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銀河フェニックス物語<少年編> 一に練習、二に訓練 (最終回)

    銀河フェニックス物語 総目次
    <少年編>マガジン

     バルダンは、レイターの目の前に人差し指を立てた。
    「いいか、耳の穴かっぽじってよく聞けよ。一に練習、二に訓練、三、四が無くて、五に鍛錬だ」
    「はあ? 秘密の技とかじゃねぇのかよ」

     レイターはがっくりと肩を落とした。

    「お前、今回、たまたま、床に砂があったから善戦したが」
     レイターが手を振りながら遮った。
    「たまたまじゃねぇよ。地上戦の訓練だ、ってわかっていたから行ったんだ」

    「ほう、策士だな。だが、もうあの目つぶしの手は使えんぞ」
    「わかってるよ。あの一回に賭けてたんだ。俺は、アーサーの動きを裏の裏まで見切ってた。全部想定の範囲内だった。だけど、勝てなかった。・・・あいつ、強かった」

    12横顔@2前目怒り逆

     レイターが唇を噛み締めた。
     相手の強さを認めることのできる奴は強くなる。こいつは面白い。

    「ふむ、お前、最後よくアーサーの首を引っ掻いたな」
    「蹴りをはずした後のことは、無我夢中でよく覚えてねぇ」
     意識せずに敵の首を狙った、ということか。こいつ、急所を身体で覚えていやがる。
    「お前の攻撃はめちゃくちゃなようで無駄がない。一体どこで覚えた?」
    「あん? 街だよ」

     レイターがマフィアで荒れた街の出だとは聞いていた。
     笑って見ていた隊員たちのうち、何人が気付いただろうか。
     こいつからほとばしる殺気に。
     
     命ギリギリの喧嘩、ってヤツを俺は久しぶりに思い出した。

     レイターをきちんと鍛えてやりたい。
    「お前が、街の喧嘩で使わないというのなら、アーサーを蹴れるように俺が教えてやる」

    一に訓練のバルダンTシャツ逆大

    「ほんと? お願いします」
    「あとで訓練場へ来い」
    「アイアイサー!」
     レイターは大げさに敬礼をした。

    * *

    「逃げるな、アーサー。俺が相手だ」
     レイターがまた、僕に突っかかってきた。

     彼の突きや蹴りが、日に日に良くなっているのがわかる。レイターは空き時間を利用して、バルダン軍曹に戦闘格闘技を基礎から教えてもらっていた。
     僕を倒すためにだ。
     興味のあることには執念を燃やす。あまりにも彼らしい。

     艦内では隊員たちの間で、彼が僕を蹴ることができるか、賭けが行われているようだ。

     レイターは、パワーも持久力もないが、自分の思った通りに身体を動かす、という能力に長けていた。
     柔らかい身体を器用に操る。動きが正確だ。

     加えて、生きるか死ぬかという修羅場で身につけた、動物的な勘が恐ろしく鋭い。

     ある日、廊下ですれ違いざま、レイターが突然、蹴りかかってきた。
     僕はすんでのところでよけたが、彼の足先が、僕の軍服を汚した。

     レイターは「ちっ」と悔しそうな顔をして、僕から離れていった。

     僕は服の汚れを払いながら、嫌な予感に襲われた。狭い廊下で逃げ場が限られていたということはあるが、蹴りの伸びが想定以上の速さだった。

     レイターはこのところ指数関数的に急成長している。
     一方で、完成系に近い僕の成長曲線はほとんど止まっている。

     グラフを重ね合わせると、いつか彼に蹴られる日が来てもおかしくない。

     いや、正規の軍人である僕が負けるわけにはいかない。僕は将軍家の人間なのだ。
     戦闘格闘技の訓練に自然と身が入る。

     バルダン軍曹が笑った。
    「いいなあ、同い年のライバルがいるっていうのは」
     僕ははっきりと否定した。
    「レイターは僕のライバルではありません」

     軍曹は間違っている。
     ライバルとは同程度の能力を持ち、共に切磋琢磨する相手のことを言うのだ。

     と考えたところで、頭がフリーズした。

    横顔2軍服口への字

     レイターの現在の能力は、僕よりはるかに劣っている。
     だが、潜在的に持つ才能には、計り知れないものがあった。

     そんなレイターに追いつかれたくないと研鑽する自分の姿は、彼をライバル視し、切磋琢磨していると言えるのではないだろうか。

     そのことに気づいた時、僕は自分で自分に愕然とした。       (おしまい)
    <出会い編>第三十二話「キャスト交代でお食事を」へ続く

    <出会い編>第一話「永世中立星の叛乱」→物語のスタート版
    イラストのマガジン

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