
花の行方(4)幕間「結婚式」
結婚式場。
高砂に飾られた白いバラが、
一輪。
私は、
ホワイトローズ。
白いバラ。
結婚式の花。
花言葉は、
純潔。
尊敬。
清純。
清らかで、
気品があって、
決して、
主役を邪魔しない。
どう考えても、
完璧。
なのに、何?
あれは。
「きゃーっ!
来るわよ! 来るわよ!」
「さぁ!
扉が開くわよ!」
「花嫁さんよ!」
……なんて、落ち着きがない。
ん?
もしかして、あの子たち。
「きゃーっ!」
「花嫁さん、すてき!」
「泣いてる!
お母さん、もう泣いてる!」
間違いないわ。
あの異常な明るさと、
落ち着きのなさ。
あれが、いろはの子たちね。
……とうとう、ここにも。
何?
あの子たち……
新婦が笑うと、
明るい花が少し前に。
新郎が俯くと、
やわらかい花が、
そっと横を向く。
お母さんが涙を拭うと、
手元の白い小花が、
寄っている。
思わず、
首を振る。
撮影の時間。
一斉にカメラが向く。
いろはの子たちが、
せっせと陣形を変えている。
新婦の白が、
いちばん美しく見えるように。
新郎の手が、
少しだけ落ち着くように。
家族の涙が、
ちゃんと写るように。
……なるほど。
悪くない。
まあ、
私ほどではないけれど。
ん?
あの子たち、
どこを見てるのかしら。
あの誰も座っていない椅子?
何度も顔を向けているわ。
……そこには、
誰もいないのに。
椅子の上に、
小さな写真立て。
白いリボン。
ひとつだけ、
花。
……ああ。
そこにも、
花は必要よね。
まあ、
私なら、
もっと静かにやるけれど。
式の終わり。
新婦が、
私の前で足を止めた。
白い指先が、
そっと花びらに触れる。
「きれい」
当然よ。
そう思った。
でも、
少しだけ、
あの子たちの方を見た。
まだ、
あの子たちは笑っている。
恐ろしいわね。
いろはの子たち。
……まあ。
悪くない式だったわ。
次の花へ。
第三話「行方」へ続きます。