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銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(1) S1を制す者は星空を制す

    <これまでのお話>
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    ~エース・ギリアムへ 命が惜しかったらS1プライムに出場するな~

     机の上の脅迫状をはさんで男が二人立っていた。
    「君に頼める筋合いでないことはわかっている。それでもエースの警護を頼みたい」
     クロノスのメロン監督が深々と頭を下げた。
     レイターは困った顔で言った。

    t20ななめ困った

    「別に昔の話はどうでもいいんだ。ただ、来週俺はティリーさんとアブダ星系まで出張なのさ。S1プライムはテレビで見てるから。他の奴に頼むんだな」

     五年ぶりの再会はあっという間に終わった。

     メロン監督はしばらく脅迫状を見つめていた。
     これはいたずらじゃない。
     銀河警察もすでにエースの身辺警護を始め、銀河総合警備の二人のボディーガードが二十四時間態勢で守っている。それでも不安だ。

     今回のS1プライムはレーシングチームだけの話ではない。会社全体にかかわる話なのだ。

     メロン監督は通信機を営業部長席にセットした。

    * *

     営業部長に呼ばれたティリーは思わず手にしていた資料データを落としそうになった。
    「君のアブダ出張だが、急遽取りやめになった」
    「えっ?」
     わたしはあわてて部長に反論した。
    「この話はもう、先方との根回しも終わっているんですよ!」

    n11ティリー少し怒る

     厄病神のレイターの顔が頭に浮かんだ。

     レイターの船で行くと決まってからというもの、わたしは念入りに準備を進めてきた。営業部にはフェニックス号で出かけると仕事が失敗するというジンクスがある。

     だけど、その出張そのものが無くなってしまうなんてことは想像もしていなかった。

     信じられないし、納得できない。

     そんなわたしに部長は気持ち悪いほど優しい声で言った。
    「先方には私から話しておく。君には突然で悪いが、S1プライムの応援でルト星系へ飛んで欲しいんだ」
     怒りの驚きはそのまま喜びの驚きへと一気に移行した。

     S1プライム。部長は確かにそう言った。

    *

     『S1プライム』は年に一回開催される。
     銀河最速のS1レーサーが、リレー形式で対戦する宇宙船業界の一大イベントだ。
     もちろん、わたしの憧れ無敗の貴公子も出場する。

     S1プライムは新型スポーツ船のプロモーションも兼ねている。
     レーシング仕様に改造した新型船『プラッタ』はすでに先週行われたS1プライムの予選を一位で通過し、今年も優勝の期待が高まっている。

     S1担当は社内でも花形部署。そこにわたしが選ばれたのだ。

    *

     ルト星系の惑星ルトワンへ、レイターのフェニックス号で向かった。

     S1機が宇宙へ飛び出すためのサーキットが地上に作られている。
     そのパドックで、わたしは見慣れた自社のエンブレムじっと見つめた。

     時間を司る神クロノスをイメージし時計の針が一時五十二分を指したマーク。

     世の中はどこでどう転がるかわからない。
     夢にまで見たチャンスが巡ってきた。

     大きく息を吸い込むと、部屋の中へ足を踏み入れた。
    「営業部のティリー・マイルドです。今日からよろしくお願いします」

     部屋の真ん中に『無敗の貴公子』エース・ギリアムが立っていた。

    n61エース正面真面目

     本物だ。格好いい。目が吸い寄せられたまま動かなくなる。
     眼福だ・・・。

    *

     一年前、学生だったわたしは何をしたいというあてもないまま就職活動を続けていた。
     学校の成績は悪くなかった。

     故郷のアンタレスは求人も多く、大した苦労もしないで自宅から通える大手機器メーカーから内定をもらった。
     安定していて優良企業。給料もそこそこで、両親も喜んでいた。

     でも、わたし自身はしっくりきていなかった。

     主に工場で使う大型機械が主力のメーカー。その商品は自分の生活と間接的にしか接点がない。
     仕事とはそういうものだ、とわかってはいるけれど、これがわたしのやりたいことなのだろうか・・・。

     そんな時だった。
     銀河最大手の宇宙船メーカーであるクロノス社が新卒の求人募集をしていることに気づいたのは。       (2)へ続く

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