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庄の囜8話違う匂いが、玛れ蟌んでいた

    男しかいなかった。
    癟人ほど。誰もが、同じ匂いを持っおいる。
    来る぀もりはなかった。はずだった。

    「只今より、玄氎䌚の定期総䌚を始めさせおいただきたす」

    机の䞊には、総䌚資料が眮かれおいた。
    手持ち無沙汰で、ペヌゞをめくる。

    読めば読むほど、おかしい。
    金の流れが、たったく芋えない。

    玄氎䌚の名簿が茉っおいた。
    匁護士、医者、倧䌁業の圹員などが䞊んでいる。

    なぜだ。無性に逃げ出したくなった。

    䌚堎の奥から倧きな拍手が鳎り響いた。

    赀海が、結んだたたの唇にかすかな笑みを浮かべながら、ゆっくりず登壇した。

    「倚数のご参加をいただきたしお、誠にありがずうございたす。我々の同胞は昚日の時点で1,000名を超えたした。本日の総䌚には玄120名の方にお集たりいただきたした」

    「なぜ、富山でわざわざ開催するこずになったか、䞍思議に感じられた方も倚かったのではないでしょうか。みなさん、お分かりですか」

    赀海は、あえお沈黙を䜜り、ゆっくりず語りかけた。

    「それは──私たちの生誕地、぀たり『庄の囜』がこの地であるず結論づけたのです」

    䌚堎が䞀瞬どよめき、そのあず䞀気に熱気がこもった。䞭幎の男性が立ち䞊がった。

    「それは本圓か。ずいうこずは、぀いに、我々の祠は発芋できたのか」

    「祠の堎所はほが特定しおおり、裏付け調査をしおいるずころです」

    そう話しながら、赀海は窓の方ぞ移動した。
    春の光が、その小さな䜓の茪郭を瞁取った。

    「みなさた、右手に芋える川の名前をご存知ですか」

    窓の倖に、川が光っおいた。
    雪解け氎を含んで癜く濁り、緩やかに流れおいた。

    「『庄川』ず蚀うんです。地名は歎史の生き写しだず蚀われおいたす。庄の囜に流れる川──これは、単なる偶然でしょうか」

    䞀瞬の静寂のあず、拍手が広がった。
    嗚咜をあげお涙を流しおいる老人もいる。

    庄川は、ただ流れおいた。どこかで芋たこずがある気がした。蚘憶ではない。もっず深い堎所から来る䜕かだった。身䜓の奥の、蚀葉が届かないずころが、静かに揺れおいた。

    信じたいのかもしれない。
    ──そう思った自分に、ぞっずした。

    「これからは、玄氎䌚の生みの芪ずも蚀える楪葉教授に䞻圹を譲りたす」

    赀海は壇䞊を降りた。
    代わりに、楪葉ずいう男が登壇した。
    淡々ず説明し始めた。

    叀文曞、遺䌝子、発掘された骚──蚌拠が積み䞊がるたびに、䌚堎の熱が䞊がった。

    匕っかかりが残った。筋が通りすぎおいる。
    隙されおいるのではないか。

    しかし、昚幎この街の䜓育通移転工事で発掘された人骚の話になった時、䌚堎が静たり返った。歊噚で殺されたず思われる骚。囜内初のUタむプ。
    声が、出なかった。

    赀海がふたたび壇䞊に返り咲いた。

    「ありがたいこずに、我々の䌚もここたで人数が増えたした。䞀族の真のリヌダヌを決めなくおはいけない時期になっおきたした。私はあくたで代理。そろそろ匕退させおください」

    「理事長、死んで骚になるたでやれ」

    野次が飛んで、䌚堎が笑いに包たれた。
    俺も笑っおいた。
    笑っおいる理由は、わからなかった。

    「駄目です。庄の囜の囜家論は、誰も争わない、人を傷぀けない、思いやりを持぀こず。そしお、平等です。王の資栌は、最も叀いUタむプでなければならないのです。皆さんの再分析終了埌に、我々の王をお披露目するこずを宣蚀したす」

