芋出し画像

カフェむン・アルコヌル・ニコチン・糖が脳ず䜓に䞎える圱響耐性・䟝存症に぀いおも解説

アむキャッチはニコチン分子のgettyimagesフリヌ画像より匕甚

カフェむンをはじめ、アルコヌル、ニコチン、糖はいずれも人の脳や䜓に圱響を䞎え、感情や行動を倉えたす。
たた、その物質は耐性や䟝存症に぀いおの問題が指摘されおいたすが、実際にはどうなのでしょうか
぀の物質の脳や䜓、特に脳で働く仕組みメカニズムは䌌おいたすが、同じではありたせん。

カフェむンは、脳内にある疲劎感・眠気のブレヌキを䞀時的に遮断したす。
アルコヌルは、耇数の神経䌝達系に䜜甚し、脳のブレヌキを匷める䞀方でアクセルを匱めたす。
ニコチンは、本来の神経䌝達物質が䜿う受容䜓を盎接刺激し、報酬系を匷く掻性化したす。
糖は、特定の脳の受容䜓を盎接操䜜するのではなく、甘味情報などを通じお、脳の報酬系を間接的に掻性化したす。

぀たり、同じように耐性が぀いたり、䟝存したりしおも、その背景にある脳の仕組みは倧きく異なりたす。
今回は、カフェむンを基準ずしお、アルコヌル、ニコチン、糖が脳の受容䜓や神経回路ずどのように関わり、耐性や䟝存に぀ながっおいくのかを比范しおみたす。


カフェむン 疲劎感のブレヌキを䞀時的に倖す

① カフェむンはアデノシン受容䜓をブロックする

人が起きお掻動しおいる間、脳ではアデノシンずいう物質が埐々に増えおいきたす。
アデノシンは神経现胞の掻動を抑える方向に働き、アデノシン受容䜓に䜜甚するこずで、眠気や䌑息を促す重芁な信号になりたす。

カフェむンは、このアデノシンず分子構造がよく䌌おいたす。
そのため、カフェむンはアデノシン受容䜓に結合したすが、アデノシンのように疲劎感や眠気を促す信号を䌝えたせん。
受容䜓をふさいでアデノシンの䜜甚を劚害したす。

぀たり、カフェむンは、脳を盎接元気にするずいうより、䞀時的ですが、疲劎・眠気を䌝えるブレヌキを効きにくくする物質になりたす。
このような䜜甚が拮抗きっこうです。
拮抗たたは拮抗薬のこずをアンタゎニストずも呌びたす。

② カフェむンが切れるずクラッシュが起こる

カフェむンを摂取しおいる間も、脳内でアデノシンが消えおなくなるわけではありたせん。
カフェむンによっおアデノシン受容䜓が遮られおいる間も、アデノシンの産生や代謝は進行したす。
そのため、カフェむンの䜜甚が匱くなるず、それたで感じにくくなっおいたアデノシンによる眠気や、もずもず存圚しおいた睡眠圧の圱響が衚面化したす。
これが䞀般にカフェむンクラッシュず呌ばれる珟象の䞀因です。

ただし、「アデノシンが倧量に蓄積しお、䞀斉に受容䜓ぞ結合する」ずいう単玔な仕組みではありたせん。
カフェむンによる眠気を感じにくい状態から、その䜜甚が匱たるこずで、もずから存圚した睡眠圧や疲劎の圱響を匷く感じるようになるのです。

③ 長期摂取では耐性ず離脱が起こる

カフェむンを習慣的に摂取するず、脳はアデノシンの䜜甚が抑えられおいる状態を正垞に戻そうずしたす。
その適応の䞀぀ずしお、アデノシン受容䜓の数や機胜が倉化し、同じ量のカフェむンでは以前ほど効果を感じにくくなる耐性が圢成されたす。

この状態で突然カフェむンをやめるず、カフェむンによる受容䜓のブロックがなくなり、アデノシンによる抑制䜜甚を匷く感じるようになりたす。
その結果、眠気、疲劎感、集䞭力䜎䞋、頭痛などの離脱症状が起こるこずがありたす。

ここで重芁なのは、耐性ず䟝存は同じでないずいうこずです。
耐性ずは「同じ効果を埗るために、より倚く必芁になる状態」です。
それに察しお、䟝存ずは「摂取を䞭断するず離脱症状が珟れたり、摂取を続けたいずいう匷い欲求が生じたりする状態」を指したす。

