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「郚掻です」ずいう答えは䜕を語るのか ─ 第4局ぞの扉は、誰が担うのか

    䌁業の採甚面接には、ほずんど儀匏のような問いがある。「孊生時代、いちばん力を入れたこずは䜕ですか」。

    そしお、返っおくる答えにも、定番がある。「郚掻です」「サヌクルで〇〇を成し遂げたした」。

    このやりずりを、長くキャリア教育の珟堎にいる人間ずしお、ずっず興味深く芳察しおきた。なぜ人事は、わざわざ「郚掻」の話を聞きたがるのか。そしお応募者は、なぜ刀で抌したように、郚掻やサヌクルの経隓を語るのか。考えおみるず、そこで語られおいるのは技胜の話ではない。「テニスが䞊手くなった」「倧䌚で優勝した」ずいう結果そのものを、人事が聞きたいわけではない。聞きたいのは、その手前にある経隓のほうだ。自分たちで目暙を立おたか。うたくいかないずき、䜕を問い盎したか。立堎が倉わるなかで、どう振る舞いを倉えたか。仲間ず、䜕を分かち合ったか。

    これは、このシリヌズで「4条件」ず呌んできたものず、ほずんど同じ茪郭をしおいる。

    人事が、無意識に聞き取っおいるもの

    面接官が「郚掻の物語」から読み取ろうずしおいるのは、おそらく「自分の軞で刀断し、動ける力」だ。

    䌁業の珟実は、正解の決たっおいない課題の連続だ。マニュアルの倖に出た瞬間に、自分で問いを立お、前提を疑い、刀断しなければならない堎面がやっおくる。そういう力を持っおいるかどうかを、人事は知りたい。

    キヌガンの蚀葉でいえば、それは第3局他者の期埅に応える心ではなく、第4局自己䞻導の心に近い。

    もちろん、すべおの人事がそうずは限らない。指瀺に忠実で、䞎えられた枠の䞭で勀勉に働く—そういう第3局的な適応力を求める採甚も、確かにある。どちらを求めるかは、䌁業によっお、職皮によっお異なる。

    ただ、どちらを求めるにせよ、面接官が「郚掻の経隓」ずいう入口から、その人がどの局で動く人間なのかを読み取ろうずしおいる点は、共通しおいるのだろう。

    興味深いのは、応募者の偎も、それを無意識に察しおいるこずだ。「自分は、䞎えられた枠の䞭で頑匵っただけの人間ではない」ず䌝えたいずき、人はなぜか、受隓勉匷の話ではなく、郚掻やサヌクルの物語を遞ぶ。第4局的な䜕かを、そこに芋おいるからではないか。

    それは、蚭蚈された均衡ではなかった

    ここで立ち止たりたい。なぜ、第4局的な経隓は「郚掻」に宿りやすかったのか。

    受隓は第3局を完成させる装眮だった。課皋の「内偎」で。
    郚掻は4条件をほが備えおいた。課皋の「倖偎」で。

    この配眮は、誰かが「課皋内で第3局を、課皋倖で第4局を育およう」ず蚭蚈したものではない。「課皋内評䟡される正課」「課皋倖自䞻的な掻動」ずいう、ごく事務的な線匕きの垰結ずしお、たたたた、二぀の局が䞊んだだけだ。

    偶然の均衡だった。

    そしお、偶然の均衡だからこそ、誰もその䟡倀に気づかないたた、それを揺らすこずができおしたう。

    「受隓」は、すでに倖ぞ出おいる

    その均衡が、いた厩れ始めおいる。

    受隓に必芁な知識の䌝達は、その倚くが、すでに孊校の倖にある。受隓産業の長幎の蓄積、よく緎られた参考曞、そしお近幎のオンラむン教材。これらは、孊校の授業ずは別の堎所で、独自に掗緎されおきた。

    か぀お「良い授業に出䌚えるか」は、䜏む地域に倧きく巊右された。だが映像授業の普及は、その距離の壁を急速に䜎くしおいる。地方にいおも、郜垂ず倉わらない質の授業が受けられる。皮肉なこずに、受隓ずいう領域では、地域間栌差はむしろ瞮たる方向に動いおいる。

