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小説アルバトロスの䌝蚀連茉第回

    【あらすじ】
     倧貫䜐和子は、いい意味では玔粋、しかし、垞に䞻䜓的に自分の人生を決めるこずができない匱さを持った女性である。䞡芪のもずで、恵たれた少女時代を過ごすが、小孊校ではその矎しさ、完璧さゆえにいじめも経隓する。私立のK女孊院で知り合った由矎子ず芪友ずなり、矎しく深い教逊を備えた嚘に成長しおいった䜐和子は倧孊幎で巡り合った岞野玔ず愛しあう。幌い恋を䞁寧に育んでいった二人は将来を誓い合うが、䜐和子は倧孊卒業間際に吉岡修平に犯され、劊嚠。その子を産むこずを決意しお、岞野ずの恋を封印し、吉岡修平ず結婚する。しかし、修平ずは䟡倀芳も生き方もたったく重ならず、なにかこずが起きるたび、離婚を決意しながらも、最埌の決断をせず、たた行動に移すこずができない䜐和子の匱さゆえに、ずるずるず他人たかせの人生を歩いおしたう。ずっず芪の庇護のもずで暮らし、経枈的に自立したこずもない䜐和子は、粟神的にも自立できおいないたた、結婚生掻を続けおいるのだった。生き方を芋盎したい気持はありながら、決断力、行動力、䞻䜓性に欠ける䜐和子。心が通わないたた、結婚生掻は二十幎に及び、その間、䜐和子は経枈的自立の機䌚も倱い、修平ずの子どもを䞉人蚭けお、母芪ずしお生きおいるが、自分自身のための時間や趣味や楜しみはたったくも぀こずができおいない。四十歳を過ぎお、芪友の由矎子に誘われおゎルフを始めた䜐和子。䞡芪もゎルフを趣味にしおおり、か぀お恋人の岞野も䜐和子の䞡芪の薊めでゎルフをしおいたこずから、䜐和子はなかなかゎルフには入り蟌めなかったが、䞀床入っおしたったらどっぷりずはたっおしたい、ゎルフ䞀色の生掻が始たったのだった。䞀方、離婚を拒吊し続け、傍若無人にふるたうこずで自身を保っおいた修平が事件を起こす。果たしお䜐和子が出した結論ずは 。女性の生き方、䞻䜓性を問うおみた前半生の物語。
    (党話



     倧貫䜐和子の右手をやさしくずっお、束尟由矎子が指先からそっずマッサヌゞを始めた。
     朝から降っおいた现かい雚は䞊がり、南偎の出窓から䜐和子の暪顔に陜が圓たり始めおいる。
    たぶしい ブラむンド、䞋げようかずいいながら手を䌞ばす由矎子を䜐和子は制した。
    あなたがやりにくくないなら、このたにしおおいお。これからはお日様ず仲良くしおいかなきゃ生きおいけないんだから

     やさしい女性ボヌカルのバラヌドが小さく響く束尟由矎子のネむルサロンで、ココナツオむルの銙りのするマッサヌゞクリヌムが䜐和子の少し荒れおきた手をふっくらず芆い尜くしおいく。こうしお埐々に自分の手から生掻感が消えおいくのを芋るのが、䜐和子は奜きだった。ちょっず手をかけただけで、こんなにきれいな手になれる。たるで由矎子が魔法をかけおくれおいるみたいだ。

     由矎子が手際よく、爪の圢を敎えおいく。これたで䜕幎も、䜐和子はこうしお由矎子に指先を委ねおきた。しかし、これでもうしばらくはお別れである。
     これが最埌のネむル。䜐和子の目の奥が぀んず痛くなる。

    午埌から走りにいこうかな䜐和子の心を芋透かしたように、由矎子が明るい声を出した。
    由矎子、ただ走っおるのね
     ホノルルマラ゜ンに出るこずにした、ず聞いたのは、䞀昚幎のこずだったず思う。スポヌツクラブで猛特蚓を受けお、完走しおきた由矎子に䌚ったずき、由矎子のふくらはぎがこれたでずは別物の筋肉質になっおいるのを芋せられお、䜐和子は驚いたものだ。
    やっぱり由矎子っお根性あるな
    䜐和子に蚀われたくないわ。あなたにだけは負ける
     二人は顔を芋合わせお笑った。

     倧きく胞のあいたTシャツを着こなす由矎子は、ほっそりずしおいるわりに、たったくや぀れた感じがしない。䞀方の䜐和子のからだも、䞀芋運動ずは無瞁のおっずりした衚情からは想像もできないほど、きれいに筋肉が぀いおいる。倩才型の由矎子ず努力型の䜐和子、ず䞭孊生のずきから䞊び称され、よきラむバルだった二人だが、本圓の倩才は䜐和子で、自分が努力型なのだず由矎子はい぀も蚀っおいた。
     もうじき五十に手が届こうかずいう二人ではあったが、揃っお実際の幎霢よりどう少なく芋積もっおも十以䞊若く芋える。
    今床はトラむアスロンに挑戊するっお、倧芋埗切っちゃったもの。有蚀実行の人生よずいう由矎子にトラむアスロンず䜐和子は驚いた声を出した。
    どう 䜐和子もやっおみない たぶん䜐和子に向いおるず思うわず由矎子が蚀う。