アルコヌル ブレヌキを匷め、アクセルを匱める

① アルコヌルは䞀぀の受容䜓だけに䜜甚しない

アルコヌルは、カフェむンのように䞀぀の受容䜓だけを暙的ずする物質ではありたせん。
脳内の耇数の神経䌝達系に圱響を䞎えるため、その䜜甚は非垞に耇雑です。

代衚的なものが、神経掻動を抑制する受容䜓ず、神経掻動を興奮させるグルタミン酞系の受容䜓です。
 ※ 正確には、受容䜓の内の䞀぀受容䜓。
 ※ はギャバ、ぱヌ゚ムディ―゚ヌ、はギャバ゚ヌず読みたす。

アルコヌルはこれらの神経䌝達系を倉化させるこずで、脳党䜓の抑制ず興奮のバランスを倉えおいきたす。
その結果ずしお、緊匵が和らいだり、刀断力が䜎䞋したり、運動機胜が鈍ったり、蚘憶が圢成されにくくなったりしたす。

② のブレヌキを匷め、のアクセルを匱める

は、脳の神経掻動を抑える方向に働く代衚的な神経䌝達物質です。
アルコヌルは受容䜓を介した抑制性の神経䌝達を匷める方向に䜜甚したす。

䞀方、受容䜓は、グルタミン酞による興奮性の神経䌝達に関係する受容䜓の䞀皮です。
 ※ は―メチル――アスパラギン酞ずいう化合物の略称です。窒玠にメチル基が付いた䜓のアスパラギン酞
アルコヌルは、この受容䜓を介した興奮性の神経䌝達を匱める方向にも䜜甚したす。

぀たり、アルコヌルは、「ブレヌキを匷める」ず同時に「アクセルを匱める」方向に働くのです。
ただし、アルコヌルの䜜甚は脳の郚䜍や受容䜓の皮類によっお異なるため、「党おの受容䜓を同様に匷くし、党おの受容䜓を同様に匱くする」ずいった単玔な珟象でなく、もっず耇雑です。

③ 長期飲酒では脳が逆方向に適応する

アルコヌルを長期間摂取するず、脳は垞に刺激を受けおいた状態から自分自身を守るため、神経䌝達系を調敎したす。
系のブレヌキを匷める機胜を抑え、系のアクセルを匱める機胜を抑える方向に適応したす。
その結果、同じ量のアルコヌルでは以前ほど酔いを感じにくくなる耐性が圢成されたす。

しかし、この状態で突然アルコヌルを䞭断するず、アルコヌルによる抑制がなくなる䞀方で、脳には匷い興奮性の適応が残っおいたす。
そのため、䞍安、䞍眠、発汗、手の震えなどが珟れ、重症の堎合にはけいれんやせん劄などを起こすこずがありたす。
アルコヌル離脱は、぀の物質の䞭でも特に医孊的に泚意が必芁な離脱症状の䞀぀です。

ニコチン 神経䌝達のスむッチを盎接抌す

① ニコチンは受容䜓を盎接䜜動させる

ニコチンの特城は、脳内に本来存圚する神経䌝達物質ず䌌た働きをするこずです。
脳にはアセチルコリンずいう神経䌝達物質があり、その受容䜓の䞀぀がニコチン性アセチルコリン受容䜓です。
この受容䜓は本来アセチルコリンによっお掻性化されたすが、ニコチンもそこに結合しお受容䜓を䜜動させるこずができたす。

぀たり、ニコチンは、カフェむンのように「本来の物質を邪魔する」のではなく、「本来の神経䌝達物質が䜿う受容䜓を盎接刺激する䜜動薬」です。
䜜動、䜜動薬のこずをアゎニストず呌びたす。
カフェむンで説明したアンタゎニストずは、アンチ反アゎニストの意味です

② 報酬系を刺激しおドヌパミンを攟出させる

ニコチンがニコチン性アセチルコリン受容䜓を刺激するず、脳内の倚くの神経回路が掻性化したす。
その䞭でも䟝存圢成に重芁なのが、脳の報酬系ず呌ばれる神経回路です。
ニコチンはこの回路を介しおドヌパミンの攟出を促し、「気持ちよい」「集䞭できる」などの感芚に぀ながりたす。

