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竜階士ず魔女 本線 #14 第13ç« 

    第4郚
    埌神聖暊1205幎

    第13章

     ゞョヌティずナヌスティスが、南海の果おから旧アバドニア王囜の王郜に戻った盎埌、幎が明けた。
     敗戊埌の王郜に、新幎らしい賑やかさはなかった。か぀おの王城跡で、敵囜占領軍の総督官邞の建蚭だけが、着々ず進んでいた。
     倧理石造りの芋慣れぬその建物を、人々は寒さをこらえるような県差しで芋た。

    

     魔女の薬屋に来る客は、店䞻ず倚くを話したがらない。
     倕方になっおやっお来た若い母芪も、ゞョヌティの方を芋ようずせず、薬棚の前でうろうろしおいる。
     ゞョヌティは静かに母芪に近づくず、甚件を尋ねた。母芪はぎょっずしたようだったが、子どもが発熱し、発疹が出おいるこずを䌝えた。
     ゞョヌティが熱冷たしず軟膏を甚意し、母芪に枡そうずしたずき、母芪が思い切ったように口を開いた。
    「ねえ、あんたの店の薬、なにか倉なこずになったりしないだろうね」
     戞惑うゞョヌティに、母芪は蚀葉を続けた。
    「誀魔化すんじゃないよ。このあたりじゃ、噂になっおるよ。あんたのずころにいる、垰還兵の腕が、生えおきたっお───」
     母芪が蚀い終える前に、薬屋の扉が開いた。
     垃袋を巊肩に掛けたナヌスティスが、そこに立っおいた。母芪は圌の巊腕に目を遣り、ゞョヌティから薬をひったくるように受け取るず、そそくさず立ち去った。
     圌は黙っお、去っおいく背䞭を芋送った。その暪顔に、ゞョヌティの胞は塞がった。

     ナヌスティスの再生した巊腕を芋お、圌を雇っおいた瓊瀫運びの珟堎の長は、
    「もう、ここには来おくれるな」
    ず、即座に告げた。ナヌスティスはなにかを蚀いかけたが、黙っお頷いた。
     巊腕が生えおきた垰還兵の噂は、王郜の埩旧珟堎に広たった。ナヌスティスは、王郜から埒歩で䞞䞀日かかる枯たで、仕事を探しに行かなくおはならなかった。
     数日ぶりに薬屋ぞ垰っおきた圌は、気を取り盎したように、ゞョヌティに向き盎った。
    「ゞョヌティ殿、無事だったか」
     ナヌスティスはそう蚀いながら、ゞョヌティに近づいた。圌女もたた、笑顔を䜜った。
    「はい」
    「私のいない間に、危ないこずはなかったか」
     圌はそう蚀っお、圌女の赀い目を芗き蟌んだ。
     巊腕の再生ずずもに、圌の顔の火傷の痕は消え、巊目の芖力も戻っおいた。しかし今、その端正な顔には無粟髭が生え、䞀日䞭歩き続けた疲れが浮かんでいた。
     ゞョヌティは銖を振った。
    「なにも、ありたせんでした」
     ナヌスティスは埮笑した。
    「良かった」
     圌は、巊手でゞョヌティの頬にそっず觊れた。圌女はその存圚を確かめるように、圌の巊手に、自身の手を重ねた。

    

     翌日、垰っおきたナヌスティスのためにず、ゞョヌティは垂堎でできる限りの食料を買い蟌み、重い籠を䞋げお、貧民街ぞず戻っおきた。
     圌女の耳に、争う声が聞こえた。建物の陰で、数人の男達が、䞀人の男を囲んでいた。
     囲たれおいる男は、このあたりではたず芋かけないような、良い身なりをしおいた。貎族か裕犏な商家の、䜿甚人のように芋えた。
     男達の䞀人が、䜿甚人颚の男の襟銖を掎んだ。ゞョヌティの目ず、襟銖を掎たれた男の助けを乞うような目が合った。
     仕方がない。ゞョヌティは小さく溜息を吐いた。そしお、建物の陰に身を隠すず、襟銖を掎んでいる男の手に、魔法で火を぀けた。
     男達から、悲鳎ず動揺の声が䞊がった。ゞョヌティはそのたた、姿をくらたそうずした。
     だが、
    「埅お」
    ずいう声ずずもに、二人の男達がゞョヌティに向かっおきた。振り返るず、圌女に手を焌かれた男がうずくたる前で、䜿甚人颚の男はその堎にぞたり蟌んでいる。圌女は思わず、舌打ちしそうになった。
     ゞョヌティはもう䞀床男達に火を济びせ、その隙に逃げ切ろうずした。
     だが、ゞョヌティが魔法を䜿う前に、誰かが圌女の腕を掎んだ。ナヌスティスだった。
     驚くゞョヌティを背に抌しやるず、ナヌスティスは前ぞ出た。拳ず膝が続けざたに入り、男二人はほずんど同時に厩れ萜ちた。ゞョヌティが我に返ったずきには、二人の男に背を向けたナヌスティスが、圌女の手から籠を取り䞊げおいた。
    「りゅ 竜階士様。なぜここに」
    「あなたを探しに来た」
     圌の蚀葉に、ゞョヌティは思わず空を芋䞊げた。日はただ高い。
     そのずき、ナヌスティスの背䞭越しに、手を火傷した男が鉄管を振り䞊げるのを、ゞョヌティは芋た。
    「竜階士様───」
     圌女の口から声が挏れる前に、ナヌスティスは埌ろを振り向きもせず、男の顔に巊肘を叩き蟌んだ。男は昏倒した。
     唖然ずするゞョヌティをよそに、ナヌスティスは呟いた。
    「この蟺りは、ただただ治安が悪い。 やはり王郜で、仕事を探すべきか」
     そしお圌は圌女の手を取り、歩き出した。ゞョヌティが振り返るず、䜿甚人颚の男はただ地面にぞたり蟌んだたた、去っおいくふたりを呆然ず芋おいた。

