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Photo byaoi_soryu

【BL】研修医は䞀途に愛を囁く 3話

    3.盞棒


     敎圢倖科の手術は予定通りに終わるこずが倚いので、オペを終えたスタッフは倕方以降身䜓が空く。明日の準備を終えた埌は、倧きなオペに入る別スタッフの䌑憩のために蚘録や倖回りずしお割り振りされる。
     元々胞郚倖科出身の真匥は倧きなオペにも入れるし、蚘録も倖回りも問題なく動ける。䞀応敎圢倖科に垭は移動になったが、倕方は基本的に胞郚倖科の難しい蚘録に䞍慣れな埌茩指導や、倖回りの察応に圓たっおいた。

     特に心臓のオペは臚床工孊技士を呌び、教授が来たり、麻酔科も二人䜓制で十時間を超える。䞀旊心臓の動きを止めお、倧きな血管を剥離しおいき新たな人工匁膜を埋め蟌む。
     非垞に繊现な䜜業ず、倖科ずはたた違う芋慣れない特殊な噚械に、俺は緊匵の連続だった。科長には「ただお前は筋膜を匕っ匵っおくれりゃいい」ず蚀われおその通りに立っおいるのだが、䞭を芋るず倖科領域ずはたるで違う。

    「花巻、もっず匕っ匵れ」
    「はい」
    「吞匕」

     マむクロ県鏡で现かい血管を芋぀぀䞀本䞀本凊理しおいく科長の眞はい぀もの飄々ずした様子は䞀切なく、真剣そのものだ。
     俺は拳倧の心臓の呚囲を䞁寧に剥離しおいく科長の鮮やかな手技に芋惚れるず同時に、長時間の緊匵で喉の奥がカラカラになり、額から倉な汗を吹き出しおいた。
     途䞭からいきなり術野がよく芋えるようになり、これは出来る人に倖回りが倉わったのだろうかずふず芖線を䞊げるず、足台の䞊に立぀マダさんが真剣な衚情で術野にラむトをあおおいた。

    「真匥、俺の“盞棒“がぶっ壊れおきおる」

     繊现な䜜業をする䞊で噚械の䞍具合は指先の感芚ひず぀で簡単にわかっおしたう。䞀蚀も発しおいないし、科長は術野からミリも芖線をあげおいない。
     ただ、ラむトの圓たり方が倉わっただけで倖回りがマダさんだず気づいた科長ずの信頌関係に少しだけ嫉劬した。

    「そんなの知りたせんよ、私はもうリヌダヌじゃないので、物品に぀いおは矢朚さんにお䌝えください」

     もう䞀぀遠くに配眮されたラむトを匕き寄せ、ピントを合わせ぀぀雑談も亀える真匥に、噚械出しをしおいた矢朚がごめん、ず申し蚳なさそうに真匥を呌び぀けた。

    「神野先茩  すいたせん  手、倉わっおいただけたすか」
    「──矢朚さんどうしたした」

     真匥が倖回りに来たこずで安心したのか、矢朚の顔色が癜くなった。緊匵の糞が切れたのだろう。冷や汗を吹き出し、キャップが汗で倉色しおいた。呌吞も䞍芏則でマスクも汗で滲んでいる。これはたずい、ず察した真匥はすぐさた蚘録の看護垫に耳打ちした。

    「青野さん、カりンタヌにいる垫長を倧至急呌んできお。矢朚さん、ガヌれず針だけ数えお」
    「は、はい  䞊  十八枚」
    「䞋、二十二枚、トヌタル四十であっおたす。すぐに噚械から離れお。──智幞、ずりあえず噚械台よろしく、噚械出し倉わりたす」

     手早くガヌれカりントを終えた真匥はキャップを浅く被り、手掗いに消えた。

    「盎己」

     片倉がぐら぀いた噚械台を自分の方に匕き寄せ、䞀瞬だけ手をずめた。
     胞倖リヌダヌは重いオペが倚いので、リヌダヌにかかる心劎がずにかく倧きい。医者の癖も匷く、生䜓匁など期限の決たった物品や高額なものを取り扱っおいる。
     せっかく䜐久間がオペ宀の認定看護垫を取っお戻っおきたのに、圌女は『倖科しか入らない』ず蚀い匵るのだ。
     ずはいえ、逆に真匥の手が敎圢倖科から離れたこずで矢朚の心劎が䞀気に緩和されおいた。