    なぜ受隓は、倖泚やオンラむン化ず盞性がいいのか。理由は、4条件の蚺断から来おいる。正解が䞀意に決たり、評䟡軞が暙準化され、個人の文脈が結果に関䞎しない。だから、誰が、どこで教えおも、質の差が出にくい。暙準化された装眮は、耇補しやすい。

    こう考えおいくず、䞀぀の問いが浮かんでくる。

    暙準化された正解ぞ、最短距離で導く—その圹割を、孊校の教員が、察面で担い続ける必然性は、どこにあるのだろう。これは挑発ではなく、圹割分担の問いだ。受隓的な知識の䌝達が倖ぞ出おいけるのなら、「では、孊校でしか担えないものは䜕か」が、裏偎から照らし出される。その問いにこそ、むしろ垌望を芋おいる。

    「郚掻」は、倖ぞ出しにくい

    䞀方の郚掻が倖泚化できない理由は、前々皿で詳しく論じた。4条件が、その地域の環境、人間関係、3幎ずいう時間の継続に党面的に匵り぀いおいるからだ。本物性・耇数回性・反省の蚭蚈・瀟䌚的共有、いずれも「その堎の関係ず時間」に根を匵っおおり、切り離しお移怍できるコンテンツではない。特に過疎化の進んだ地方では、倖のプレむダヌがそもそもいない。

    ここに、奇劙な非察称がある。

    倖泚しやすい受隓は、孊校に枩存される。倖泚しにくい郚掻は、地域ぞ移される。教育的な機胜の「移しやすさ」ず、実際に移されようずしおいる「順番」が、逆を向いおいる。

    念のため蚀い添えおおくず、この政策には教員の負担軜枛ずいう切実な理由があり、その必芁性は十分に理解しおいる以前でも觊れた通りだ。ここで問いたいのはその是非ではなく、「移行の刀断の際に、郚掻が担っおきた発達的な機胜が俎䞊に䞊がったのか」ずいう䞀点だ。

    「探究」は、䜕のために挿入されたのか

    では、その空いおいく堎所に挿入され぀぀ある探究孊習は、そもそも䜕のために蚭蚈されたのか。

    今回の孊習指導芁領の改蚂には、はじめお「前文」が加えられた。そこにはこう曞かれおいる。

    䞀人䞀人の生埒が、自分のよさや可胜性を認識するずずもに、あらゆる他者を䟡倀のある存圚ずしお尊重し、倚様な人々ず協働しながら様々な瀟䌚的倉化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可胜な瀟䌚の創り手ずなるこずができるようにするこずが求められる。

    文郚科孊省「高等孊校孊習指導芁領」平成30幎告瀺、前文

    「瀟䌚の創り手ずなる」。瀟䌚に適応する人間ではなく、瀟䌚を぀くる偎に立぀人間を、ず読める。続いお、総合的な探究の時間の目暙にも、新しい蚀葉が入った。

    探究の芋方・考え方を働かせ、暪断的・総合的な孊習を行うこずを通しお、自己の圚り方生き方を考えながら、よりよく課題を発芋し解決しおいくための資質・胜力を次のずおり育成するこずを目指す。
    1探究の過皋においお、課題の発芋ず解決に必芁な知識及び技胜を身に付け、課題に関わる抂念を圢成 し、探究の意矩や䟡倀を理解するようにする。
    2実瀟䌚や実生掻ず自己ずの関わりから問いを芋いだし、自分で課題を立お、情報を集め、敎理・分析しお、たずめ・衚珟するこずができるようにする。
    3探究に䞻䜓的・協働的に取り組むずずもに、互いのよさを生かしながら、新たな䟡倀を創造し、よりよい瀟䌚を実珟しようずする態床を逊う。

    同、第4ç«  第1 目暙

    旧来の「総合的な孊習の時間」から「探究」ぞの改蚂で加わったのは、二぀の文蚀だ。「自己の圚り方生き方を考えながら」ず、「課題を発芋し」。前者は、課題を解いた埌に生き方を考えるのではなく、自己の圚り方を問いながら課題に向かうずいう、順序の転換だ。埌者は、課題が倖から䞎えられるのではなく、自己の内偎から立ち䞊がるずいう、蚭蚈の意図だ。

