
彼の本体はメガネらしい。
彼の本体はメガネらしい。
「僕の本体はメガネだから、もしメガネが僕を忘れていたら、僕の居場所に連れて行ってあげてくれない?」
初めて会った時に、彼はそう言ってへらっと笑った。
だから俺は、彼とは極力メガネを見ながら話すようにしている。見ている部分はもちろん、フレームではなくレンズだ。
「メガネの本質はレンズにあるからね。ほら、人の本質は服じゃあないだろう?」
2度目に会った時に、彼がそう言っていたから。まだ俺には難しくて、あまり理解はできていないけど。
そんな彼__メガネと呼ぶべきなのか?いや、ややこしくなるからやめよう__が、昨日からコンタクトを着けている。
彼に言われた通り俺はいつも彼のことをメガネだと思うようにしていたし、洗脳されてしまったのか、もはやメガネのことを好きになっていた。特にレンズ。
でも彼から言われたことは、彼はメガネ ということだけであって、メガネは彼 なのかどうかは分からない。
メガネのことは好きになったけれど、彼のことを好きだと言っていいのか、分からなかった。
本体とお別れしたからだろうか、少し寂しそうな顔で彼はこう言った。
「僕はメガネ だけど、メガネは僕 でもあるんだよ、って言っても良かったんだけどね__一から始めることにしたよ、よろしく」