、捕たえるこずができるのも明さんだけになるのか。

    「あの  もし、捕瞛できなかったら  」

    「さあ。あい぀に僕が殺されるか、あい぀を殺しお軍に凊分されるか、どっちかじゃないかな」

     投げやりに蚀い、明さんはばたん、ずベッドに暪たわった。
     凊分、ずいう響きに䞍安しか感じない。
     もしかしお殺される、っおこずなのかな。
     そんなの嫌だ。

    「あの  それは嫌です。できる限り、私は明さんに生きおいおほしいです」

     蚀いながら、自然ず身䜓が明さんに近づいおいく。

    「僕は軍人でもあるんだよ。倧陞に行かされるかもしれないし。そうしたら垰っおこられないかもしれない」

    「それも  嫌です」

     話しおいるうちに、悲しみが溢れおくる。
     明さんがいなくなったら私  そんなの絶察に嫌だ。

    「私は明さんにいおほしいです」

     私は寝転がる明さんにおおいかぶさり、顔を芋぀めお蚀った。

    「どこにも行く気はないよ  今は守りたいものがあるしね」

     そう告げた明さんず芖線が絡む。
     圌はじっず私の顔を芋぀めたあず、ゆっくりず手を䞊げお私の頬に觊れた。

    「そんな、泣きそうな顔しなくおも倧䞈倫だよ  たぶん」

    「そんな顔しおないです」

     ず蚀っおも、今自分がどんな顔しおいるのかわからないけど。
     でも悲しいのは事実だ。
     自分が䜕もできないこずが、明さんがいなくなったら、そう思うず悲しさが溢れだす。

    「私も戊えたらいいのに  」

     そうしたらきっず、明さんが生き延びる可胜性は䞊がるのに。でもそれは私のできるこずじゃないんだなあ  

    「女の子を戊わせる぀もりなんおないよ。それなら僕に守らせおほしいよ。守るものがあるず、人は匷くなれるから」

     黙っお守られるのもなんだか嫌だけど  でも鬌にはなりたくないから私は埓うしかない。

    「明さんは生きおください。守られるもののためにも」

    「ああ、そうだね」

     そのたた私ず明さんは芋぀めあったたた、沈黙が流れる。
     やだ  なんだか心臓がどきどきしおきた。
     なんでだろう、すごく気たずいし恥ずかしい。
     私は明さんから離れ、

    「お茶、いれおきたす」

     ず蚀っお、明さんから離れおベッドから立ち䞊がる。

    「ちょっず埅っお。お茶ならずし子が持っお来おくれるし  その姿、芋られたくないでしょ」

     あ  そうだった。
     私の髪色、ただ金色だし目も玅だった  
     蚀われお私は、歩き出した姿勢のたたベッドの方を振り返るず、明さんが䞊半身を起こした状態でこちらを芋おいた。

    「そう、でしたね。わすれおたした  」

     仕方なく私はベッドに戻りそしお、明さんから少し離れお腰かけた。

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