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銀河フェニックス物語<出会い編> 第七話(2) 真っ赤な魔法使いはパズルもお得意

    <これまでのあらすじ>
    ライバル会社が発売した小型宇宙船「ハール」が燃費抜群で売れている中、ティリーが担当となったジョンソンさんは燃費のいい船を探していた。そんな中、厄病神の船で営業へ向かうことに・・・

     ジョンソンさんの自宅近くの駐機場にフェニックス号を停め、レイターが運転するエアカーで自宅へ向かう。

     こじんまりとした一戸建てのジョンソンさん宅に着くとレイターが楽しそうな歓声をあげた。
    「ほ、ほう」 

    n24レイター正面2ほう

    「どうしたの?」
    「ティリーさんの敵はハールだけじゃなさそうだぜ。ほら、隣のエアカー見てみなよ」
     隣に駐車していたエアカー。ドアに貼られたステッカーに目が吸い寄せられる。
     赤い髪の魔法使いが箒にまたがったマーク。

    n63魔法使いケバカーン

     この業界で知らない者はいない。『ギーラル社の魔法使い』ケバカーン氏のエアカーだ。
     ライバル会社ギーラルの男性トップ営業マン。魔法を使ってどんな船でも売るという。

     魔法使いがハールを売る。これじゃ鬼に金棒だ。
     目の前が真っ暗になる。『厄病神』が戦う前から発動している。
    「はあぁ」
     わたしは深いため息をついた。

    *

     ジョンソンさんの家の玄関からスーツ姿の『魔法使い』が出てきた。二十代後半のケバカーン氏本人を見るのは初めてだ。

    n63ケバカーン普通逆

     わたしと背の高さは変わらない。小柄なリゲル星人。
     真っ赤な髪の毛が印象的だ。普通の赤色じゃない。蛍光赤色だ。

    「よう」
     レイターが魔法使いに声をかけた。
    「おや、レイターさん。お久しぶりです、営業ですか?」
     どうやら知り合いのようだ。
    「いやいや、僕ちゃんは銀河一の操縦士。営業はこちら」

     レイターに紹介されてわたしは挨拶をした。
    「初めまして、クロノスのティリー・マイルドです」

    n15ティリー3sあいさつ

     魔法使いはさわやかな笑顔を見せた。
    「僕はギーラルのケバカーンです。こんな素敵な女性が僕のライバルだなんて光栄だなあ」

     一瞬心がはずんだ。「素敵な女性」だなんて、口から出まかせ、白々しいお世辞に決まっている。
     なのに、なんと自然に心をつかむのだろう。これは魔法だ。
     あわてて気持ちを締めなおす。
    「こちらこそ、お手柔らかにお願いいたします」

    *

     ジョンソンさんは三十代後半の独身男性。引継ぎメモには少々偏屈、とあった。緊張しながらあいさつをする。
    「クロノスのティリー・マイルドです」 

    「ティリーさん、僕は、経済的な観点から船を選びたいんだ」
     いきなり本題に入った。かなり合理的な人のようだ。
    「だから、相見積もりはきちんと取ろうと思ってる。それでギーラルの人も呼んだんだ。面白い人だったよ。今来た真っ赤な営業マン」
    「そうでしたか」
     不安を感じながら相槌を打つ。

     ギーラルの魔法使い。
     あの、燃えるような赤毛は一度見たら忘れないインパクトがある。
     一体どんなセールストークを展開したのだろう。 

    「ハールは燃費がいいから、僕の希望に沿うんだよね。僕、フリーのエンジニアなんだ。だから、収入が不安定でね。君みたいな大企業に勤めてる人にはわからないと思うけど」
    「い、いえ」
     わたしは慌てて首を振る。

    「節約できるところは節約したいんだよ。だから、燃費は大事。ランニングコストがかからないっていうのはいい」
     わたしはパンフレットを数冊並べた。
    「弊社の燃費のよい船をそろえてみました」

    「ふむふむ」
     ジョンソンさんは燃費のコーナーを重点的に見ている。困ったことにどの船もハールより燃費は悪い。
    「ふーん、さっきの彼も言っていたけれど、やっぱりハールはずば抜けて燃費がいいんだね」
     胃が引っ張られるような感覚に襲われる。

     燃費では負けてます。でもハールの耐久性は低いです。という言葉がのどまで出かかる。
     
     弊社で一番燃費の良いアラマットを推してみる。
    「こちらの船はハールよりは燃費が落ちますけれど、操縦性も安全性も格段にいいんです」

     説明するわたしを遮るようにジョンソンさんが言った。
    「そういうところは求めていないんだよね。あと、知りたいのは価格かな」
    「は、はい」
     パンフレットに価格は載せていない。急いで価格表を取り出す。    (3)へ続く

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