【原理原則】恋愛で報われる人と、利用されるだけの人の違い
「恋愛は、50:50。対等であるべき」
「尽くしすぎると、都合のいい人になる」
どっちも、よく聞く。どっちも、損をしないための知恵に見える。
与えすぎたら、なめられる。与えなかったら、嫌われる。だから、ちょうど釣り合うところを探す。自分ばかりが損をしていないか、いつもどこかで計算している。
その計算、しているほど幸せから遠ざかるよ。
人は、3種類に分かれる
人との関わり方には、3つのタイプがある。
ギバー。受け取る以上に、与えようとする人。
テイカー。与える以上に、受け取ろうとする人。
マッチャー。与えた分だけ返してもらう。釣り合いを大事にする人。

「恋愛は50:50」は、マッチャーの考え方。いちばん公平。いちばん安全に見える。
でも、思い出してみて。付き合いはじめの頃、相手が喜ぶことばかり考えていたはずだよ。実際、家族や恋人のような親しい関係では、たいていの人がギバーとして振る舞う(注1)。
それがいつのまにか、帳簿をつけはじめる。
ギバーは、いちばん上にも、いちばん下にもいる
与える人と、計算する人。得をするのはどっちなのか。
仕事の成果を調べた研究に、答えがある。エンジニアの中で、生産性がいちばん低いグループは、ほとんどがギバーだった。自分の仕事を後回しにしてまで、人を手伝っていた人たち。営業職でも、売上がいちばん低い人たちは、平均よりギバーの度合いが25%高かった(注1)。
ところが、生産性がいちばん高いエンジニアも、ギバーだった。営業職の売上トップも、ギバーだった。テイカーやマッチャーより、平均で50%多く稼いでいた。
テイカーとマッチャーは、その間に収まる。与える人だけが、いちばん損をすることもあれば、いちばん得をすることもある。

しかも、ギバーが報われるには時間がかかる。医学生を追いかけた調査では、ギバーは1年目の成績が低かった。仲間の勉強を手伝う分、自分のテストで損をしていたから。それが学年を追うごとに逆転する。最後の年には、誰よりも伸びていた(注1)。
与えることは、短距離走じゃない。マラソンなんだよ。
恋愛も同じ。付き合いたての数か月で損得を測ると、与える人はいつも負けて見える。差が出るのは、何年も一緒にいてからだよ。
分かれ目は、「なぜ与えるか」
では、上に行くギバーと、下に沈むギバーは、何が違うのか。
下に沈むギバーは、自分を犠牲にして与える。頼まれたら断れない。嫌われたくない。揉めたくない。だから与える。
上に行くギバーは、相手を喜ばせたくて与える。そのうえで、自分のことも大事にしている(注3)。
これは仕事だけの話じゃない。恋愛の研究でも、まったく同じことが起きていた。相手を喜ばせたくて何かを譲った日は、気持ちも、関係への満足度も上がる。揉めたくない、がっかりさせたくないから譲った日は、下がる(注2)。
同じ「与える」でも、中身が違う。嫌われたくないから与えるのは、自分を守るため。それは与えているんじゃない。尽くしているんだよ。
見分けるのは、かんたん。やってくれないことばかりに目がいくなら、尽くしている。やってくれたことに目がいくなら、与えている。

下に沈むギバーの、3つの罠
尽くす側に落ちていくギバーには、共通する罠が3つある(注3)。
信用しすぎること。
共感しすぎること。
臆病になりすぎること。
どれも「いい人」の顔をしている。だから、気づきにくい。

