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100個叶ったらカフェオヌプン──笑われお、笑っお、生きおいる。

    【第1章】やりたいこず100個

    捚おたはずのノヌトが、䞀冊だけ残っおいた。

    そのノヌトだけは、なぜかどうしおも捚おるこずができなかった。

    ペヌゞを開くず、そこには

    「やりたいこず100個」

    ず曞かれた、10幎前の私の文字が䞊んでいた。

    少し䞞くお、今よりも迷いのない字。

    たぶん、ペンを眮く手に迷いがなかった分だけ、字も迷っおいない。

    âž»

    10幎前の私は、盞圓な自信家だったらしい。

    リストの䞀行目から、すでに堂々ずしおいる。

    「痩せるこず」

    「家族ず旅行に行くこず」

    「奜きな人を぀くるこず」

    「奜きな人の子どもを産むこず」

    「カフェを開くこず」

    「カフェの開業資金、300䞇円」

    300䞇円。

    数字たで曞いおあるずころに、圓時の本気床が滲んでいる。

    この子、たぶん資金蚈画ずいうものを知らない。

    âž»

    埌半に入るず、急に倢の質が倉わっおいく。

    「○○の子どもを抱っこする」

    「○○の結婚匏に行く」

    友達の名前を、思い぀く限り䞊べおいる。

    100個に届かせるこずに必死すぎお、途䞭から完党に息切れしおいるのが䌝わっおくる。

    この子、たぶん本圓は倢が80個くらいしかなかった。

    思わず笑っおしたった。

    ああ、この子、本気だったんだ。

    そんな愛おしさが蟌み䞊げる笑いだった。

    âž»

    どれも驚くほど単玔で、たっすぐだった。

    あの頃の私は、人生がこのリストの延長線䞊にあるず信じおいたのだず思う。

    âž»

    そしおノヌトの䞭には、少しだけ匷い”ルヌル”も曞かれおいた。

    ①人に芋せおはいけない。

    ②䞀床曞いたこずは消しおはいけない。

    たるで、自分に課した法埋みたいだった。

    10幎前の私は、本圓に真面目だったらしい。

    âž»

    その䞭でも、特に倧きな文字で曞かれおいた蚀葉がある。

    「100個叶ったらカフェオヌプン」

    文字の倧きさが、本気床をそのたた衚しおいた。

    恥ずかしげもなく、むしろ圓然のようにそこにある。

    きっず、この倢が最埌に埅っおいる未来だった。

    âž»

    私は今、そのノヌトを手にしおいる。

    ペヌゞの隅は少し䞞たっおいお、䜕床も開いたり閉じたりした跡が残っおいた。

    そしお私は、今たさにそのルヌルを砎っおいる。

    ねえ、10幎前の私。

    ノヌトを片手に、少し話しおもいい

    âž»

    「奜きな人の子どもを産むこず」。

    これ、本気で曞いおるよね。

    圓時の筆圧、かなり匷め。

    でもね。

    皮明かしするず、私。

    奜きな人ができないタむプの人間だったみたい。

    今は、そのこずを

    「アロマンティック・アセクシュアル」

    ずいう蚀葉で知っおいる。

    あなたが必死に叶えようずしおいた倢は、少しだけ方向が違っおいた。

    でも、的倖れだったからこそ、今は愛おしい。

    そんなに頑匵らなくおも良かったんだよ。

      ず蚀ったずころで、きっずあなたは聞かないよね。

    なんせ、自分でノヌトにルヌルを䜜るくらいだもん。

    âž»

    あず、「カフェの開業資金、300䞇円」。

    数字たで曞く埋儀さ、私は結構奜き。

    でも、それ絶察足りないから。

    自己資金だけじゃ、お店は開けない。

    制床ずか融資ずか、もう少し調べおから曞いおほしかった。

      なんお。

    10幎前の私に、今さらツッコミを入れおいる。

    âž»

    ノヌトを閉じる前に、もう䞀床だけ。

    ごめんね、10幎前の私。

    玄束、守れおいない。

    でも䞍思議ず、眪悪感より先に笑っおしたった。

    âž»

    厳しくお。

    ストむックで。

    どこか必死だった、あの頃の私。

    今なら少しだけ距離を眮いお、こう蚀える。

    頑匵らなくおいいよ。

    気匵らなくおいいよ。

    もっず肩の力を抜いお、自由に生きおいいよ。

    âž»

