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『共生者——戊略資産ずしおの人狌——』⑚

    ムフフ

    第八話たでのあらすじ

     捕食衝動に怯えながらも、恋人・明莉のいる日垞を必死に挔じ続ける真壁朔。しかし父・修吟から告げられたのは、特暩階玚に䞎えられる「調達網」ず、飢えの果おに間匕かれる「野良」ずいう人狌瀟䌚の冷酷な栌差だった。倧切な日垞を守るため、朔は暎走した同族・也を自らの手で仕留めるべく、倜の枯湟コンテナダヌドぞず向かう決意を固める。

    『共生者』

    第䞀話はこちら


    第九話 䞉䞊陞④

     自宅の六畳間に、カヌテンを閉め切った薄暗い静寂が広がっおいた。

     畳の䞊に広げられおいるのは、管内党域ず臚海郚を網矅した詳现な郜垂蚈画図ず、ネットから印刷した街頭防犯カメラの蚭眮ポむントマップだ。

     䞉䞊陞は灰皿にタバコをもみ消し、赀ペンを指先で回しながら唞り声を䞊げた。

    「兄貎ヌ、財垃借りるよ」

     䞍意に襖が開き、黒髪を短く刈り蟌んだ匟の航が顔を芗かせた。

    「あ なんでだよ」

    「昚日バむト先のロッカヌに財垃忘れちゃっおさ。取りに行く電車賃ず、今日の昌飯代がないんだよ。二千円くらい䜿っおいい」

    「  棚の䞊に眮いおある。どうせ俺は䞀週間、䞀歩も倖に出られない身だからな。無駄遣いすんなよ」

    「よっ、持぀べきものは公務員の兄だな サンキュヌ」

     航は机の䞊の革財垃を掎むず、呑気に錻歌を歌いながら玄関ぞず去っおいった。パタンずドアが閉たる音が響く。

     郚屋に残された陞は、再び机の䞊のタブレットに芖線を戻した。

     画面に衚瀺されおいるのは、今朝の地元玙の䞉面蚘事ず、譊察内郚の発生速報のログだ。

    『午前四時頃、バむパス沿いのコむンランドリヌにお、也燥機内の䜜業着䞀着ず自動販売機の氎が盗たれる被害』

     䜕の倉哲もない、ただの少額窃盗。

     だが、陞の盎感がざらりず毛矜立った。

    あの補材所の廃倉庫で譊備員を惚殺した犯人は、党身に返り血を济びおいたはずだ。血たみれの服を着替えたいず思うのは䞍自然ではない

     陞は赀ペンのキャップを倖し、ランドリヌの䜍眮に赀い䞞を぀けた。

     珟堎ずなった旧補材所から、埒歩で南東ぞ玄䞉キロ。深倜から早朝にかけおの移動距離ずしおも極めお自然だ。

     陞はそこから、犯人が次に進むべき進路を絞り蟌むため、地図䞊の防犯カメラのアむコンを䞀぀ず぀怜蚌しおいった。

    たず北の䜏宅街。街灯の数こそ少ないが、戞建おの玄関先には家庭甚防犯カメラが密集しおいる。䞍審者がうろ぀けばセンサヌラむトが䜜動しお即座に通報されるリスクが高い。西の駅前繁華街は論倖だ。二十四時間営業のコンビニや監芖カメラが隙間なく睚んでいる。東の幹線道路沿いも、ガ゜リンスタンドやファミレスの定点カメラが道路を垞時録画しおいる

     北、西、東の䞉方向は、防犯カメラの網によっお事実䞊完党に塞がれおいる。すべお赀ペンで×印を぀けた。

     時間の経過ずずもに灰皿の吞い殻が、たた䞀本増えた。

    残るルヌトは南――臚海゚リアぞ抜ける䞀本道だけだ。だが、南ぞ向かったずしおどこぞ行く 金も身分蚌もなく、顔を芋られたら終わりの男が、この街から完党に逃げ切る方法は䞀぀しかない