信用しすぎない。見るのは、愛想じゃなく行動
与える人は、人を信じやすい。それ自体は長所だよ。ただ、そこにつけこむ人がいる。詐欺の被害にあう割合は、ギバーのほうがテイカーの2倍高かった(注3)。
気をつけたいのは、愛想のいいテイカー。感じがよくて、話がうまくて、第一印象がいい。でも、受け取ることしか考えていない。逆に、ぶっきらぼうなのに、困ったときには必ず手を貸してくれる人もいる。感じのよさと、どれだけ与えるかは、関係がないんだよ(注3)。
だから、恋愛で見るのは行動。言ったことを守るか。こっちが困っているとき、そばにいてくれるか。店員さんのような、自分に関係のない人にどう接するか。与えたものに、「ありがとう」が返ってくるか。
相手がテイカーだとわかったら、与えるのをやめて、釣り合いを取る側に回っていい。与えた分だけ、返してもらう。そのうえで、ときどきはもう一度与えてみる。相手に、変わるチャンスを渡すために(注3)。
いい行いは、忘れない。悪い行いは、ときどき大目に見る。でも、ずっと大切にしてくれない人に、愛情を注ぎ続けなくていい。愛情は、有限だから。
与えること自体が、危ないんじゃない。誰にでも、同じように与え続けることが危ないんだよ。
共感しすぎない。見るのは、相手の気分より、その理由
交渉の実験で、恋人同士をペアにしたことがある。結果は、赤の他人のペアよりずっと悪かった。愛し合っているカップルほど、相手の顔色を見て、すぐに自分から譲る。ふたりとも満足できる方法を探す前に、話が終わってしまうから(注3)。
共感しすぎる、というのはこういうこと。相手が不機嫌そうだと、自分まで落ち着かなくなる。その気まずさを早く消したくて、「わたしが合わせるよ」と言ってしまう。相手の気分は守れても、自分の気持ちは置き去りになる。
うまくいく人は、相手の気分に合わせる前に、「どうしてそうしたいのか」を考える。
たとえば、久しぶりの休日。あなたは出かけたい。相手は「家にいたい」と言う。
共感しすぎる人は、こうなる。
「そっか、じゃあ家にいよう」
本当は出かけたかったのに、黙って合わせる。
理由を想像する人は、こう聞く。
「疲れてる? それとも、人混みがしんどい?」
「平日、残業続きだったから、とにかく寝たい」
「じゃあ午前中はゆっくりして、夕方に近所のカフェだけ行かない?」
家にいたいのは、疲れているから。理由がわかれば、ふたりとも満たされる形が見つかる。
気分に合わせるのは、我慢。理由を想像するのは、ふたりの答えを探
臆病にならない。言いたいことは、言っていい
いちばん多いのが、これかもしれない。嫌われるのが怖くて、言いたいことを飲み込む。頼まれたら断れない。
でも、黙って合わせているあいだ、相手はあなたの本音を知らないまま付き合っている。言われないことには、応えようがない。
自分の考えを伝えること。困ったときに、助けを求めること。「それはできない」と言うこと。一見わがままに見えるけど、これも相手に与えていることなんだよ。相手が、あなたを大事にするための手がかりを渡しているんだから。
50:50は、対等じゃない
最初の話に戻ろう。
恋愛の理想は、50:50じゃない。100:0。お互いが、相手のために100を出す。見返りは、0でいい。
ギブ・アンド・テイクは、相手に期待する好意。「これだけしたんだから、返してね」が、どこかに入っている。だから、帳簿がずれるたびに不満がたまる。
もちろん、人間だからね。気持ちの上では、どうしても7:3くらいになる。それでいい。相手が先、自分が後。それを忘れなければ。
100:0は、立場の話じゃないよ。与える量の話。相手の下に立つことじゃない。むしろ、お互いが与え合う関係でないと、本当の意味で対等にはなれない。
計算しながら付き合う人は、ずっと帳簿を見ている。与える人は、相手の顔を見ている。
幸せになるのは、与える側に回る人。ただし、大切にしてくれる人に、喜ばせたくて与える人だよ。
人間界の参照データ
(注1)組織心理学者アダム・グラントが、自身や他の研究者の調査をまとめた著書による。カリフォルニア州のエンジニア160名超の調査では、生産性がもっとも低い人も、もっとも高い人も、ほとんどがギバーだった。営業職では、売上がもっとも低い人はギバーの得点が平均より25%高く、売上トップのギバーはテイカーやマッチャーより年収が平均50%多かった。ベルギーの医学生600名超の調査では、ギバーは1年次の成績が低かったが、学年が進むにつれて上回り、最終学年では大きく伸びていた。また、親密な人間関係では、たいていの人がギバーとして振る舞うという調査もある。
(注2)交際中の大学生が2週間、毎日の出来事を記録した研究で、相手を喜ばせたい、親密になりたいという理由で自分を犠牲にした日は、前向きな気持ちや関係の満足度が上がり、1か月後も関係が続いていやすかった。一方、揉めごとや罪悪感を避けるために犠牲にした日は、否定的な気持ちが増え、満足度が下がり、別れやすかった。
(注3)大手コンサルティング企業のコンサルタント3,600名を1年間調べた研究で、ギバーは昇給率・昇進率などがもっとも低かった(昇給率はギバー9%、テイカー10.5%、マッチャー11.5%)。著者は、ギバーが陥りやすい罠を「信用しすぎる」「共感しすぎる」「臆病になりすぎる」の3つにまとめ、成功するギバーは他人の利益と同時に自分の利益も気にかけるとしている。愛想のよさと与える行動は別のもので、ギバーはテイカーの2倍、詐欺の被害にあいやすいという調査もある。交渉の実験では、交際中のカップルは赤の他人のペアより成果が低く、愛し合っているカップルほど自己犠牲的に振る舞っていた。テイカーへの対応としては、相手を基本的に信じながら、受け取るばかりの相手にはマッチャーとして振る舞い、ときどきギバーに戻って挽回の機会を与える「寛大なしっぺ返し」が紹介されている。
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