    そしお、その蚀葉を口にしたあずで思う。

    あの頃の私がいたから、今の私がいる。

    âž»

    昔から私は、自分の思ったこずや考えをノヌトに曞き殎る癖があった。

    掃陀をするたび、最埌たで䜿われなかったノヌトが䜕冊も出おくる。

    䞀行だけ読んでは恥ずかしくなっお、い぀も捚おおしたう。

    でも、このノヌトだけは違った。

    途䞭で終わっおいるのに。

    完成しおいないのに。

    なぜか、この䞀冊だけは捚おられなかった。


    【第2章】生きる感芚を取り戻すたで


    フォトスタゞオを蟞めた日。

    荷物をたずめながら、「これからはフリヌで働く」ず自分に蚀い聞かせおいた。

    䞍安はあったけれど、それよりも自由になれる期埅の方が倧きかった。

    私は、やっず自分で遞んだ人生を歩き始めた぀もりだった。

    仕事は思うように぀ながらなかった。

    フリヌになったばかりの頃は、モニタヌ撮圱を重ねながら、少しず぀実瞟を䜜ろうずしおいた。

    「今は皮たきの時期。」

    そう自分に蚀い聞かせおいたけれど、珟実は思っおいたよりずっず厳しかった。

    少しず぀貯金は枛っおいった。

    そこぞコロナ犍が重なり、撮圱が次々ずなくなっおいった。

    生掻のために、やりたくもなかった居酒屋でアルバむトを始めた。

    慣れない環境の䞭で、心ない蚀葉や理䞍尜な出来事に耐えながら働いた。

    息抜きになればず、昔からの友人に誘われお旅行ぞ出かけた。

    楜しくなるはずだった。

    でも、その旅でも私は昔ず同じように自分の気持ちを飲み蟌んでいた。

    怒られおも、決め぀けられおも、本音を蚀えない。

    「この子ずいる私は、い぀も自分を小さくしおしたう。」

    そんなこずに、ようやく気づいた。

    仕事でも、人間関係でも。

    少しず぀、自分の居堎所がなくなっおいくような感芚だけが残った。

    そしお、ある日。

    ある知らせを受けた。

    詳しく曞く぀もりはない。

    ただ、その出来事は、私が䜕ずか繋ぎ止めおいた最埌の䞀本の糞を、静かに切った。

      いや。

    本圓は、そのずっず前から切れ始めおいたのだず思う。

    仕事のこず。

    お金のこず。

    人間関係のこず。

    未来ぞの䞍安。

    その䞀぀ひず぀は、決しお倧きな出来事ではなかった。

    でも、小さな出来事が䜕床も重なっお、少しず぀䞖界が歪んでいった。

    私は、その歪みに気づかないふりをしおいただけだった。

    気づいたずきには、家から出られなくなっおいた。

    起き䞊がるこずもできない。

    カヌテンを開けない日が増えた。

    スマホに電源を入れるこずもできない。

    時蚈の針だけが進んでいく郚屋で、ただ倩井を芋぀めおいる時間だけが長くなった。

    あの頃の蚘憶は、ずころどころ曖昧だ。

    䜕を考えおいたのかも、䜕を感じおいたのかも、うたく思い出せない。

    ただ、「無」だった。

    それだけは、はっきり芚えおいる。

    âž»

    数幎経ち、少しず぀生掻を取り戻しおいった。

      ように芋えた。

    でも、本圓は違った。

    今床はストレスの行き堎が、食べるこずに倉わっおいた。

    倜䞭に冷蔵庫を開ける。

    お腹が空いおいるわけじゃない。

    矎味しいずも思っおいない。

    それでも手は止たらなかった。

    仕事もしおいないのに、お腹だけはちゃんず空くんだ。

    そんなこずを思いながら、冷蔵庫の䞭身を詰め蟌んでは、たた自己嫌悪を繰り返しおいた。

    気づけば、過去の自分では想像もできない䜓重になっおいた。

    鏡を芋るのも嫌だった。

    お颚呂に入るこずも、食事をするこずも、歯を磚くこずも。

    そんな圓たり前のこずが、ひず぀ひず぀遠い行為になっおいた。

    生きおいるずいうより、ただ䞀日を終わらせおいただけだった。

    âž»

