
ブックホテルに惹かれた理由は、本じゃなかった【好きに還る旅①】
友達とランチの約束がある日の朝。
私はいつものように、完璧な段取りを組んでいた。
掃除機をかけ、朝食を済ませ、服を選んで、メイクをする。
何時に家を出るべきか、逆算して導き出したスケジュールを最終チェックする。
すべては、予定通りの電車に乗り遅れないため。
……異変に気づいたのは、その真っ最中だった。
あれ?呼吸が浅くなっている?
軽く息止めて必死になってるやん。
めっちゃ楽しみにしてた友とのランチやのに、なんで?
それでも身体は、どこかきゅっと縮こまっていた。
なんでだろう、とずっと思っていた。
嫌いな人に会うわけじゃない。
緊張するような場所に行くわけでもない。
ただ、好きな友達とごはんを食べに行くだけなのに。
そんなことをぼんやり考えていたら、
ふと、昔の記憶が浮かんできた。
学生の頃のこと。
私が漫画を読んでいると、友達が横から覗いてくる。
一緒に読もうよ、という感じで。
悪気はない。むしろ仲のいい、あの頃の景色。
でも私は、焦っていた。
気になるコマがあっても止まれない。
余韻を味わう間もなく、ページをめくる。
早く読まなきゃ、と焦って、内容なんて頭に入ってこない💦
その奥には、もっと暗いものがあった。
私は読むのが遅い。頭が悪いから。
そんな自己嫌悪が、じわりとあった。 だから余計に、相手のペースに合わせなきゃと緊張していたのかもしれない。
その時の身体の感覚が、
朝の支度をしている私と、 どこか似ていた。
ああ、これか!!
キュッってなるのは「嫌なこと」があるからじゃなかった。
時間に追われること。
人のペースに合わせなきゃいけないこと。
そこに「自分はちゃんとできているか」という不安が混ざった時、 私の呼吸は浅くなる。
楽しいことの中でも、急かされると身体は縮こまる。
ずっと気づかなかっただけで、 たぶん、ずっとそうだったんだと思う。
そんなことに気づいた頃、 ふと「ブックホテル」という存在を知った。
本を読むためだけのホテル。
館内に本が溢れていて、 チェックインしたらあとはただ、読む。
それだけの場所。
「ここ、絶対行きたい!」って直感があった。
行きたい、というより、 そこに行けば、息ができる気がした。
不思議だった。
本が好きだから、というだけじゃない。
旅行が好きだから、でもない。
・・・そうか〜!
ブックホテルには、
「次の予定」がない。
「早く読まなきゃ」がない。
読むのが遅くても、誰も横で待っていない。
途中でやめても、何時間かけても、いい。
私が惹かれていたのは、 本じゃなかったのかもしれない。
誰のペースにも合わせなくていい時間。
それをずっと、どこかで探していたんだと思う。
ホテルの存在を知った時、すぐに検索していた。
アクセス、所要時間、最寄り駅。
時々出かけるエリアにあった。
「わざわざ出掛けて」行く場所じゃなかった。
ふらっと、行ける。
それが、なぜか大事だった。
「よし、行くぞ」と気合いを入れなくていい。
特別な一日にしなくていい。
気が向いたら、行けばいい。
その気軽さも含めて、 私が求めていたものな気がした。
私はまだ、そのホテルに行っていない。
でも、その場所を知っているだけで、
すぅ〜っと息がしやすくなった気がする。
行きたい時に、行けばいい。
自分のペースで、過ごせばいい。
あなたにとっての「自分の速度でいられる場所」は、どこですか?
急かされず、何にも追われない。
そんな場所が、きっとどこかにあるはず。
還る場所があるから、
また、好きに浸りに出かけられる。
🌱
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深夜1時。20歳の私を責め続けた夜のこわばりを、やさしくほどく。【往復書簡|好きに還る旅 番外編】
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「好きに還る旅」というシリーズの一本です。
羽田空港での寄り道も、40年越しの待ち合わせも、
ぜんぶここに置いています。