メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byreiarrive

第11章 プライベートクレジットと担保通貨④

    第4節 永久変動利付国債とベンチマーク担保

    1 永久変動利付国債の制度的位置

    前節まで見てきたように、QE後市場では、安全担保不足を背景として、シャドー担保に大きな担保プレミアムが付与される構造が形成されていた。

    もっとも、問題は単に安全担保が不足していたことだけではない。担保市場全体の価格形成を支える明確なベンチマーク担保も存在していなかった。市場参加者は、どの担保がどの程度の担保価値を持つのかを判断する際、比較の基準となる担保を必要とするが、QE後市場では、その基準となる担保が十分に存在していなかった。

    本書が提案する永久変動利付国債は、この問題に対する制度的解決策となる。

    永久変動利付国債は、永久性、変動金利、単一回号という特性を持つことによって、担保市場のために最適化された国債として設計されている。特に重要なのは、本書が、永久変動利付国債のみを担保とするPFRレポ市場の形成を想定している点である。永久変動利付国債は、PFRレポ市場の基礎資産であり、市場全体の担保価値を評価する際の基準となる担保なのである。


    2 ベンチマーク担保とは何か

    担保市場におけるベンチマーク担保とは、市場全体の担保価格形成の基準となる担保である。

    債券市場では、国債が価格形成のベンチマークとなり、企業債などのリスク資産は、国債利回りからのスプレッドとして評価される。同様に、担保市場においても、最も安定的で流動性の高い担保が基準資産として存在し、それとの比較によって他の担保資産のヘアカット率や資金調達条件が評価されることが望ましい。

    この意味で、永久変動利付国債は二つの意味においてベンチマーク担保となりうる。

    第一に、それはヘアカット率の基準担保である。永久変動利付国債に対するヘアカット率が市場の基準となることで、他の担保資産に対してどの程度追加的なリスク調整を行うべきかが明確になる。

    第二に、それは資金調達条件の基準担保である。市場参加者は、PFRレポ市場において永久変動利付国債を保有している場合に得られる資金調達条件を基準として、他の担保資産の資金調達条件を評価することができる。

    このように、永久変動利付国債は、担保市場全体の価格形成を支える基準資産として機能するのである。


    3 シャドー担保の再価格付け

    永久変動利付国債が市場に十分供給される場合、安全担保不足によって生じていた過大な担保プレミアムは徐々に圧縮される。これは、市場参加者が、資金調達流動性を確保するために、過度にシャドー担保へ依存する必要が小さくなるためである。

    その上で、永久変動利付国債が安定的なベンチマーク担保として機能する場合、市場はそれを基準としてシャドー担保のリスクを相対評価しやすくなる。

    この場合、シャドー担保の価値は、永久変動利付国債というベンチマーク担保を基準として、そこから信用リスク、流動性リスク、価格変動リスクに応じた調整を行う形で評価されることになる。

    ここで重要なのは、永久変動利付国債がシャドー担保を排除するわけではないという点である。むしろ、永久変動利付国債は、シャドー担保に対する安定的な価格形成基準を提供する。

    その結果、市場では、信用リスク、流動性リスク、価格変動リスクに応じたヘアカット率や資金調達条件が、より安定的かつ透明な形で形成されるようになる。これは、担保市場の価格形成を安定化させる上で極めて重要である。


    4 担保市場の二層化

    永久変動利付国債がベンチマーク担保として機能する場合、担保市場は明確な二層構造を持つようになる。

    第一層は、永久変動利付国債を中心とするベンチマーク担保市場である。ここでは、最も価格安定性が高く、最も低いヘアカット率で利用可能な担保を基礎として、市場全体の資金調達流動性が支えられる。

    第二層は、シャドー担保市場である。CLO、企業向け融資、不動産関連証券などの民間リスク資産は、引き続き担保として利用される。しかし、それらは、永久変動利付国債を基準として、追加的なリスク調整を前提に価格付けされることになる。

    このように、永久変動利付国債の導入は、最も安定的な資金調達流動性の基盤をベンチマーク担保市場へ集約しつつ、シャドー担保市場をそれとは区分された市場として位置づけ直すことを意味している。


    5 担保価格体系の透明化

    担保市場において重要なのは、単に安全担保を増やすことだけではない。重要なのは、担保市場全体の価格形成を、より安定的かつ透明なものへ再構成することである。

    QE後市場では、安全担保不足を背景としてシャドー担保に過大な担保プレミアムが付与されやすく、また、ベンチマーク担保の不在によって、その評価も不安定なものとなっていた。しかし、永久変動利付国債が十分供給され、安定的なベンチマーク担保として機能する場合、市場参加者はそれを基準として他の担保資産を評価することが可能となる。その結果、担保プレミアムは適正化され、ヘアカット率や資金調達条件も、信用リスクや流動性リスクに応じて、より透明な形で形成されるようになる。

    この意味で、永久変動利付国債は、PFRレポ市場を基盤として、市場全体の担保価格体系を再基準化する中核的なベンチマーク担保となるのである。


    ◎マガジンはこちら

    この記事はnoteマネーにピックアップされました

    noteマネーのバナー
     
     
    量的緩和(QE)後の金融システムを再設計する。永久変動利付国債(PFRGBs)を核に、通貨・担保・金融政策の関係を再定義し、「担保通貨」の時代を構想する。

    あなたへのおすすめ