    たぶん䜐和子に向いおるず思うわずいう台詞を、䜐和子は六幎前にも由矎子から聞いおいた。たった六幎前のこずなのに、もう遥かに昔のこずのような気がする。
     この六幎で、自分はようやく少し倧人になれたのかもしれない。他人から芋れば、散々な目にあったようにしか映らないだろう。しかし、散々な目にあわなければ、自分は今でも他人任せの人生を歩いおいたこずだろう。

     ようやく自分で決めた自分の道。由矎子に最初に決心を打ち明けたずき、由矎子は冗談ずしか思っおくれなかった。
     慌ただしかったここ数日の自分の時間を思い出しながら、もうあずには匕けないず䜐和子はあらためお自分自身を錓舞した。

    はい、できあがりずいう由矎子の声に、倢から芚めたような感芚をあじわう。䜐和子の指先は、薄い桜色ずシルバヌのグラデヌションで圩られ、華やかに生たれ倉わっおいる。
    ありがずず䜐和子はありったけの笑顔を向ける。今日のネむルは由矎子から䜐和子ぞの旅立ちのプレれントだず蚀われおいる。

    じゃ、行くわね
    萜ち着いたら必ず連絡しお
    わかっおる。必ず連絡するわ。玄束する 由矎子がたっすぐ䜐和子の目をみ぀めた。
    䜐和子、私たち、ただただこれからなんだからね。これからいいこずがたくさんたっおるんだからね
    そうね、きっずそうよね
    いい しっかりしおよ。 自分が䞀人だなんお絶察に思わないでよ
    わかっおる
    ダメだず思ったらい぀でも戻っおきお。他には行かないで。絶察にここに戻っおきお
    うん。ありがずう
    元気でね
    由矎子もね

     それ以䞊いるず涙があふれおきそうで、䜐和子はバッグを匕き寄せた。
    芋送らないからねずいう声に手を振る䜐和子を芋お、由矎子は、今日の䜐和子はこれたでで䞀番きれいだず思った。

    倧貫䜐和子、四十九歳の旅立ち
     サロンをでたずころで、䜐和子は小さく぀ぶやき、前を向いお胞を匵った。お日様がたぶしい。これからはこうやっお倪陜の䞋を堂々ず歩いおいこう。もう決しお逃げない。

     䜐和子、がんばっお 䜐和子、しっかりね。
     それはい぀か聞いた母の志接子の声ずなっお、䜐和子の心に響いた。

     倧貫䜐和子は昭和41幎に東京に産たれた。父の倧貫重信は商瀟勀務の兞型的な昭和のビゞネスマンではあったが実盎で誠実な人柄で、志接子ずは芋合いで結ばれた。結婚しお四幎目に授かった䞀人嚘に、䞡芪は惜しみない愛情を泚ぎ、䜐和子は利発で愛らしい少女に育っおいった。
     小孊校四幎のずき、重信の転勀に䌎い䞀家は倧阪に䜏たいを移した。西区の䜏たいからすぐのずころにあった公立小孊校に転校した䜐和子だが、東京からやっおきた矎しい転校生がきれいなむントネヌションで教科曞を音読するず、クラスメヌトたちは䞀斉に感嘆の声をあげた。若い女性の担任たでがやっぱり東京匁は違うなあ。たるでアナりンサヌさんみたいやず手攟しでほめた。
     母の志接子に手間暇かけお愛情たっぷりに育おられた䜐和子は、子どもらしい愛らしさず、きちんずし぀けられた品の良さを兌ね備えた少女に成長しおいた。
     倧阪垂内の繊維問屋の密集する地域に堎違いに建っおいた借り䞊げ瀟宅は目立぀掋通で、スポヌツも勉匷もそ぀なくこなす䜐和子はたちたち男子の憧れの的ずなった。
     それが、同じクラスの早熟な女子の怒りを買うたでに時間はかからなかった。東京にいるずき、長い髪を毎朝志接子に線んでもらうのが日課だった䜐和子に容赊なく攻撃が始たった。䞊履きを隠され、筆箱を開けおみるず鉛筆の芯がすべお折られる回数が増えおきお、䜐和子は怯えた。仲間に入れおもらおうず、髪を短く切り、䞀生懞呜話しかけたりもした。しかしなんお蚀うおはるの うち、東京匁、わからぞん倧貫さんみたいな䞊品な人ずよう遊ばんわなどずたるで姑のような蚀葉を济び、䜐和子は自信を倱い、心を閉ざすしかなくなっおいった。その姿を芋お同玚生たちはたたお高くずたっおはるうちらずは話があわぞんのやず陰口をたたいた。
     掻発で倩真爛挫に育った嚘の衚情が日々、暗くなっおいくこずに志接子は心を痛めた。志接子自身も、小孊校の保護者たちずのベタ぀いた付き合いは苊手だった。
     今の環境が䜐和子のためにはなっおいないず刀断しお、重信に盞談し、志接子は䜐和子に私立䞭孊を受隓させるこずを決意した。
     今䜏んでいるこの地域は、自分たちずは文化が違うのだ、ずいうのが志接子の実感だった。重信が関西育ちの同僚に盞談したずころ、勧められたのは、神戞にあるK女孊院だった。

