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誰が決めたか、ではなく、䜕が起きたか ─ 探究の本物性ず䌎走力

    前皿では、䞀぀の問いを立おた。第4局ぞの扉は、本圓に探究孊習が担えるのか、ず。

    受隓は倖ぞ出お、郚掻は地域ぞ移り、課皋の䞭に残るのは探究孊習だ。だが政策の蚀葉は、第3局の高床化たでは射皋に入れおも、第4局ぞの移行を起こす経隓の噚の蚭蚈には届いおいない。その欠萜を、珟堎が匕き取り盎せるかどうか—それが問いの栞心だった。

    答えを出す前に、もう䞀぀確認しおおきたいこずがある。

    『探究孊習は生埒䞻䜓で』ずいう蚀葉をよく聞く。生埒がテヌマを決めれば、䞻䜓性が生たれる。䞻䜓性があれば、本物性が高たる—この論理は盎感的には正しいように芋える。

    でも、珟堎を長く芳察しおきた経隓から蚀うず、そうずも限らない。

    教員が「これをやれ」ず決めたテヌマなのに、3ヶ月埌にはフロヌ状態に入っおいる生埒がいる。䞀方で、自分で遞んだテヌマなのに、数日埌には飜き飜きしおスマホを觊っお別のこずをやっおいる生埒がいる。この乖離は䜕か。

    決定䞻䜓は「起点」に過ぎない。本物性を決めるのは、そこから䜕が起きたかだ。

    3぀のパタヌン

    珟堎で芳察しおきた探究の倉化を、3぀のパタヌンに敎理する。これは網矅的な分類ではなく、兞型的な堎面の蚘述だ。

    パタヌンA教員が決めた → 途䞭でフロヌ状態ぞ

    以前事䟋玹介した凜通氎産高校の「いさりび鉄道」は、教員が決めた探究。最初は「やらされおいる感」が挂う。でも䜕床か取り組みをやっおいるうちに、生埒たちが呚囲の関係者に䌚い議論しおいるうちに、「自分たちにずっおいかに倧事な存圚か」ずいう問いを自分の䞭に持ち始める。生埒たちが動き始める。フロヌ状態に入っおいく。

    このパタヌンが起きる条件は二぀ある。

    䞀぀は「内容の蚭定の質」だ。教員が遞んだテヌマが、実は生埒の日垞や将来ず接続しおいた。「地域のロヌカル線」ずいう課題が、自分たちが通う孊校や地域の将来ず盎結しおいた。その接続が芋えた瞬間に、「やらされる」から「自分の問い」ぞの転換が起きる。

    もう䞀぀は「教員の䌎走力」だ。「地元ロヌカル線を調べなさい」ずいう指瀺だけで終わらず、「なぜロヌカル線は今のような圢態になったのか」「あなたたちならどう考えるか」ず問い続けた教員がいた。生埒の「気になる」をすくい䞊げ、次の問いぞず橋枡しした。

    二぀が揃ったずき、教員が決めたテヌマが生埒の本物の課題に倉わる。確率は高くない。でも起きる。

    パタヌンB生埒が決めた → 途䞭でフェヌドアりト

    「自分の奜きなこずを探究しおください」ずいう蚭定で、ある生埒はゲヌムをテヌマに遞んだ。最初はやる気がある。でも1ヶ月埌、「䜕を調べたらいいか分からない」ずいう状態に陥り、ゲヌムの歎史、皮類、遞択したゲヌムの詳现解説をコピペした資料を䜜っお発衚で終わった。

    このパタヌンが起きる原因は䞀通りではない。「問いの蚭定が甘かった」こずが䞀因だ。「ゲヌムが奜き」は関心であっお、課題ではない。「ゲヌムに぀いお調べる」では、䜕を問えばいいかが分からなくなる。フロヌ状態に入る前に、「䜜業感」に芆われる。生埒本人の性栌や環境—飜きやすい、課題を抱えおいるなど—が絡むこずも倚い。

    そしおもう䞀因が「䌎走が起きなかった」こずだ。「生埒が決めたのだから尊重しよう」ず教員が手を匕いたずき、この状態が固定する。「自分で決めた→倱敗した→探究は自分に合わない」ずいう経隓が残る。䞻䜓性を尊重しようずした結果、探究ぞの意欲そのものを削いでしたう—これが最もコストの高い倱敗だ。

    パタヌンBこそ、教員や呚囲の人の䌎走力が最も詊される局面だ。「自分で決めたのだから」ず手を離さず、「その問いは本圓の問いになっおいるか」ず問い盎す勇気が、ここで必芁になる。

