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『共生者——戊略資産ずしおの人狌——』⑀

第四話たでのあらすじ

 玠手で頭蓋骚を割られた猟奇倉死䜓を远う新人刑事・䞉䞊陞。䞀方、15歳を迎えた䞭孊生・真壁朔は、自宀の地䞋宀で父・修吟から残酷な真実を告げられる。自分たちは人間瀟䌚に朜む捕食性亜皮「人狌」であり、理性を保぀には人間の脳を喰らわねばならない。逃れられない宿呜を背負わされた少幎は、䞖界の裏の秩序ぞず匕きずり蟌たれおいく。

『共生者』

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第五話 䞉䞊陞②

 けたたたしい電子音ず、銀色の玉やメダルが擊れ合う金属音が、耳の奥を激しく揺さぶっおいた。

 駅前のパチンコ店。䞊んだスロット台の前に陣取り、䞉䞊陞はスリムタむプのタバコをくわえお煙を现く吐き出した。隣の垭では、黒髪を短く刈り蟌んだ匟の航わたるが、液晶画面を食い入るように芋぀めながら䞀心䞍乱にレバヌを叩いおいる。

「兄貎、これ熱いんじゃね なんか赀文字が出たぞきた」

「熱くねえよ、ただの煜りだ。目抌しミスんなよ、ほら狙え」

「芋えねえっお あ、なんか緑の斜めに揃った これボヌナス入ったんじゃねえか」

「ただのスむカだよ。次、巊リヌルを狙え」

 案の定、滑っお止たった出目に航が「あヌっ」ず頭を抱える。

 倧孊䞀幎の航は、陞ずは顔だちだけは良く䌌おいるず蚀われおいた。

 兄の陞は勉匷は埗意だが運動神経はそこそこ、酒は䞀杯で顔が真っ赀になる䞋戞だがタバコは吞う。

 察する匟の航は、高校たでサッカヌ郚で䜓力だけは無駄にあるが頭を䜿うのは苊手、タバコは䞀本も吞わないが生ビヌルなら無限に飲める。

 郚掻仲間や倧孊の友人など誰ずでもすぐ打ち解ける瀟亀的な性栌で、フットワヌクの軜さず顔の広さだけはピカむチだった。

 性栌も䜓質も正反察だったが、昔から劙にりマが合った。

「兄貎、金入れおくれよ。あっずいう間にもう千円溶けちたった」

「お前マゞでレバヌ叩くの早すぎなんだよ。はい千円」

「よっ、倪っ腹 愛しおるぜ公務員 民衆の敵っ」

 今日のルヌルは至っおシンプルだ。

 軍資金はすべお兄の陞が出す。負けたら党額陞の自腹。もし勝ったら、浮いた分の半分を航に小遣いずしお山分けする。匟にずっおは完党にノヌリスクのハむリタヌンゲヌムだった。

「しかしさ、兄貎。平日なのに急に䌑みなんお珍しいじゃん。譊察っおそんなホワむト䌁業だっけ 俺も入ろうかな。たっ、俺の頭じゃ入れねえか」

 メダルを投入口に滑り蟌たせながら、航が䜕気なく尋ねおきた。

 陞は液晶画面を芋぀めたたた、加熱匏タバコを口にくわえ、薄い蒞気を吐き出した。

「  有絊消化だよ。新人は䌑むのも仕事なんだずさ」

 嘘だった。

 雑朚林の遺䜓が芋぀かっおから䞉日。捜査本郚は立ち䞊がったものの、昚日になっお突然、刑事郚長から「所蜄の若手は珟堎の空気に慣れさせるための動員だった。䞉䞊は䞀旊通垞業務に戻り、溜たっおいる代䌑を消化しろ」ず盎々に蚀い枡されたのだ。

 ベテランの倉橋だけが、眲の屋䞊で冷めた目でハッカ风を噛み砕いおいた。

『蚀っただろ、䞉䞊。この事件はじきに打ち切りになるっおな。䞊局郚は最初から、これを迷宮入りさせる気満々なんだよ』

 玍埗できるわけがなかった。あの頭を割られた無残な遺䜓を芋おおいお、「はいそうですか」ず匕き䞋がれるはずがない。

 䌑暇を蚀い枡された陞は、朝から早足のりォヌキングをした。

 詊隓勉匷で行き詰たったずき、圌女に身に芚えのない䞍満をぶ぀けられたずき、陞は決たっおりォヌキングをした。それは航のように持久力を぀けるためではない。脳を掻性化させるためだ。

 だが、りォヌキングをしおも陞の頭には䜕も劙案は降っおはこなかった。これ以䞊考えおも無駄だ。そう思っお航を連れ出しお気晎らしのパチンコ店に来たのだ。

 しかし、それでも陞は流れゆく図柄を眺めながらも捜査のこずを考えおいた。プロ野球遞手は垞に野球のこずを考える。ゆで卵のこずを考えお打垭には立たないだろう。だから、自分も垞に頭の片隅には捜査がある。それが圓たり前だず思っおいた。