    そんな毎日の䞭で、祖母の80歳のお祝いの日がやっおきた。

    久しぶりに倖ぞ出た。

    久しぶりにカメラを持った。

    ファむンダヌ越しの家族は、い぀も通り笑っおいた。

    祖母も、母も、兄や姉も、みんな嬉しそうだった。

    私も笑っおいた。少なくずも、写真の䞭では。

    その垰り道だった。

    カメラの液晶に映る自分の姿を芋お、蚀葉が出なかった。

    こんなに倉わっおしたったんだ。

    その䞀枚だけが、劙に珟実だった。

    そしお、そのずき初めお思った。

    「倉わりたい」

    痩せよう。

    その気持ちは、䞍思議なくらい自然に出おきた。

    誰かに蚀われたからじゃない。

    痩せたかったずいうより、もう䞀床、自分を奜きになりたかった。

    ああ、私はただ、䜕かになりたいず思えるんだ。

    それだけで、少しだけ息が楜になった気がした。

    âž»

    次の日から、生掻を少しず぀倉えた。

    朝起きる。

    カヌテンを開ける。

    日差しを济びる。

    癜湯を飲む。

    朝ごはんを食べる。

    YouTubeを芋ながら運動をする。

    筋トレをする。

    倜は湯船に浞かる。

    今思えば、どれも圓たり前のこずだ。

    でも、その圓たり前が䜕幎もできなかった私にずっおは、䞀぀ひず぀が倧きな挑戊だった。

    âž»

    䜓重は少しず぀枛っおいった。

    半幎が過ぎた。

    過去最倧たで増えおいた私は、人生で䞀番痩せた私になっおいた。

    もちろん、痩せたから人生が倉わったわけじゃない。

    でも、あの半幎で倉わったのは䜓型じゃなかった。

    朝起きられるようになったこず。

    ご飯を「矎味しい」ず思えたこず。

    お颚呂で湯船に浞かっお、「気持ちいい」ず感じられたこず。

    その䞀぀ひず぀が、少しず぀私を人間らしい生掻ぞ戻しおくれた。

    だから私は今でも思っおいる。

    䞀床目のう぀が軜くなっおいったきっかけは、痩せたこずじゃない。

    自分を倧切にする生掻を、もう䞀床始められたこずだった。

    あの頃の私に必芁だった薬は、もちろん薬でもあった。

    でも同じくらい必芁だったのは、朝の光であり、枩かいご飯であり、お颚呂で枩たる時間であり、「倉わりたい」ず思えた小さな欲だったのかもしれない。

    その小さな欲が、止たっおいた私の時間を、もう䞀床ゆっくりず動かし始めおくれた。


    【第3章】倢は、圢を倉えお続いおいく


    カフェは、ただオヌプンしおいない。

    ごめんね、10幎前の私。

    正盎に蚀うず、倢を远うどころじゃなかった時間の方が長かった。

    あの倢のために本気で頑匵れたのは、たぶん4幎くらい。

    残りの時間は、生きるだけで粟䞀杯だった。

    倢を諊めたずいうより、生き延びるこずを優先するしかなかった。

    âž»

    それでも、䜕もしおこなかったわけじゃない。

    カメラを仕事にした。

    デザむンを孊び始めた。

    職業蚓緎校ぞ通っお、未経隓からWebデザむンを孊んだ。

    仲間ず悩みながら、䞀぀のWebサむトを完成させた。

    新しいこずを始めるたびに、「もう遅いかな」ず思った。

    でも、そのたびに少しだけ未来が広がっおいく気がした。

    遠回りばかりの人生だった。

    けれど、振り返っおみるず、その遠回りが今の私を぀くっおいた。

    âž»

    そんな私が、たた懲りずに倢を芋おいる。

    今床の倢は、カフェじゃない。

    人生のアトリ゚を぀くるこず。

    写真を撮るこず。

    デザむンをするこず。

    文章を曞くこず。

    奜きなものを奜きなだけ䞊べられる、小さな堎所。

    誰かに䜕かを売り蟌む堎所じゃなくお、

    誰かが少しだけ呌吞を敎えられる堎所。

    昔の私が憧れたカフェは、

    今の私の䞭で、そんな堎所ぞず圢を倉えた。

    âž»

    もちろん、簡単じゃない。

    家を買うこず。

    アトリ゚を぀くるこず。

    今の私が曞いおいる倢も、10幎前の「開業資金300䞇円」ず同じくらい無謀なのかもしれない。

    でも、笑われるくらいでちょうどいい。

    10幎前の私も、きっず誰かに笑われるような倢を曞いおいた。

    それでも、本気だった。

    だから今の私も、本気で曞いおみようず思う。

    âž»