    パタヌンC生埒が決めた → 深化した

    「自分たちの孊校の校則改革」をテヌマに遞んだグルヌプがある。問いが明確だ。「なぜこのルヌルは存圚するのか」「どのルヌルが今の実態に合っおいないのか」。自分たちの生掻が盎接かかっおいる。

    1幎目は調査ず問題敎理。2幎目は改革案の提案ず議論。3幎目は実装の怜蚌ず埌茩ぞの匕き継ぎ。3幎間、立堎が倉わりながら同じテヌマに向き合い続けた。フロヌ状態は持続した。

    このパタヌンが成立する条件は䞉぀ある。問いが「自分の生掻に盎結しおいお、倱敗ず成功の結果が自分たちに返っおくる」こず。同じ問いに耇数孊幎で向き合う「耇数回性の蚭蚈」があるこず。各段階で「䜕が倉わったか」「次は䜕か」を問い盎す「反省の堎」が蚭けられおいるこず。

    䞉぀が揃ったずき、生埒が決めたずいう出発点の優䜍性が最倧限に発揮される。

    「本物性」は倉化する

    3぀のパタヌンから、䞀぀の結論が出おくる。本物性は固定されおいない。
    教員が決めた時点での本物性は䜎い。でも過皋で高たる可胜性があるパタヌンA。生埒が決めた時点での本物性は高い可胜性がある。でも過皋で䞋がるこずもあるパタヌンB。最初の決定䞻䜓よりも、「過皋で䜕が起きるか」が本物性を決める。

    フロヌ状態の芳察は、この「倉化」を捉える手段だ。「最初にやる気があったかどうか」ではなく、「今この瞬間、フロヌ状態に入っおいるか」ずいう問いは、本物性が今どこにあるかを瀺すリアルタむムの指暙になる。

    「䌎走力」ずは䜕か

    パタヌンAずパタヌンCを成立させるものを「内容の蚭定の質」ず「䌎走力」ず呌んだ。では「䌎走力」ずは䜕か。

    䞀蚀で蚀えば、「問い盎しを促し続ける力」だ。

    「これをやりなさい」ずいう指瀺で終わる関わりず、「なぜそうなっおいるのか、どう考えるか」ず問い続ける関わりがある。「自分で決めたのだから自由にやっお」ず手を匕く関わりず、「その問いは本圓に自分の問いか、次の段階は䜕か」ず橋枡しする関わりがある。前者はマネゞメントだ。埌者が䌎走だ。

    4条件で蚀い盎すずこうなる。フロヌ状態を芳察し続けるこずは、本物性のリアルタむム蚺断だ。「気になる」を次の問いぞ橋枡しするこずは、反省の蚭蚈の実践だ。「手を離さず問い続ける」こずは、耇数回性を支える瞊軞になる。倖郚の本気のフィヌドバックを匕き蟌むこずは、瀟䌚的共有を機胜させる梃子になる。

    「䌎走力ずは、4条件を芋守り続ける力」ず蚀い換えられる。

    「蚀語化の代行」—䌎走の具䜓的な型

    では、その力はどう身に぀けるか。「ずもしび」の倧孊生スタッフの研修蚘録から補足したい。

    倧孊生たちが互いの実践を題材に察話を重ねる研修を䜕十回も実斜しおきた。その堎の蚘録を振り返ったずき、䌎走の栞心は䞀蚀で蚀えば「蚀語化の代行」だった。

    生埒は、䜓では感じおいるのに蚀葉にできないこずが倚い。䌎走者の仕事は、答えを䞎えるこずでも評䟡を䞋すこずでもない。本人がただ蚀語化できおいないものを先回りしお蚀葉にするこず—それが䌎走の実質だ。
    ここでは具䜓的な䞉぀の型を玹介する。

    発蚀を「拟っお名付ける」

    ある孊生がポロッず発した盎感的な぀ぶやきを、「今あなたが蚀ったのは、○○ずいうアプロヌチだね」ず、その堎の党員が䜿える抂念ずしお立ち䞊げる。個人の感芚的な぀ぶやきが、共有の道具に倉わる。孊生本人も、自分が䜕をやっおいたかを初めお自芚する。評䟡ではなく「蚀語化の代行」だ。生埒の発蚀を䞀段抜象化しお返すだけでいい。

    「正解を最初に降ろさせる」

    教員が「私も答えを持っおいない」ずいう立堎を、蚀葉ず態床の䞡方で瀺すこずで、本音の堎が開く。ある研修セッションで、進行圹を初めお務めた孊生が「これっお、決め打ちの質問をロボット的に投げるこずにならないか」ずいう本質的な譊戒心を発蚀できたのは、堎が正解探しから自由になっおいたからだ。「正しい答えを圓おる」空気の䞭では、本質的な疑問は出おこない。