    「すいたせん、片倉先生  手  䞋ろしたす」

     無情なこずに、噚械から離れお厩れ萜ちるように倒れた圌を、俺達はオペで手が離せないので誰䞀人手を差し䌞べるこずが出来なかった。

     患者の心臓は機械で動かしたり止めたりしおおり、バむタルは非垞に危険な状態だ。茞血も必芁で、麻酔科は血圧をギリギリのラむンたで䞋げお維持しおいる。緊匵感が挂い、皆の粟神が疲匊しおいた。
     呌ばれた垫長がすぐに入宀したものの、胞倖科の手術に぀いおは分からないず蚀う。
     手掗いを終えお戻っおきた真匥は、い぀もの手袋ず術衣を受け取り、瞬時に眞の色を倉えた。

     ──モヌドに入った時のマダさんは圧倒的に栌奜いい。その眞に射抜かれるだけで心臓が鷲掎みにされるようだ。
     たたマダさんず䞀緒に仕事ができるこずに、俺の心は倒れた矢朚に申し蚳ないず思い぀぀も高揚しおいた。

    「垫長、先に矢朚さんを䌑たせおください。あず、䜐久間さんを倖回りに出来たせんか」
    「それが  真匥君より先に圌女に盞談したのだけど、断られたのよ。赀ちゃんのいる身䜓にこの血生臭い珟堎は良くないでしょうっお。でも、倖科だっお同じじゃない  」

     俺の耳に聞きたくない蚀葉が聞こえおきた。女王は垫長たで困らせるらしい。珟堎に迷惑をかけるならば、別に認定看護垫なんお芁らないのでは、ず思っおしたう。

    「分かりたした。必芁な針糞ず噚械はあるので、ずりあえずは倧䞈倫です。申し蚳ありたせんが倖回りお願いしたす」
    「ごめんなさいね、真匥君  蚀われたものは出すから」

     垫長はPHSを鳎らし、真っ青な顔をした矢朚を車怅子に乗せ、内科に電話し぀぀郚屋から出お行った。
     䞀瞬フロアが慌ただしくなったが、幞いなこずに剥離郚分が続いたこずで、垫長が戻っおも倧きなトラブルはなく、無事にオペは終了した。




    ◇




    「疲れた  」

     なんだか、この疲劎感ず達成感はすごく久しぶりな気がする。十時間立ちっぱなしのせいで、足の裏が感芚を麻痺しおゞンゞンしおいた。蚺療郚長は埡歳五十だず蚀うのにギリギリたで手術に立ち䌚い、その埌病棟の指瀺出しに消えた。若すぎる。
     そしおリヌダヌの矢朚が倒れたこずに䞍安を隠せない智幞は手術が終わり、ICUで指瀺を出しお家族ぞICを終えた埌、䌑憩も取らずに救急宀ぞず慌おお走っお行った。
     ──それが、䞉十分前のこずだ。俺は初めお長時間立ちっぱなしのオペの過酷さを孊んだ。

    「䌑憩の取り方考えないずな  」

     空腹過ぎお血糖倀が䞋がっおいたのがあの気分䞍快の芁因だろう。冷や汗は萜ち着き、呌吞が楜になっおいた。オペの前に緊匵しおブラックコヌヒヌしか飲たなかったのが敗因だ。

    「はあ、この゜ファヌ助かるなあ  」

     男子䌑憩宀にある゜ファヌに身䜓を投げ出し足を䞊げおいるず、静かに郚屋に入っおきた现い腕に足銖のツボを思い切り抌された。

    「いっおえええ」
    「なんだ、堅祐、ただただ元気じゃん。ちゃんずリンパ流さないず、明日歩けなくなるぞ」
    「た、じゃない  神野君。あれ、もうオペ宀閉める時間」

     慌おお神野君に呌び方を戻したが、よく考えおみるず、マダさんの方が先に俺のこずを名前で呌んでいる。

    「今日はさっきの胞倖オペがラスト。みんな埌片付けしお垰ったよ。俺は匕き継ぎした噚械を党郚掗っおたから居残りしおただけ」
    「い、いたいいたい、マダさん、ギブギブ」

     職堎ではマダさんず呌ぶなず蚀われおいるが、぀い玠が出おしたった。マッサヌゞずは蚀え、ツボ抌しは本圓に痛い。

    「緊匵しおたんだな、可哀想に。智幞はドSだから、䞀回目でこんなにヘロっおいたら、研修䞉ヶ月の間に死ぬぞ」

     さらりず恐ろしい蚀葉を吐かれた。確かに、片倉智幞は飄々ずした芋た目に反しおオペが早い、綺麗、そしお嬉々ずしお結玮するで有名な男だった。
     気胞で入院しおくる若い子には「俺にたた切られたかったらタバコ吞おうが身䜓酷䜿しおもいいけどな」ず脅しをかける。しかし、そんなこずを蚀われおも、圌を敬愛する気胞持ちはリピヌタヌが圧倒的に倚い。

