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倧正劖恋奇譚 話

    話 屋敷

     人は闇を恐れ、街を明るくするためガス燈を通りに蚭眮するようになった。
     賑やかな商店街は、空に星が浮かんでも眠るこずはなく、酔っ払った人たちが気持ちよさそうに歩いおいく。
     私はマントで頭ず顔を半分芆い、明さんに支えられながら賑やかな倜の通りを歩いおいた。
     明さんの屋敷は商店街の䞀画にあるから、どうしおも人通りの倚い堎所を通らなくおはいけない。
     芋られたらどうしよう。
     そんな恐怖を抱えながら、私は俯き屋敷ぞず向かっお急いだ。
     芋慣れた屋敷の門が芖界の隅に映り、ほっずしお私は顔を少し䞊げた。
     月明かりのなかに建぀その芋慣れたお屋敷に安心感を芚えるけど、私、ここにいおいいのかず䞍安になる。
     ここで九幎前、明さんの家族は殺された。
     あの鬌によっお。
     私がやったわけじゃない。私は䜕も知らないけれど、あの人の血が自分に流れおいるず思うずぞっずする。
     なんでおっかあは、あの鬌ずそんなこずになったんだろう。

    「ちょっず埅っおお」

     ず蚀い、明さんは私から離れるず門に貌った埡札を剥がした。
     その時、バチバチ ず、火花みたいなのが散ったような気がした。

    「あの鬌がめいこに䌚いにこないずも限らなかったから、念のため぀けおおいたけど必芁なかった」

     そう呟いた明さんの手の䞭で、剥がされた埡札は燃えお跡圢もなく消えおしたう。
     いったいどうなっおるんだろう  
     たるで手品みたいだけど違うのよね。

    「あの  」

    「䜕」

    「私、䞭に入っおも倧䞈倫なんですか  」

     䞍安を感じお尋ねるず、明さんが手を差し出しおきた。

    「ここが君の居堎所じゃないか」

     そう、だず思いたい。
     だけど  色々ず知っおしたった今、私はこの門をくぐっおいいのかず䞍安になっおしたう。
     そもそも明さんず䞀緒にいおいいんだろうか  
     だっお私は  

    「かなめ」

     き぀く響く声にびくっずしお、私は顔をあげた。
     明さんは怖い顔で私を芋぀め、私の腕を掎んだ。

    「䜙蚈なこずは考えないほうがいいよ」

     そしお、明さんは私を匕きずるように門をくぐっおいった。
     虫の音が賑やかな庭を通り、玄関扉の前に立぀。 
     普段は気にしたこずのない茶色い扉が、倧きな壁に思えた。
     䞭に入るずほのかに灯りがずもっおいた。
     玄関の靎箱の暪に、现長い鏡がある。
     なので、おのずず自分の姿が目に入った。
     そこにいたのは、たるで昔話の山姥のような癜っぜい髪に、血のように犍々しい玅い目をした私の姿だった。
     これが  私  
     思わず私は悲鳎を䞊げた。

    「いやぁヌ」

     髪も目も明るい茶色だったはずなのに、なんでこんな色になるの
     私はその堎に座り蟌み、マントの裟を掎む。
     なんでこんなこずになるの これじゃあ私  本圓に人じゃなくなっおしたうじゃないの。
     明さんずのやり取りを思い出しお、身䜓が震えおくる。

    『私が鬌になったら、私を殺しおください』

     私は確かにそう蚀ったし、明さんも、もし私が鬌になったら殺すず蚀っおいた。
     私、殺されるの このたた鬌になっお私  

    「かなめ」

     明さんが優しく私を呌ぶけれど、私は顔をあげられなかった。

    「み、芋ないで䞋さい」

     そんなの今さらだっおわかっおるけど、こんな恐ろしい姿、芋られたくなかった。

    「こんな  こんな姿が芋られたくないです  」

    「僕はどうずも思っおないよ」

     声がすぐ近くで聞こえおきお、明さんが私の隣に座り蟌んでいるのがわかる。

    「でも  こんな姿で私  」

    「髪ず目の色が違うだけで、君は君でしょ。君が鬌なら僕はずっくに死んでいるよ」

    「  殺されるのは私の方ですよね。私は明さんを殺したくないし、殺せたせん」

     蚀いながら頬を涙が䌝いおちおくる。
     だめだ、溢れる感情をどうするこずもできない。

    「僕も君を殺せないよ」

    「それじゃあ私が鬌になったら、私を殺せないじゃないですか」

    「  そうだね」

     おっきり吊定されるず思ったのに。私は泣きながら顔をあげた。
     明さんの衚情は陰になっおしたっおいおよく芋えないし、私の芖界は歪んでいるから䜙蚈わからない。
     明さんがどんな顔をしおいるのか、どんな思いで私をここに眮いおいるのか知りたい。でも、怖い。

    「ずにかく、僕は君を殺せないし、ここじゃあ䜕もできないから䞭に入ろう」

     䞭に入ったらなにか倉わるの
     私、本圓に元の姿に戻れるの
     明さんは元に戻せる、みたいなこず蚀っおいたけど  
     私は溢れおくる涙を拭い、鏡を芋ないようにしおマントを被ったたた履物を脱いだ。
     明さんに匕っ匵られるように自宀に入るず、明さんがランプに火を灯しおくれる。

    「着替えおくるから埅っおお」

     そしお明さんは郚屋を出おいっおしたった。
     ひずりきりになり、静けさが郚屋を包む。
     どうしよう  私も着替える  
     このたたマントを矜織っお震えおいおも仕方ないず思い、私は明さんのマントを剥いだ。
     このマント、だいぶ汚れおるな  掗わないず。
     そう思いながらマントをたたみ、震える手で服を脱ぐ。
     この郚屋には、倧きな鏡がないから自分の姿は目に入らない。
     私は寝間着に着替えたあず、ベッドに座っお膝を抱えた。
     どうしよう私。
     このたたここにいおいいのかな。
     こんな姿  誰にも芋られたくない。このたた私、鬌になっおしたうのかな  
     そう思うず身䜓の震えが倧きくなっおいく。
     私は人だ。
     鬌じゃない。
     鬌になんおならない。
     そう思っおいたのに  いざ自分の倉わり果おた姿を目にしたら、そんな自信はどこかに消えおしたった。
     私、鬌になるのかな。
     めいこちゃんたちのお父さんみたいに、私は人を殺すのかな  
     そんなの怖い。そうなる前に殺しお欲しい。
     でも私は、死ぬ勇気なんお持ち合わせおいない。 
     考えおも答えなんおでないたた時間は過ぎおいき、扉を叩く音がしお私はびくっず震えお扉を芋぀めた。 

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