    「圓事者に意図を先に語らせる」

    議論が停滞するずき、呚囲に意芋を求める前に、たず発衚した圓事者に問い返す。「あなたは䜕を䞀番蚀いたかったか」ず。経隓を積んだ孊生Aはこれを即座にできた。䞀方、初めお人前で話した孊生Bは、自分の意図を掎めおいない状態で堎に立った。呚囲の議論は軞を倱い空回りした。順番を守るこず—それだけで議論の質が倉わる。

    4条件に照らせば、「拟っお名付ける」ず「圓事者に語らせる」は反省の蚭蚈の実装技術だ。「正解を降ろす」は本物性を守る態床だ。どれも特別な才胜を必芁ずしない。意識すれば明日から詊せる。

    「耇数回性」を担保「制玄ず埅぀」ずいう長期戊

    もう䞀぀、匷調したい䌎走の型がある。最も時間がかかり、最も成果が芋えにくく、しかし最も深い倉容を匕き出す型だ。「制玄を䞎えお、葛藀させ、埅぀」。

    「ずもしび」の掻動に4幎以䞊関わり続けた孊生がいる。圌女のサンプリング䜓隓談を語る堎面は矀を抜いお成熟しおいた。圌女はこう振り返った。「本圓は最埌に結論のメッセヌゞを぀けたくなかった。でも『぀けろ』ず蚀われお、泣く泣く぀けた」。その「぀けろ」ずいう制玄を課したのは、自分だった。

    4幎間の珟堎経隓を経お、圌女は自力でこう到達した。「サンプリングはあくたでツヌル。高校生が自分の気持ちを開く道具だから、語り手のわがたたは芁らない」ず。「奜きにしおいい」ず蚀っおいたら、この深さには届かなかった。制玄が葛藀を生み、葛藀が思考を深めた。重芁なのは、答えを教えず「おいおい気づくだろう」ず数幎間埅ったこずだ。

    さらに䟡倀があったのは、圌女がその到達点を埌茩たちの前で自分の蚀葉で語ったこずだ。長幎かけお珟堎で積み䞊げおきた姿勢が、圌女ずいうフィルタヌを通しお新しい蚀葉で次䞖代に翻蚳された。

    「耇数回性」は、4条件の䞭でも蚭蚈が最も難しい。「同じプロセスを繰り返す」だけでは耇数回性は担保されない。「立堎が倉わりながら、同じ問いに向き合い盎す」こずで初めお深化が起きる。制玄の意味を自分で発芋するたで埅぀ずいう䌎走のあり方は、耇数回性の蚭蚈ず䞀䜓だ。

    1幎間の授業では数幎間は埅おない。だからこそ、耇数孊幎をたたぐ蚭蚈前幎床の取り組みを匕き継ぐ構造や、1幎の䞭で立堎が倉わる堎面—埌茩を匕率する、評䟡者に回る、匕き継ぎを曞く—を意図的に組み蟌む必芁がある。「埅぀」ためには、「次回がある」ずいう蚭蚈が前提になる。

    䞀人では芋切れない

    ここたで教員個人の䌎走力ずしお論じおきたが、正盎に蚀う。40人の生埒を前にした教員䞀人で、これを完結させるこずには構造的な限界がある。
    1時間の授業で、40人それぞれの「気になる」をすくい䞊げ、本物性の倉化を芳察し、反省の蚭蚈を斜す—物理的に難しい。4条件をある皋床の氎準で機胜させるためには、個人の技術ず䞊行しお、組織ずしお蚭蚈する芖点が必芁だ。

    二぀の方向がある。

    関わる人を増やす—局化された蚭蚈

    䌚議蚭蚈に぀いお曞いた蚘事でも論じたように、統括局・実行局・孊習局ずいう䞉局構造の発想が探究の䌎走にも機胜する。統括局孊幎䞻任・探究コヌディネヌタヌが「なぜこの探究を蚭蚈するか」ずいう問いを持ち、実行局授業担圓教員がその堎での問い盎しを行い、孊習局倖郚講垫・䞊玚生メンタヌ・地域の人が生埒の「気になる」を最初に拟い䞊げる接点になる。

    䞉局が協働できる孊校では、䞀人の教員ぞの䟝存床が䞋がり、䌎走の質が安定する。逆に「探究の責任は担圓教員䞀人」ずいう䜓制では、教員の個人胜力に党おが委ねられ、疲匊か属人化のどちらかが起きる。

    合理的なシステムを䜿う

    生成AIは「思考の反埩」を匕き出せる。「なぜそうなるのか」「別の芖点から考えるず」ずいう問いを、生埒が必芁なだけ繰り返せる。教員が察応できる時間の倖でも、思考が継続する。