    「俺、乗り切れるかなあ  」
    「心臓のオペは月䞀回あるかどうか、肺は癌切陀だからオペメンバヌ空き具合のランダム、気胞は運動の倚いシヌズンかな。その合間にシャントず静脈瘀をちたちた入れる感じだよ」
    「さすがマダさん詳しい  あ、反察の足もお願いしたす」
    「お前な、調子に乗るずマッサヌゞ料金いただくぞ」

     笑いながら堅祐の巊足を抱え、同じようにツボを抌す真匥は楜しそうに笑っおいた。

    「いでででで そっちの方が痛い」
    「我慢しろ、明日も仕事あるだろう。今日は早く垰らないず。オペ宀閉めないずいけないから」

     そうだった。ここは男子䌑憩宀。俺がさっさず垰らないずマダさんはオペ宀を閉められないのだ。すっかり迷惑かけおしたったこずに、俺は慌おお身䜓を起こした。

    「すいたせん、マダさん。俺も病棟に明日の指瀺確認しおから垰りたす」
    「うん、お疲れ様」

     ぜんぜんず頭を撫でられ、俺は欲しいのは違うのに  ず心の裡で呟き、マダさんの腕を匕き寄せた。癜い前腕にちゅう、ず唇を圓おる。

    「  党く」

     苊笑した真匥はずっず぀けおいた鉄壁のマスクを倖すず同時に堅祐のマスクを無理矢理顎の䞋たで䞋げた。

    「んっ」

     真匥の赀い舌が入っおきたず思いきや。その埌に苊い塊が抌し蟌たれる。䞀旊唇を離しお確認するず、舌の䞭倮にミントキャンディが転がっおきた。これは、枩泉旅行の時にもらったや぀だ。

    「マダさん、このキャンディ  苊いから苊手です  」
    「それで目、芚めただろ。ほら、垰るぞ」

     絶察わざずだ。でも、マダさんは最初の頃ずは党然違っお、よく笑っおくれるようになった。それだけでも、俺にこころを開いおくれおいるのが分かる。

     真匥ずオペ宀前で別れた堅祐は四階の胞倖病棟ぞ足を向けた。明日のオペ確認ず、倒れた矢朚が脱氎ず過劎で䞀泊入院になったようなので、奥にある特宀ぞお芋舞いに行くこずにした。
     誰もいないだろうず思いきや、ドアを開ける前に䞭から話し声が聞こえおきた。

    あれ、科長の声じゃ──

     なんずなく入っおいいのか分からない空気だったので、俺はドアの前で䜇んだ。

    「盎己、無理させおすたん。お前の䜓調がこんなに悪いなんお知らなくお、オペバンバンぶっ蟌んじたったな」
    「いえ、俺が悪いんです。元々あのオペは䞉ヶ月以䞊前から予定で決たっおいたし、倒れたのもただの管理䞍足。䜕も、智幞のせいじゃないだろう」

     いけないず思い぀぀、二人の䌚話が気になっおいた堅祐は扉の隙間からこそっず䞭を芗いた。
     科長ず矢朚は確か同じ倧孊の出身で、医孊郚ず看護科ず道は違えど芪しい間柄だ。ずはいえ、この空気はそれだけじゃないような──

    「暫く䌑め。でかいオペはないから」
    「  でも、神野先茩が胞倖に来たら  お前は心倉わりするだろ」

     元々、矢朚は病棟から智幞に無理矢理匕き抜きされ、「医者ず関わりがあるから胞倖スタヌトの方がいいんじゃないか」ずいう安易な理由で過酷な胞倖からオペ宀看護垫ずしおの道をスタヌトした。
     真匥の埌釜ずしお、立掟な胞倖リヌダヌたで仕立お䞊げられた圌は、胞倖だけではなく、他の医者からも絶倧な信頌を集めおいる。
     䞍安に揺れる矢朚の顎を乱暎に掎み、智幞は半開きの唇を封じた。ぎくりず怯える矢朚の背䞭をさする。

    「ばヌか、俺は冗談や情けで野郎が奜きだなんお絶察に蚀わねえからな。お前が居ないず困るんだよ、“盞棒“。今床はぶっ壊れる前に必ず蚀え」
    「智幞  」

     互いの背䞭をそっず抱きしめ、恋人同士の深いキスに酔いしれる空間に、「お芋舞いに来たした」──なんお軜い気持ちで入れるわけが無い。

     看護垫が芋回りに来る時間に二人がブッキングしないよう祈り぀぀、堅祐はこっそり芗き芋しおしたったドアを閉めた。


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    珟圚過去䜜ブラッシュアップし぀぀2025.12月〜ネトコン、2026.2月〜恋愛小説投皿のためなろうずアルファポリスメむンに党力でいきたす。こちらは初期版ず掻動報告。BLは「アルファポリス」母䜓に倉曎、その他過去䜜「小説家になろう」「カクペム」楜しんでいただけるず嬉しいです🍀

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