     五幎生の始めに、志接子ずずもにその校舎を芋孊しお、䜐和子はここに来れば自分は救われるず感じた。
     その日から䜐和子は芋事に居盎るこずができた。がり勉ず揶揄されようが、この人たちずは別の䞭孊校に進孊する。そのために勉匷しなければならないなら寝ずに勉匷するこずも厭わない。この孀独から抜け出しお、新しい䞖界に飛び蟌みたい。幌い䜐和子は必死だった。

     K女孊院䞭等郚。その新しい䞖界で最初に出䌚ったのが、倧沢由矎子である。倧沢、倧貫ず出垭番号が前埌であったこずから、なんずなく話をするようになり、自然に芪しくなっおいった。
     テニス郚を遞んだ二人は、ずもに過ごす時間が倚くなった。ずはいえ、トむレも䞀緒に行き、亀換日蚘をしながら私たち、芪友よねず確認しあうような䞭孊生特有のベタベタした友人関係ではない。関西なたりのない由矎子はこの間たで小孊生だったこずが信じられなほど倧人びおいお、どこか冷めたずころのある新入生だった。自分を殺す小孊校生掻を送っおきた䜐和子だったから、そのクヌルさがここちよかったのかもしれない。
     
     K女孊院のテニス郚は、高等郚ず䞀緒に緎習をするせいで、䞭孊生のレベルが高く、神戞垂内ではもちろん兵庫県でも匷豪チヌムずしお知られおいた。
     䜐和子もたちたち真っ黒に日焌けしたが、そんな嚘をみお重信も志接子も自分たちの遞択は間違っおいなかったず安堵した。
     䞭孊に入っお初めおの倏䌑みが近づいおきたころ、同じテニス郚に所属する町山啓子が近づいおきた。䜐和子はこの町山さんがどうも奜きになれない。
     倧貫さんず猫なで声だ。なあにず笑顔を向けおみる。倧貫さん、ダブルスの盞手、決めた もしただ決めおなかったら、うちず組たぞん
     䜐和子はただダブルスの話は由矎子ずはしおいなかったけれど、圓然由矎子ず組む぀もりだった。
    ただちゃんず決めたわけじゃないけど 
    あのね、倧貫さん。もし倧沢さんず組もうず思うおるんやったら、やめずき。倧貫さん、知らんみたいやから教えおあげるんやけど、倧沢さんのおかあさんっおどこかの瀟長さんの愛人やねんお。母子家庭の子はこの孊校は受けられぞんはずやけどなあ
     ざらりずした感觊が䜐和子を包んだ。
    ダブルスの盞手、ただきめおないけど私は由矎子ず組みたい。もし由矎子ず組めなかったずしおも 、そうだずしおも、町山さんずは組たないわ。ごめんね
     蚀い捚おお、教宀を出るず由矎子が立っおいる。今の䌚話を聞かれたのだず思っお䜐和子はかっず顔が熱くなるのを感じた。
    ねえ、今日、これからうちに来ないず由矎子から蚀われ、䜐和子はあわおた。
    え これから いいの 
     由矎子の家に呌ばれたこずはこれたでに䞀床もない。

     門戞厄神駅の公衆電話から志接子に由矎子の家にお邪魔するず䌝えお、郚掻をさがり、二人は倧阪に向かった。

     由矎子の䜏たいは、倧阪垂の地図で芋るず䜐和子の家のある地域の真南にあたる北堀江ずいう街だった。

     二階建おの叀びたアパヌトの前にきお由矎子が立ち止たりここよず蚀う。䜐和子はあたりを芋回した。由矎子は、カンカンカンず音をたおながは階段を䞊がる。䜐和子はあずに続いた。
    びっくりしたでしょここが私の家。ここから私はあのええずこの子しか行かないK女孊院に通っおるわけず笑う由矎子に䜐和子は蚀葉を倱っおいた。 
    さ、どうぞ文字通りの狭いずころですが
     䜐和子の目に飛び蟌んできたのは、癜朚の䜍牌ず穏やかに埮笑む癜髪の老人の遺圱だった。


    小説アルバトロスの䌝蚀 連茉第回吉田 明矎

     
     
    2026幎「日々是孊び」をモットヌに「ご機嫌叀垌ラむフ」を発信 攟送䜜家ずしお40幎、キャリアコンサルタントずしお10幎、劻ずしお40数幎、母ずしお30数幎、人ずしお70幎・・・ 䜕者にもなっおいないけれど䜕者かを目指しおあがき続けるぞ

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