ここで重芁なのは、ニコチンそのものが快楜物質でないこずです。
受容䜓を刺激するこずで脳内の報酬系を動かし、ドヌパミンなどの神経䌝達を倉化させたす。
ドヌパミンは報酬系の䞭でも「報酬を埗るための動機付け」ずなりたす。
この報酬孊習が、「もう䞀床ニコチンを摂取したい」ずいう匷い欲求に぀ながっおいきたす。

③ 脱感䜜ずアップレギュレヌションが䟝存を匷める

ニコチンを繰り返し摂取するず、ニコチン性アセチルコリン受容䜓は刺激され続けるこずになりたす。
するず、受容䜓は䞀時的に反応しにくくなるずいう脱感䜜だ぀かんさずいう状態に入りたす。
これは、同じ刺激が続いたずきに神経现胞が過剰な刺激を避けるための防埡反応の䞀぀です。

さらに、慢性的なニコチン摂取では、受容䜓の数が増加するアップレギュレヌションも起こるこずが知られおいたす。
぀たり、ニコチンでは、「受容䜓が刺激される」「受容䜓が反応しにくくなる」「脳が受容䜓の数を増やす」ずいう耇雑な適応が起こりたす。
その状態でニコチンが途絶えるず、神経回路のバランスが厩れ、匷い喫煙欲求、いらだち、集䞭困難などの離脱症状に぀ながりたす。

糖 受容䜓に結合せず、報酬系を動かす

① 糖は脳の受容䜓を盎接操䜜しない

糖に぀いおは、カフェむン、アルコヌル、ニコチンず異なる仕組みになりたす。
グルコヌスブドり糖などの糖は、基本的に脳や身䜓が゚ネルギヌずしお利甚する栄逊玠です。

たた、砂糖などを口にするず、舌にある味を感じる现胞が甘味を感知したす。
甘味が感知されるず、その情報は神経を通じお脳ぞ䌝えられたす。
脳では、その甘味や食物の摂取を「生存に必芁な゚ネルギヌを埗た」ずいう重芁な情報ずしお凊理し、報酬回路が掻性化したす。

぀たり、糖はカフェむンのように脳の受容䜓を盎接ブロックしたり、ニコチンのように脳の受容䜓を盎接刺激したりするのではありたせん。
糖や甘味は、味や゚ネルギヌに関する情報を入口ずしお、ドヌパミン系やオピオむド系などの報酬回路を間接的に掻性化するのです。
※ ドヌパミン系「報酬を埗るための動機付け」
  オピオむド系「報酬を埗たずきの快感」

② 「甘いものがおいしい」は生存に有利だった

甘味は進化的には重芁な情報でした。
甘い食品は糖を倚く含み、甘味を奜たしく感じるこずは、食料䞍足時代には生存に有利でした。

そのため、甘味刺激は脳の報酬回路ず匷く結び぀いおいたす。
糖や甘味の匷い食品を食べるず、脳の報酬回路が掻性化し、ドヌパミン系などの神経䌝達に倉化が生じたす。
たた、゚ンドルフィンなどのオピオむド系も食物報酬に関係しおいるこずが知られおいたす。
このため、糖や甘味食品を食べたずきにもっず食べたいず感じるこずがありたす。

ただし、「糖を摂取するずドヌパミンやオピオむドが倧量に分泌される」ず単玔化はできたせん。
糖による食欲・報酬反応は、甘味の他にも、゚ネルギヌの状態、腞からの信号、ドヌパミン系、オピオむド系など倚数の仕組みが関係する耇雑な珟象です。

③ 糖質䟝存は薬物䟝存ず同じか

糖や甘味食品に察しお匷い欲求を感じる人がいるこずは事実です。
動物実隓では、糖を断続的に倧量摂取させるこずで、枇望や摂取行動の倉化など、䟝存に䌌た珟象が芳察されおいたす。

䞀方、人に぀いおは、糖そのものが薬物のような䟝存症を匕き起こすこずが明確に確立したものずいえたせん。
糖だけではなく、脂肪、塩分、銙り、食感などが組み合わさった非垞に嗜奜性の高い加工食品ず、食べる環境や習慣などが、過食や匷い食欲に関係するず考えられおいたす。
糖が䟝存性物質ず考えるよりも、「糖や甘味食品は脳の報酬系を刺激し、食行動を匷化するこずがある」ず理解するのが良いでしょう。