     陞の脳裏に、県譊のデヌタベヌスで閲芧した「䞍法出囜・密航事案の傟向」が浮かび䞊がった。

    貚物船だ。定期䟿のコンテナ船に忍び蟌んで囜倖ぞ高飛びするか、停泊䞭の䜜業船に隠れお倜明けを埅぀しかない

     陞は地図の䞊に现い盎線を匕いた。新しいタバコに火を぀ける。

     ランドリヌの裏手にある排氎路沿いの暗がり、操車堎の高架䞋、照明の萜ちた資材眮き堎の隙間。

     カメラの死角だけを針の穎を通すように繋ぎ合わせ、消去法でルヌトを蟿っおいく。

     その芋えない䞀本の線が、吞い蟌たれるように行き着く先。

     監芖カメラの網が途切れ、倜間は人の出入りが完党に途絶える、広倧な鉄の迷路――。

    「行ける堎所は  ここしかない。枯湟のコンテナダヌドだ」

     そう぀ぶやいお、陞は半分ほど残ったタバコをもみ消す。

     点ず点が、頭の䞭で完璧に繋がった。

     海からの朮颚、逃げ堎のない埠頭の突端、幟重にも積み䞊げられた巚倧な鉄の箱。あそこなら、身を朜める死角は無限にある。

    「今すぐ行かなきゃ、倜明け前にはどこかの貚物船に玛れ蟌んで逃げられる  」

     陞は匟かれたように立ち䞊がり、䞊着を矜織った。
    車のキヌを掎み、ポケットに手を突っ蟌んだ瞬間――指先が空を切った。

    「    あ」

     血の気がサッず匕いおいく。

     財垃。

     さっき、匟の航に䞞ごず枡しおしたった。

     䞭には珟金はもちろん、亀通系ICカヌドも、クレゞットカヌドも、そしお運転免蚱蚌も入っおいる。

    「嘘だろおい 免蚱がないから車も出せないし、電車にも乗れない  」

     パニックになりながら、陞は震える指でスマホを取り出し、短瞮ダむダルの䞀番䞊をタップした。

     数回のコヌル音の埌、ひどく気だるげな声がスピヌカヌから挏れおきた。

    『  もしもし。䜕の甚だ䞉䞊。俺は今、嚘ず倧事な時間を過ごしおんだが』

    「倉橋さん 頌みたす、車を出しおください 犯人の居堎所がわかりたした」

     電話の向こうで、ハッカ风を噛み砕くバリッずいう音が響いた。

    『  ああん お前、䞀週間の自宅謹慎䞭だっおこずを綺麗さっぱり忘れたのか。それに、行きたいなら自分の車か電車で行け』

    「それが  匟に財垃を䞞ごず貞しちゃっお、免蚱蚌も電車賃も䞀円もないんです」

     䞀瞬の沈黙。

     やがお、受話噚の向こうから地を這うような深い溜息が聞こえおきた。

    『  お前、マゞで絵に描いたようなバカだな』

    「すいたせん でも本圓にダツは今、枯湟のコンテナダヌドにいたす 今倜を逃したらもう二床ず捕たりたせん」

    『  ったく。せっかく嚘ず録画したプリキュア芳お、いいずころだったのによ』

     ブツリず舌打ちの音が混じり、車のキヌがゞャラリず鳎る音が受話噚越しに届いた。

    『十分で着く。衚に出お埅っおろ。――あず、車内で吐いたら次は本圓にぶっ飛ばすからな』

    「ありがずうございたす」

     電話が切れるず同時に、陞はスニヌカヌを履いお玄関を飛び出した。


    次回予告第十話「真壁朔⑥」

     海颚が吹き抜ける枯湟のコンテナダヌド。鉄の迷路の最奥で、远い詰められた也を前に朔の小倪刀が閃く。

     「動くな 譊察だ」

     暗闇の䞭で激突する刑事ず怪物、そしお譊察䞊局郚の冷酷な思惑。
     亀差した二぀の運呜に、䞖界の理䞍尜が牙を剥く。

    【第十話最終話はこちら】

    【こちらのマガゞンに党話掲茉予定】

     
     
     
    ホモサピ゚ンスが繁栄したのは「物語」のおかげらしいぞ 日垞の理䞍尜ず戊うたたに逃げるすべおの人ぞ。 7000時間むンプットした本の海からむンスピレヌションを埗お、䞍条理フィクションや青春物語を玡いでいたす。 泥沌瀟䌚人が描く「笑いず絶望の゚ンタメ」が皆さんに届きたすように

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