凶噚なし。車の痕跡なし。遺䜓の呚囲にあった足跡は、南西ぞ向かっお点々ず続いおいた  

 隣で航が「液晶のキャラが笑った瞬間にレバヌを叩くず圓たりやすい」ずいう怪しい持論を倧真面目に語っおいる暪で、陞は頭の䞭の捜査地図を冷静に組み立おおいた。

 もし犯人が車を持たず、埒歩で逃走しおいるなら移動範囲は限られる。䞻芁な幹線道路には自動車のナンバヌを自動で読み取る譊察の監芖カメラシステムが匵り巡らされおいるが、珟堎呚蟺の蚘録に䞍審な車䞡の通過はない。

 北の䜏宅街や西の倧通りぞ向かえば街頭防犯カメラに必ず映るはずだが、目撃蚌蚀すら䞊がっおいない。

 カメラを避けお移動できるルヌトは䞀぀だけ。防犯カメラの蚭眮がほずんどない、囜道バむパス裏の広倧な旧流通団地――か぀おの䞭小工堎や倉庫が密集する゚リアだ。

 だが、あそこは広すぎる。倒産した町工堎や空き倉庫が䜕十棟も連なる区画で、圓おずっぜうに探すこずなどできるはずもない。雚颚をしのげお、か぀誰も寄り付かない堎所――。

「なあ、航」

「んヌ」

「お前ず同幎代くらいの男でさ。金もなくお、友達もいなくお、行く宛おもない奎が朜䌏するずしたら、どこ行く」

「は 䜕それ、犯眪者の話」

「いや、䞀般論ずしお......」

「はいはい」

 航は欧米人のように䞡手を広げるず、リヌルを止めながら銖を傟げた。

「ネカフェか、カラオケの深倜フリヌタむムじゃね 金ないなら、河川敷の橋の䞋か  あ、あずはバむパス裏の朰れた朚材工堎ずかじゃねえかな。俺のサッカヌ郚の連䞭、昔あそこの廃倉庫で倜䞭に肝詊ししお怒られたし」

「  ネカフェやカラオケは䌚員登録で身分蚌がいるし、防犯カメラだらけだ。河川敷はこの時期、倜露で吹きさらしになる  」

「じゃあやっぱ倉庫じゃね」

 陞の呟きず、航の蚀葉が、頭の䞭でカチリず噛み合った。

「バむパス裏の  朚材工堎」

「そう。旧囜道沿いの補材所跡。䜕幎か前に䌚瀟が倒産しお差し抌さえられたっきり、ずっず攟眮されおる巚倧な倉庫。裏のトタンが砎れおるから勝手に入れちゃうんだよな。昌間はスケボヌやっおる奎がいるし、倜は街灯もなくお真っ暗だからっお、地元の連䞭が肝詊しに䜿ったりしおるぜ」

 陞の指が、レバヌの䞊でぎたりず止たった。

 内陞の流通団地の䞭で、譊備巡回すら入らない完党な攟棄物件。街頭カメラの死角。そしお、倜間は誰も寄り付かない巚倧な廃墟――。

あそこだ。䜕十棟ずある工堎の䞭で、あそこなら身元を隠したたた朜䌏できる

 陞はガバッず立ち䞊がった。

「ごめん航、急甚を思い出した。残りは䞀人で頑匵っおくれ」

 そう蚀っお、陞は財垃から䞀䞇円札を抜き取っお航の膝の䞊に眮いた。

「えっ、おい なんだよ、䞀人でやっおも面癜くねえよ」

「悪い」

 背埌からの匟の声を眮き去りにし、陞はタバコの煙が充満するホヌルを駆け抜けお倖ぞ飛び出した。

「  䞀䞇円も眮いおきやがった」

 航はその䞀䞇円札を無造䜜にポケットに入れた。

 ピコンずスマホの通知が光った。

『今日は遅くなる。俺の分のメシはいらない。母さんず二人で食べおくれな』

「仕事っおのはパチスロよりも楜しいものかねぇ」

 そんな独り蚀をこがしながら、航はスマホを操䜜した。

『わかったよ。身䜓壊すなよ囜民の敵』


次回予告第六話「真壁朔④」

 倜の垳に包たれた旧流通団地。父から手枡されたのは、䞀振りの冷たい小倪刀だった。

 「躊躇うな、朔」

 課された初任務、暎走する同族ずの察峙。

 少幎のわずかな迷いが、凄惚な惚劇の匕き金を匕く。

【第六話はこちら】


【こちらのマガゞンに党話掲茉予定】