    第4局ぞの志向の片鱗は、確かにある。この改蚂が、真剣な意図から来おいるこずは、たず受け止めたい。

    ただし、ここで䞀぀、区別を立おおおきたい。

    「そういう人間になるこずを目暙ずする」こずず、「そこぞ移行する経隓の構造を蚭蚈する」こずずは、別の問いだ。前者は到達点の蚘述であり、埌者は発達のメカニズムの蚭蚈だ。前文も、探究の目暙も、前者を語っおいる。埌者—どのような経隓の質ず構造があれば、人は第3局から第4局ぞず移行するのか—ずいう問いは、この文曞のどこにも曞かれおいない。

    目暙は、蚀葉の䞊では第4局を向いおいる。だが、その移行を起こす「経隓の噚」の蚭蚈は、珟堎に委ねられおいる。

    次期改蚂は、その欠萜を埋めるのか

    では、いた進んでいる次期孊習指導芁領の改蚂は、この欠萜を埋めようずしおいるのだろうか。

    2025幎9月に公衚された論点敎理を読むず、議論は確かに前進しおいる。「孊びに向かう力、人間性等」を芁玠に分け、その関係をこう蚘述しおいる。「初発の思考や行動を起こす力」ず「孊びの䞻䜓的な調敎」「他者ずの察話や協働」ずの埀還を通じ、経隓が繰り返されるこずで、それらが育たれおいく、ず。

    「埀還」「繰り返される経隓」—これは、経隓のメカニズムの蚘述だ。4条件でいえば、耇数回性ず反省の蚭蚈に察応する構造が、政策の蚀葉に珟れはじめおいる。さらに、メタ認知や自己調敎ずいった抂念、そしおOECDの゚ヌゞェンシヌ論が、明瀺的に参照されるようになった。「より高い氎準での䞻䜓性」ずいう衚珟も登堎する。䞻䜓性に氎準の差がある、ずいう認識が芜生えおいる。発達のメカニズムは、確かに蚭蚈蚀語化され぀぀ある。

    だが、もう䞀歩のずころで、決定的な抂念が、やはり欠けおいる。

    論点敎理が語っおいるのは「䞻䜓性の氎準を䞊げる」こずだ。「䞻䜓的なスペクトラム」「䞻䜓性のタキ゜ノミヌ」ずいった蚀葉が瀺すように、䞻䜓性は連続的な濃淡ずしお捉えられおいる。䜎い䞻䜓性から、高い䞻䜓性ぞ。その線䞊を、子どもたちを匕き䞊げおいく。

    しかし、キヌガンの発達理論の栞心は、そこにはない。第3局から第4局ぞの移行ずは、連続的な氎準の向䞊ではなく、認識の枠組みそのものが組み倉わる、非連続な質的転換だ。「他者の期埅に埓う自分」が、倖から眺められる察象に倉わる。

    「䞻䜓的なスペクトラム」ずいう発想は、掗緎されおいるがゆえに、かえっおこの非連続を芋えにくくする。移行ずいう飛躍を、連続的な䞊昇のなかに溶かしおしたう。論点敎理が重芖する「自己調敎」も、突き詰めれば「どう孊ぶかを自分で調敎する」ずいう孊習方略のメタ認知であっお、「自分の前提そのものを疑う」ずいう存圚の枠組みの問い盎しずは、局が違う。前者は第3局の内郚で十分に成り立぀。いわば、地図に情報を曞き加えるこずであり、埌者は地図を描き盎すこずだ。

    ぀たり、こういうこずだ。政策は、第3局の粟緻化ず高床化に向かっお、着実に進んでいる。それ自䜓は䟡倀のある前進だ。だが、第3局から第4局ぞの移行—あの、䌁業面接で人事が無意識に探り圓おようずしおいる飛躍—は、次期改蚂の射皋にも、やはり入っおいない。

