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銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十二話(1) キャスト交代でお食事を

    ・銀河フェニックス物語 総目次
    ・<少年編>マガジン 
    ・<出会い編>第三十一話「恋の嫉妬と仕事の妬み」

     本社で下りエレベーターに乗り込んだベルは、声を掛けられるまで全く気づかなかった。
    「ベルさん、お帰りかい」
     真横に立っていた姿勢のいい男性が、レイターだったとは。

    「あら、レイターは仮装パーティ?」
    「役員の警護だったからな」

    n26スーツ後ろ目にやり色

     ティリーが名付けた『よそいきレイター』だ。

     髪の毛固めて、ネクタイをきっちりしめて、普段のだらしない格好とは大違いだ。
    「きょうは、これであがりよ」
     レイターと正面玄関から外へ出て並んで歩く。

     会社の近くにオープンした、ビストロフレンチの前を通る。
     いつも混んでいるのに、夕方早めの時間だからか人が並んでいない。
    「夕飯、一緒に食べない?」
     思いつきでレイターを誘った。
    「いいねぇ」

    *

     席に座って正面から見ると、レイターは結構イケメンでかっこいい。
     フェル兄には負けるけど。

    「このワインはお値打ちだぜ、当たり年だ」
     ソムリエみたいにワインも詳しい。
     便利な人だ。
     赤ワインをボトルで頼む。

     グラスを傾けながら、レイターに聞いてみる。
    「ねぇ、ティリーのこと、どう思ってるの?」

    n43ベル正面@水色タートル口開くカラー

    「あん?」

     ヨマ星系で立てこもり事件にあってから、ティリーの様子がおかしい。レイターのことを意識してる。

     「レイターのこと、どう思ってるの?」ってティリーに詰め寄ると「レイターには『愛しの君』がいるから」ってかわされた。

     間違いない。
     ティリーはレイターのことが好きなんだ。

     不思議なことにそういう気持ちって、周りに見えてて本人だけ気づいてなかったりする。
     女友だちとしては、お節介を焼きたい、と親切心がもたげてくる。親切心? 違うな、わたしがキューピッド役を面白がってる。

     今度はレイターを攻めてみよう。

    「『愛しの君』はもういないんでしょ。七年前に亡くなったって聞いたよ」
     レイターが困った顔をしながら答えた。
    「七年経とうが、俺は愛してんだ」

    「今も?」
    「今も」
    「これからも?」
    「これからも」
    「一生?」
    「一生」

    画像6

     レイターが『愛しの君』のことを本気で愛してることはわかる。

     けど、困った表情をしているのは、ティリーのことも好きだからだ。
    「じゃあ、どうして『俺のティリーさん』て、ちょっかいかけるわけ?」

    「他の男と付き合って欲しくねぇから」
    「何なのよ、それ」
    「俺のわがままさ」

    * *


     ティリーさんを所有はしねぇ。
     だが、他の誰にも所有されたくねぇ。俺の単なるわがまま。

     クライアントの警護対象者。かつ宇宙船レースの観戦仲間、っていう現在のつかず離れずのこの距離間が、俺の中では絶妙のバランスをとっている。臨界点ギリギリだ。

      この間、立てこもり犯から救出する際にティリーさんを抱きしめた。あまりにかわいくて、心が持っていかれそうになった。やばかった。

    s18@戦闘服

     リアルな感触が、俺の幸せな記憶を上書きしそうになる。
     

     いつまでも、このままでいるわけにはいかねぇことはわかってる。
     ダチのロッキーに言われるまでもなく、問題を先送りしていることもわかってる。

     それでも、ティリーさんに好きな人ができるまで、楽しませてもらいたい、っていう俺のささやかな願い。

     ベルさんが、正しい指摘をする。
    「レイター、あなたって何でも器用にこなせるのに、恋愛は不器用だよね」
    「不特定多数の相手は得意だぜ」
    「そういうこと言ってるからダメなのよ。ティリーは、レイターのこと好きなんだよ」  

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     ベルさんは、思いっきり直球を投げてきた。
     こんな剛速球。誰も打てねぇよ。

     これ以上は危険水域だ。

    「前にも言ったろ、俺は特定の女性とはつきあわねぇ主義なんだ」
     バントのような、しょぼい答えを返す。これでこの話は終わりだ。    (2)へ続く

    ・第一話からの連載をまとめたマガジン 
    ・イラスト集のマガジン

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