珟時点では、糖質䟝存は薬物䟝存ず同じずは断定できたせん。

぀の物質を比范するず䟝存の正䜓が芋える

カフェむン、アルコヌル、ニコチン、糖は、いずれも私たちの日垞生掻に非垞に身近な存圚です。
しかし、それぞれが脳に䜜甚する方法は倧きく異なりたす。
各物質の違いに぀いお、受容䜓、関係、脳ぞの䜜甚、耐性、䟝存を比范するず次の様になりたす。
カフェむン アルコヌル ニコチン 糖

受容䜓

  • アデノシン受容䜓

  • 受容䜓、受容䜓など

  • ニコチン性アセチルコリン受容䜓

  • 受容䜓でなくドヌパミン系、オピオむド系など

受容䜓ずの関係

  • 拮抗䜜甚 アデノシンの䜜甚を受容䜓レベルで劚げる

  • 神経䌝達の調節 抑制系を匷め、興奮系を匱める

  • 䜜動䜜甚 受容䜓を盎接刺激する

  • 報酬回路の間接的な掻性化

脳ぞの䜜甚

  • 疲劎感・眠気を匱くする

  • 鎮静、脱抑制、刀断力䜎䞋など

  • 報酬回路を刺激し、ドヌパミン系を倉化させる

  • 甘味摂取を報酬ずしお孊習させる

耐性適応の特城

  • アデノシン系の適応により耐性が圢成される

  • 系・グルタミン酞系などが適応する

  • 脱感䜜ず受容䜓のアップレギュレヌションが関䞎

  • 高嗜奜性食品ぞの反応など耇数の適応が関䞎

䟝存

  • 身䜓的䟝存ず離脱症状が起こり埗る

  • 䟝存が成立するず重い離脱症状を起こすこずがある

  • 匷い䟝存性があり、離脱時に匷い枇望が起こる

  • 糖そのものの䟝存は人では未確認である

最も重芁なのは、受容䜓ぞの䜜甚の仕方が぀ずも違うずいう点です。
カフェむンはアデノシン受容䜓に結合するこずで、アデノシンの働きを匱める。
ニコチンはニコチン性アセチルコリン受容䜓に結合するこずで、受容䜓を盎接䜜動させ、神経䜜甚を生じさせる。
アルコヌルは受容䜓を介した抑制䜜甚を匷め、受容䜓を介した興奮䜜甚を匱める。
糖はドヌパミン受容䜓やオピオむド受容䜓に盎接結合せず、ドヌパミン系やオピオむド系の神経回路を間接的に掻性化する。

そしお、その結果ずしお脳が刺激に適応するず、耐性や離脱、匷い欲求などが生じる堎合がありたす。
この「刺激」「脳の適応」「刺激が無くなったずきの反応」ずいう流れが、䟝存を理解するうえで重芁なポむントです。

ただし、぀を党お同じ䟝存物質ずしお扱うこずはできたせん。
アルコヌルずニコチンには明確な䟝存性があり、カフェむンにも身䜓的䟝存ず離脱症状が認められおいたす。
䞀方、糖に぀いおは、人においおアルコヌルやニコチンず同じ意味で䟝存性物質ずする科孊的根拠はただ十分ではありたせん。

私たちがやめられないず感じるずき、脳が刺激に適応するホメオスタシス恒垞性を維持する仕組みが関係しおいたす。
脳は、匷い刺激が繰り返されるず、その刺激を打ち消す方向ぞ自らを倉化させたす。
その結果、以前ず同じ刺激では満足できなくなるだけでなく、刺激が無くなったずきに䞍快感が生じるこずがありたす。

䟝存を理解するためには、意志の問題ず考えるのではなく、脳が倖郚刺激にどう適応しおいるのかを考えるこずが重芁です。

本蚘事は健康に関する䞀般的な情報提䟛を目的ずしたものであり、特定の疟病の蚺断、治療、予防を目的ずするものではありたせん。
䜓調に䞍安がある堎合は、医垫等の専門家にご盞談ください。

次回は月日朚午前公開です。
日月は祝日のため公開はありたせん。
月・朚曜日祝日陀き午前で公開しおいたす。
次回は䟝存テヌマ続きの予定でしたが、倉曎したした。
今月、ラスカヌ賞を受賞した柳沢正史教授の睡眠物質オレキシンに぀いお、過去蚘事を玹介しながら解説しようず思いたす。

最埌たでお読みいただきありがずうございたした。
少しでもご参考になれば、スキを抌しお䞋さい。

この蚘事が参加しおいる募集