    実は、う぀は再発した。

    この文章を曞いおいる今も、寛解したずは蚀えない。

    調子のいい日もあれば、朝起きられない日もある。

    前より苊しいず思う日もある。

    正盎に蚀えば、私は今も埅っおいる。

    䞀床目のう぀が少しず぀明けおいった、あのずきみたいな小さなきっかけを。

    あの日は、「痩せよう」。

    たったそれだけだった。

    䞖界が歪んでいったのは、䜕か䞀぀の出来事じゃなかった。

    いく぀もの小さな出来事が重なっお、気づけば景色が倉わっおいた。

    だからきっず、回埩も同じなんだず思う。

    劇的な出来事じゃなくおいい。

    朝、少しだけ倖の光が気持ちいいず思えた日。

    矎味しいず思っおご飯を食べられた日。

    誰かに䌚いたいず思えた日。

    そんな小さな「生きたい」が、たた静かにやっお来るのを、私は埅っおいる。

    でも、䞀床目の私が教えおくれた。

    きっかけは、埅ち構えおいた日に来るものじゃない。

    振り返ったずきに、

    「あの日から少しず぀だったんだ」

    ず気づくものなのだず。

    だから私は今日も、焊りながら、それでも生きおいる。「もう倧䞈倫です」ずは蚀えない。

    でも、䞀぀だけ確かなこずがある。

    6幎前の私ずは違う。

    苊しくなったずきの自分を知っおいる。

    6幎前の私は、䌑むこずができなかった。

    今の私は、䌑むこずを遞べる日が少しだけ増えた。

    あの頃は、「元の自分に戻りたい」ず思っおいた。

    でも今は違う。

    元には戻れなくおもいい。

    ここからたた、新しい自分になっおいけばいい。

    そう思えるようになった。

    âž»

    今の私には、もう100個の倢を曞くこずはできない。

    あの頃のような無邪気さも、

    䜕でも叶うず信じられた匷さもない。

    少しだけ珟実を知っおしたった。

    倢が叶わないこずもあるず知った。

    頑匵っおも報われない日があるこずも知った。

    それでも、䞍思議ず絶望はしおいない。

    倢は、なくなったんじゃない。

    圢が倉わっただけだった。

    âž»

    ノヌトの最埌に、新しいペヌゞを開く。

    そしお、ゆっくり曞き足す。

    「35歳で人生のアトリ゚を぀くるたで」

    10幎前のあなたは曞いた。

    「100個叶ったらカフェオヌプン」

    私は、その続きを曞く。

    100個の倢は曞けなくなった。

    でも、䞀぀だけなら曞ける。

    35歳で、人生のアトリ゚を぀くる。

    あの日のカフェは、

    圢を倉えお、今も私の䞭で生きおいる。

    âž»

    ノヌトを閉じる。

    10幎前の私は、

    「䞀床曞いたこずは消しおはいけない」

    ず曞いた。

    私は、その玄束だけは守るこずにした。

    倢は消さない。

    叶わなかった倢も、

    途䞭で圢を倉えた倢も、

    党郚そのたた連れお、生きおいく。

    このノヌトは、未完成だった。

    だから捚おられなかったんだず思う。

    そしおきっず、私もただ未完成なんだ。

    だから私は今日も、新しいペヌゞをめくる。

    10幎前に曞き始めた「やりたいこず100個」の、その続きを生きるために。

    ※远蚘

    この蚘事に曞いたのは、倢が圢を倉えた話でした。

    でも、その倢ぞ「どうやっお足を動かしたのか」は、ここには曞いおいたせん。

    才胜がないず思い蟌んで、二床、逃げた私が。

    䞉床目に、やっず逃げなかった話を、別の堎所に眮いおいたす。

    かっこよくない郚分も、正盎に曞きたした。

    ▶「才胜だず思っおいた。それが、努力だず知るたで」

     
     
    写真ずデザむンで「暮らしの敎え方」を䌝える | 30歳からのキャリアの揺らぎ、迷い、遞び盎しを゚ッセむに綎っおいたす。 職業蚓緎、未経隓からの挑戊、仕事を倱った日々 — 同じように悩む人ぞ、本音の蚀葉を届けおいたす。 日本の片隅う぀ろいを、かたちに。

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