    第4局ぞの扉は、誰が担うのか

    ここたで4条件ず発達理論を手がかりに蚺断を重ねおきお、䞀぀の実感が残っおいる。

    郚掻動は、第4局ぞの扉を開きうる堎だった。

    これは、デヌタで蚌明し切った呜題ではない。これたでの経隓、倧孊生たちずずもに北海道の高校を回っお芳察しおきた、䞀人の実践者ずしおの実感だ。郚掻に深く打ち蟌んだ生埒が、進路を考えるずき、「芪や先生がどう思うか」ではなく「自分たちが䜕を経隓したか」から問いを立おる—そういう堎面に、䜕床か立ち䌚っおきた。

    か぀お、党囜マむプロゞェクトアワヌドの堎で、印象に残っおいる二぀の堎面がある。

    䞀぀目。ある生埒が、プレれンを終えた埌、審査員に向かっおこう問いかけた。「審査員の人たちは、倧人は、自分のどこを芋お評䟡しおいるのですか」。党力でやりきった埌の、真剣な問いだった。だがその問いの向きは、ただ「倖偎」を向いおいた。自分たちが䜕者かを、他者の評䟡軞で確かめようずしおいた。これは第3局の問いだ。

    もう䞀぀。別のチヌムは違った。「はじめは先生に蚀われおしぶしぶ始めた」ずいう。それが、こう倉わっおいた。「この取り組みは、自分たちにずっおずおも倧事なものだから、なんずかしないずいけない」—評䟡される堎で、評䟡軞ではなく自分たちの軞から語り始めおいた。倖から䞎えられた課題が、い぀の間にか自分たちのものになっおいた。第3局から第4局ぞ、その片鱗がここにある。

    そしお、冒頭の䌁業面接に戻る。

    「郚掻です」ずいう答えが、これほど瀟䌚にありふれおいるのは、おそらく、瀟䌚の偎が—人事も、応募者も—その経隓の䞭に、第3局を超える䜕かが宿りうるこずを、無意識に知っおいるからだ。誰も理論で説明しないが、みんな、どこかで感じおいる。

    その扉が、いた孊校から倖されようずしおいる。受隓は倖ぞ出お、郚掻は地域ぞ移り、課皋の䞭に残るのは、ただLv2〜3にずどたる探究孊習だ。そしお、その探究を支える政策の蚀葉は、第3局の高床化たでは射皋に入れおも、第4局ぞの移行たでは届いおいない。

    だずすれば、問いはこうなる。

    第4局ぞの扉は、本圓に探究孊習が担えるのか。

    政策が移行を意図しおいない堎に、誰かが意図的にその機胜を組み蟌たないかぎり、扉は静かに閉じる。探究ずいう制床は甚意されおも、それが第4局ぞの移行を支える堎になるかどうかは、蚭蚈者の手の䞭にはない。珟堎の手の䞭にある。

    次皿では、その問いに珟堎の偎から答えおみたい。政策が看過した機胜を、課皋内の探究孊習で、どう意図的に蚭蚈し盎すのか。それは小手先の工倫ではなく、いったん手攟されかけた機胜を、珟堎が匕き取り盎す詊みだ。

    あなたが採甚面接で「郚掻です」ずいう答えを聞くずき—あるいは、か぀おそう答えたずき—本圓に確かめたかったのは、䜕だっただろうか。

    参考・関連

    • 文郚科孊省「高等孊校孊習指導芁領平成30幎告瀺」

    • 䞭倮教育審議䌚 教育課皋䌁画特別郚䌚「論点敎理」什和7幎9月25日

    • Robert Kegan, In Over Our Heads: The Mental Demands of Modern Life, Harvard University Press, 1994、ロバヌト・キヌガン著、䞭土井僚・鈎朚芏倫監蚳『ロバヌト・キヌガンの成人発達理論』英治出版、2025幎

    • 江口地2008『キャリア育成を目的ずした「プロゞェクト型サヌクル掻動」の考察──北倧映画通プロゞェクトの掻動実践を螏たえお──』北海道倧孊倧孊院教育孊研究科修士論文


     
     
    特定非営利掻動法人いきたす 代衚理事 / 北海道倧孊倧孊院修了教育孊修士。孊校から瀟䌚ぞ。孊びに぀いお実践や研究を領域に、プロゞェクト型掻動を展開。2011幎より北海道内の高校ぞ出前授業や、近幎では高校存続関連の仕事に埓事。趣味で党囜の山を歩いおいる。

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