     その倜、薬屋に来客があった。
     客は、豪奢ではあるが芋慣れぬ服を着おいた。昌間の䜿甚人颚の男が、その埌ろに控えおいた。
    「敵囜の衣装だ」
     店先に出おきたナヌスティスが、譊戒をにじたせた声で蚀った。
     豪奢な服を着た男は、やはり敵囜から来た商人だず名乗った。そしお、自らの䜿甚人が助けられた瀌を述べるず、ナヌスティスに向き盎り、
    「こちらの者が、あなたの腕前を芋おおりたした。ぜひあなたに、私どもの店の譊備をお願いしたい」
    ず蚀った。
     商人の蚀葉に、ナヌスティスはわずかに眉を䞊げた。
     商人は占領軍ず共に旧アバドニア王囜の王郜に来お、店を構えた。だが、敵囜の商人に察する圓たりは匷く、嫌がらせや抌し蟌みに近いこずが頻繁にあるため、珟地の揉め事を解決できる珟地の者を探しおいるずいう。
     ゞョヌティは息を詰めた。か぀おヘむル兄匟から聞いたトフェト砊での惚事が、圌女の脳裏によぎった。ナヌスティスが商人の話を受けるずは、思えなかった。
     ナヌスティスは䞀瞬だけゞョヌティを芋たが、圌女の返事を埅たずに商人ぞ向き盎った。
    「 受けよう」
     ゞョヌティはぜかんず口を開けた。
     商人は喜び、店の堎所などを手早く説明するず、さっそく明日から来おほしいずナヌスティスに告げ、去っおいった。
     ゞョヌティはためらいがちに、ナヌスティスに尋ねた。
    「 先皋の話を受けお、良かったのですか」
     ナヌスティスは䞍思議そうな顔をした。
    「王郜で働けるのなら、願っおもないこずだ」
     ゞョヌティは返す蚀葉を倱った。ナヌスティスは圌女の驚きに気づかぬように、目で笑った。
    「あなたを守れる」
     圌の優しさを、嬉しく感じるはずだった。だがゞョヌティは、その蚀葉に居堎所を決められるような息苊しさを芚えお、ただ、手近にあった黒皮草ニゲラの束を握り締めた。

    

     それから数日、ナヌスティスは芏則正しく、毎朝同じ時刻に出おいった。その腰には、譊備のためにず買った剣があった。
     ある倕方、薬屋の倖から、ナヌスティスの声が聞こえた。
     ゞョヌティはそっず扉を開けた。埌ろ姿のナヌスティスず、芋知らぬ男の姿が芋えた。
    「なあ、あんたっお、軍の人間だったのか立ち方が違う」
     男が尋ねた。ナヌスティスの同僚のようだった。
    「そのようなものだ」
     ナヌスティスは短く答えた。同僚は頷いた。
    「やっぱりね。あんたのおかげで倉な奎らが来なくなったから、楜で助かるよ。商人さんも、安心した顔をしおた。でもさ」
     同僚は蚀葉を切り、呚囲の貧民街を芋回した。
    「あんたなら、もっずたずもなずころに䜏めるんじゃないそれに、ここっお───」
     薬屋の戞口に目を遣った同僚は、ようやくゞョヌティに気づき、ば぀の悪そうな顔をした。ナヌスティスは振り返り、足早に圌女に歩み寄るず、身を屈めお薬屋に入り、埌ろ手に戞を閉めた。
    「ゞョヌティ殿」
     そう蚀うず、ナヌスティスはう぀むく圌女の背を抱いた。ゞョヌティはその巊腕に、瞋るように觊れた。指先が觊れた瞬間、圌はわずかに顔をしかめたが、圌女は気づかなかった。圌女はただ、再生した巊腕の枩かさを感じた。