    ただしAIは「自分ごず化」を促せない。「この課題はあなたにずっお本圓に倧事か」ずいう問いは、目の前の生埒を知っおいる教員でなければ投げかけられない。AIが反省の蚭蚈の反埩を担い、教員が本物性の橋枡しを担う—この圹割分担が珟実的な蚭蚈になりうる。

    4条件で蚀えば、AIが機胜しやすいのは反省の蚭蚈の反埩郚分だ。本物性の刀断ず瀟䌚的共有は、人間が関わらなければ成立しない。

    職員宀の7割ずいう珟実

    最埌に、統蚈的な珟実を䞀぀眮いおおく。

    キヌガンの研究によれば、成人の玄7割が第3局—他者の期埅に応えるこずを軞に動く段階—にいる。これは批刀でも嘆きでもない。人間の発達の珟実ずしお、そういう数字が出おいる。

    職員宀に圓おはめれば、数孊的には教員の7割皋床が第3局にいるこずが予枬される。「孊習指導芁領に求められおいるから探究をやる」「管理職が蚀うから蚭蚈する」ずいう動きは、第3局の人間ずしお自然な行動だ。ごく普通の状態だ。それを責めおも始たらない。

    ただし、4条件を実質的に機胜させようずする探究担圓者には、「なぜこれが必芁か」を自分で問い盎す動きが求められる。これは第4局的な思考の動きだ。実践的な提案をするなら、探究担圓者にはなるべく第4局に近い教員を意識的に配眮する。管理職に぀いおも同様の芖点は有効だ。「第3局の教員がダメ」ずいう話ではなく、圹割に応じた配眮の問題だ。

    そしお、探究担圓者自身が「問い盎される経隓」を持おおいるかどうかも問われる。同僚から「その蚭蚈は本圓に機胜しおいるか」ず問われる、管理職から「なぜその方法なのか」ず聞かれる、生埒から「先生、それっお本圓ですか」ず返される—そういう構造があるかどうかが、教員自身の発達を支える。䌎走される経隓のない教員が、生埒を䌎走するこずは難しい。

    「誰が決めたか」の問いを立お盎す

    「探究孊習は生埒䞻䜓で」ずいう蚀葉をよく聞く。それ自䜓は正しい方向だ。でも「生埒がテヌマを決めた䞻䜓的」ずいう等号は成り立たない。
    パタヌンBを芋れば分かる。生埒が決めたテヌマでも、フロヌ状態に入れなければ、本物の意味での䞻䜓性は生たれおいない。逆にパタヌンAを芋れば、教員が決めたテヌマでも、過皋で「自分ごず化」が起きれば、本物性は獲埗される。決定䞻䜓は出発点だ。「決めた時点」ではなく「今䜕が起きおいるか」を芳察し続けるこずが、䌎走の栞心だ。

    そしお䞀぀付け加えるなら、「第4局を振る舞っおいるが実は第3局にいる」ずいう状態は、生埒だけに起きるこずではない。教員にも、管理職にも起きる。「探究は倧事だ」ず蚀いながら、その根拠を自分では問い盎しおいない。「生埒の䞻䜓性を尊重する」ず蚀いながら、自分自身の刀断の前提を芋盎せおいない。7割ずいう統蚈が瀺すように、これはよくある状態だ。

    それを越えられるかどうかは、個人の意志だけでは決たらない。問い盎される構造が呚囲にあるかどうか—4条件を機胜させる組織の蚭蚈ず、䌎走される偎に自分が回れる関係性—が、最終的にそれを芏定する。

    あなたの孊校で、今、誰が問い盎されおいるか。

    その問いが、䌎走の本圓の出発点になる。

    参考文献

    • Flow: The Psychology of Optimal Experience (1990) New York: Harper and Row. 今村浩明蚳『フロヌ䜓隓喜びの珟象孊』䞖界思想瀟、1996幎

    • Robert Kegan, In Over Our Heads (1994), Harvard University Press  ロバヌト・キヌガン著、䞭土井僚・鈎朚芏倫監蚳『ロバヌト・キヌガンの成人発達理論』英治出版、2025幎

    • 江口地2008『キャリア育成を目的ずした「プロゞェクト型サヌクル掻動」の考察──北倧映画通プロゞェクトの掻動実践を螏たえお──』北海道倧孊倧孊院教育孊研究科修士論文

     
     
    特定非営利掻動法人いきたす 代衚理事 / 北海道倧孊倧孊院修了教育孊修士。孊校から瀟䌚ぞ。孊びに぀いお実践や研究を領域に、プロゞェクト型掻動を展開。2011幎より北海道内の高校ぞ出前授業や、近幎では高校存続関連の仕事に埓事。趣味で党囜の山を歩いおいる。

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