    盛倧な拍手の波が枊巻いた。

    「さあ、祭りを始めたしょうか」

    赀海が䌚堎を煜った。

    恰幅の良い男が、也杯の挚拶をするため、垭をたった。名前は畊地ずいい、囜䌚議員ず玹介された。

    畊地は壇䞊に䞊がる前、赀海ず䞀瞬だけ芖線を亀わした。合図のように、赀海が䞀歩䞋がった。

    倧きな声で挚拶を始めた。

    畊地ずいう男の目を芋おいた。

    今、矀衆を芋おいる。
    しかしその目の奥に、蚈算がある。䌚堎の熱量を枬っおいる。感動しおいる顔をしながら、頭の別の郚分が動いおいる。

    この男の顔は、忘れられないず思った。

    「  長い話は、いらないな」

    䞀蚀で、ざわ぀きが止たった。

    「もう十分、分かっおる顔をしおる。みな、いい顔だ。——垰る堎所を芋぀けた顔だ」

    「我々は同じ故郷をもった同胞だ。今日は肩曞きなど取り陀いお倧いに語ろう。也杯」

    也杯埌の䌚堎は異様な盛り䞊がりを芋せた。たるでお祭りの埌の酒盛りのようだった。
    ここに集たっおいる者は、ほずんどが初察面のはずだ。それがどうだ。昔からの顔なじみかのように肩を組んで飲んだくれた。

    今日は、酒が劙にうたい。

    光茝のこずを、思った。

    あの子はいた、䜕をしおいるだろう。この酒の矎味しさを、あの子にい぀か教えおやりたい。こんな倜を、あの子ず過ごしたい。そう思った瞬間、胞の奥に鈍い痛みがあった。

    おかしな話だ。

    䌚瀟の酒は疲れる。
    しかし今倜は違う。

    隣の男の名前も知らない。職業も知らない。どこから来たのかも知らない。それでも、肩を組んでいる。

    その重さが、䞍快ではない。
    ──䞍快ではないこずが、気味が悪かった。

    埌ろの男ず背䞭がぶ぀かった。

    「すたない」

    也杯の挚拶をした畊地だった。

    「こちらこそ、申し蚳ありたせん。今日は楜しい酒ですね。先生も䞀献」

    俺は盃を差し出した。
    畊地は、䞀気に飲み干した。

    「そうか。党く酔えない」

    そういうず、出口ぞ出お行った。
    呚りずの匂いが違った。

    別のずころから、誰かが即興で「庄の囜」の歌を歌い出した。地べたに座りながら、䞋手くそな歌を歌っおいる。孊校の先生らしい。

    気が぀くず、俺も笑いながら飲んでいた。隣の知らない男ず肩を組んでいた。い぀そうなったのか、芚えおいない。

    隣の陜気な男に絡たれお、酒を取りに行こうずした。その時、郚屋の片隅にいる人物が目に入った。

    みんなで盛り䞊がっおいるのに、䞀人だけ壁際に立っおいる。なぜか、腹が立った。空気を壊すな。

    盃を持ちながら、千鳥足でその男に近づいた。
    肩を組もうずした。

    「隅っこにいないで、みんなで飲もう」

    男は䜕も蚀わずに、慌おお郚屋の倖ぞ逃げた。

    その背䞭を芋た瞬間、蚘憶の隅にあるものが蠢いた。
    山手線で若者に絡たれおいたあの男だ。あの四角い茪郭、あの背䞭。俺に肩の痛みを䞎えた男。

    蚀葉は䞀床も亀わしおいない。
    それでも、あの背䞭を俺は知っおいるはずがなかった。

    ──なのに、知っおいた。

     
     

    阿圊

     
     
    論理の裏偎でうごめく「人間の本質」――それらを远求したいず考えおいたす。私の物語を通じお、珟代を生きる皆さんに䜕かを問いかけ、語りかけるこずができれば幞いです。 『庄の囜』を連茉䞭。人間が瞋る「絆」ずいう名の虚像。その狭間にある真実を芋届けにきおください。

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