    

     翌朝も、ゞョヌティは譊備の仕事に向かうナヌスティスを芋送った。
    「今日も䞀日、門で立っおいるだけか」
     めずらしく、圌ががやいた。ゞョヌティは銖を振った。
    「私だけでなく、誰もが、竜階士様が剣を持っおいる姿に嚁厳を感じるのでしょう」
     ナヌスティスの目が、物蚀いたげに光った。圌の指が、腰に䞋げた剣の鞘に觊れた。だが圌はすぐに指を離すず、ゞョヌティから目を逞らし、
    「⋯行っおくる」
    ず呟いお、圌女に背を向けようずした。
     そのずき、
    「にゃあ」
    ず、呑気な鳎き声が聞こえた。ナヌスティスは足元を芋お、軜い驚きを芋せた。
    「お前、たたどこに行っおたんだ」
     黒猫はナヌスティスの問いに答えず、埌ろ足で耳を掻いた。
    「たあ良い。私のいない昌間は、ゞョヌティ殿を頌む」
     ナヌスティスは膝を぀き、黒猫を撫でた。黒猫は我関せずずいった顔で、熱心に毛繕いを始めた。
     黒猫の頭を軜く小突いお、ナヌスティスは立ち䞊がった。そしおゞョヌティに笑いかけ、出かけおいった。
     朝の光の䞭で、腰に剣を䜩き、背筋を䌞ばしお歩く圌が、ゞョヌティには眩しかった。だがその姿は、路地の入口の数歩先で、人波に玛れた。
     圌女はフヌドの瞁を抌さえた。そしお、足元に芖線を萜ずした。
     ───魔女には、黒猫がお䌌合いか。
     ゞョヌティは自嘲した。そしお、黒猫の逌を甚意しようず、薬屋の䞭に戻った。
     扉を閉めた次の瞬間、黒猫の叫び声が響いた。
     ゞョヌティの背筋に冷たいものが走った。圌女は急いで倖に出た。
     血溜たりの䞭に、黒猫が暪たわっおいた。ゞョヌティは息を呑んだ。
     圌女は黒猫に駆け寄るず、しゃがみ蟌み、震える手を䌞ばした。
    「どうしたの、䞀䜓なにが───」
     突然、背䞭にすさたじい衝撃があった。
     ゞョヌティは地面に叩き぀けられた。呌吞ができない。蚳が分からないたた、乱暎に髪を掎み䞊げられる。喉元に、灌けるような痛みを感じた。
     そのずき、疟颚のような足音が聞こえた。
     ゞョヌティの頭䞊で、鈍い音がした。重い塊が、圌女の身䜓の暪に萜ちた。
     呌吞が戻った。息を吞おうずしお、ゞョヌティは激しく咳き蟌んだ。
    「ゞョヌティ殿」
     聞き慣れた声ずずもに、圌女は地面から抱き起こされた。出かけたはずのナヌスティスが、ゞョヌティを芗き蟌んでいた。
    「無事か」
     ナヌスティスは圌女の銖元を抌さえた。ゞョヌティは自身の銖の皮膚が切れ、血が流れおいるこずに気づいた。
    「 逃げたか」
     ナヌスティスは呚囲を芋回し、吐き捚おるように蚀った。返り血を济びた圌の恐ろしい圢盞に、ゞョヌティは䞀瞬、䜓を固くした。
    「ゞョヌティ殿」
     ナヌスティスは険しい衚情のたた、地面に芖線を萜ずした。
     ゞョヌティは圌の芖線を远っお、地面を芋た。
     そこに転がっおいるのが、斬り萜ずされた人間の腕だず気づくのに、時間がかかった。その手は、短刀を握っおいた。だが、肘の少し䞋あたりから、もうひず぀の手が生えおいた。
    「あなたは、異圢の者に、呜を狙われたようだ」
     圌女の息が止たった。


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    蚘事䞀芧

     
     

    Bunko

     
     
    気が぀けば人生の半分以䞊が終わっおいた。 このたた死ぬのは嫌なので、゚ッセむを曞いたり、小説を曞いたりしおいたす。 重床の知的障害を䌎う自閉症の兄がいる、元きょうだい児。 䞀次創䜜小説https://note.com/acalanatha_9/m/m435ae1bb39d7

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