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02 / 蒲原館の味は、変わったのか

私が蒲原館を残したのは、飲食店をやりたかったからではありません。

このまちで長く愛されてきたものを、次の世代に残したかったからです。


蒲原駅前の老舗食堂

JR東海道線の蒲原駅前に、蒲原館という食堂があります。

蒲原館の外観

1954年創業で、久保田利伸さんが帰郷するたびに立ち寄り、「ラーメン日本一」とサインを残していった老舗の食堂です。私も子どものころから通っていました。

先代の望月昇さんが高齢になり、2021年の秋に閉店が発表されました。

当時の閉店のお知らせ

それから毎日のように「なくなるの寂しいね」という声を聞くうちに本当になくなるんだと実感しました。

人口が減り商店も飲食店も減っていくこのまちで、67年も愛されてきた店がこのままなくなってしまうのは、あまりにも惜しい。

地域の宝物を残したい。

その一心で望月さんに話をしに行き弊社で引き継がせてもらうことになりました。

受け継いだ味と「味が変わった」の声

その年の12月19日に一度店を閉め、そこから数か月かけて望月さんに味を教わりました。

当時の店長が毎日通い、出汁の取り方から仕込みの手順まで全部を叩き込んでもらっています。

仕込みの修行中の一枚

そして望月さん本人から「ほぼできている」とOKをもらい、2022年2月23日に再オープンしました。

オープン時にいただいたお花

ところがオープン直後から、

「味が変わった」
「継承できていない」

とSNSや口コミに書かれました。

これには正直こたえました。

あれだけ忠実に再現して先代本人からOKをもらっているのに、と。

ラーメンとオムライスが、逆だった

そんな中、あるお客さんから言われた言葉が今でも印象に残っています。

再オープン後のオムライス

「ラーメンは全然変わっちゃったね」

そして同じ人が、オムライスを食べてこう言いました。

「オムライスは前と同じだね」

でも、実際は逆でした。

ラーメンは出汁から仕込みまで先代から教わったものを忠実に再現しています。

一方、オムライスは脂もバターもケチャップも全部変えています。

そのとき、気づきました。

味の記憶というのは、思っている以上に曖昧で思い出と強く結びついている。

昔から通っていた店なら、なおさらです。

その店で誰と食べたのか。
何歳のころに食べたのか。
どんな景色の中で食べたのか。

そういう記憶も全部含めてその人にとっての「蒲原館の味」なんだと思います。

だから、忠実に再現したかどうかだけではない。

今食べて、美味しいかどうか。

結局はそこなんだと、あのお客さんが教えてくれたのかもしれません。

今では感謝しています。

再オープンに向けて動き出した時、私の考えに賛同し店を支えてくれた姉妹がいました。

再オープンの開店時

姉が店長、妹が副店長として蒲原館の新しい基盤を作ってくれました。

二人が揃って辞めたときはさすがに堪えました。

それでもあの二人がいなければ今の蒲原館はありません。

そして数年前から新しい店長になりましたが、私は今の蒲原館の味が大好きです。

変えるものと、変えないもの

今でも「前のほうが美味かった」と言う人はいます。

もちろん、それも一つの意見です。

でも私は、味にも時代ごとのブームのようなものがあると思っています。

先代の味を、そのまま冷凍保存することだけが「継承」だとは思っていません。

守るべきものは守りながら、おいしいものは追いかけたい。

最近も、新作の開発に取り組んでいます。

いわし削り節を使った蒲原冷やし中華

麺も、ナルトも、チャーシューも地元の店から仕入れています。

スープの取り方も変えていません。

変えないものは、これからも変えない。

でも、もっとおいしくできるものがあるなら挑戦する。

それが今の蒲原館です。

一押しは、塩チャーシューメン

私の一押しは、塩チャーシューメンです。

この塩チャーシューメンは本当に美味い!!

実はこの塩ラーメン、先代の頃にもあったメニューです。ただ、当時は表立ってメニューには載っていないいわゆる裏メニューでした。

再オープン後、正式なメニューとして出すようになり今では蒲原館の一つの味として定着しています。

澄んだスープに、チャーシューがたっぷり乗っています。

昔からあったものをそのまま残すだけではなく、埋もれていたものにもう一度光を当てる。

これもまた、蒲原館の味を次につないでいく一つの形だと思っています。

蒲原館の味は、変わったのか

変わったところもあるし、変わっていないところもあります。

でも、それでいいと思っています。

70年以上続いてきた店だからこそ、残すものは残し、変えるものは変える。

そうやって次の10年、20年に繋いでいくことが、私たちなりの「継承」だと思っています。

そして、この考え方は蒲原館だけの話ではありません。

古いものを壊して新しくするのではなく、このまちに残っているものを生かしながら、新しい役割を与えていく。

蒲原館から歩いて行ける場所にある「まち泊456」も、そんな考え方から始まった場所です。

蒲原館から徒歩8分にあるまち泊456

店を残すこと。
建物を残すこと。
そこに、もう一度人が集まる理由をつくること。

やっていることは違っても、根っこは同じだと思っています。

蒲原を盛り上げるために、まだまだやることがあります。

まち泊456の話は、また改めて書きます。

蒲原に泊まりがてら、ぜひ蒲原館にも食べに来てください!

↑UPしましたのでよろしければどうぞ!


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